安全管理のコラム第18回「ポイズンリムーバーを過信しない」 2017年6月

スズメバチへの備えとしてよく紹介される「ポイズンリムーバー」。

注射器を逆にしたような仕組みで毒を吸い出す器具です。
ポイズンリムーバーを勧めているサイトや書籍はたくさんありますが,その効果を示す試験結果や具体的なデータって,探してもなかなか見つかりません。

グリーンシティ福岡の救急セットにもポイズンリムーバーを入れていますが,これまでの活動でハチに刺されたことがないので現場での使用経験はナシ。練習を兼ねて「蚊」に食われた時に使ったりしますが,かゆみや腫れが早くおさまるような気もします。

一方で,救急医療の国際ガイドラインを発信する世界的権威とも言える団体「アメリカ心臓協会(American Heart Association)」と「アメリカ赤十字社」が作成した「ファーストエイドガイドライン」では,「ヘビの咬傷」に対する「吸引」は明確に否定されています。
"Do not apply suction as first aid for snakebites.”  "Suction does remove some venom, but the amount is very small. Suction has no clinical benefit and it may aggravate the injury.”
「ヘビの咬傷の応急処置として吸引は行わない。毒を吸い出しても量はわずかで,効果は無く,傷を悪化させる恐れもある。(志賀訳)」
本文は下記URLの "15:First Aid” から "8.9.1 Snakebites” を選択してください。
https://eccguidelines.heart.org/index.php/circulation/aha-red-cross-first-aid-guidelines/

上記ガイドラインを根拠に,ポイズンリムーバーを使わないように指導する救急講座や指導者もあります。(長崎のアウトドアマンMっさんに教えていただきました。ありがとうございました。)

ポイズンリムーバーをお持ちの団体や施設も多いですが,その効果を過信せず,
 ・事前の下見や服装の準備などでハチ刺されを未然に防ぐこと。
 ・刺された場合,現場からの移動,アナフィラキシーの症状がないかの観察,
  必要に応じ通報や搬送。
といった対策や対応を行うことが優先と思います。
その上で余裕があれば,受傷者の自己責任で,腫れや痛みを軽くするために使うもの,というくらいの認識がよいのではないでしょうか?

18poison.jpg

毎月1回(15日頃)に発行する、グリーンシティ福岡のメールマガジン。
その中の「安全管理コラム」を月遅れでアップしています。
メールマガジン配信ご希望の方はお問合せフォームよりお知らせください。