安全管理のコラム

NPO法人グリーンシティ福岡の日頃の安全管理の取り組みや,理事の志賀が安全管理について感じたこと,考えたことを書いています。

安全管理のコラム第63回「保育園の墓石下敷き事故『再検証』に」2021年7月

2018年に長野県高森町で、園外活動中の保育園児(4歳)が墓石の下敷きになり亡くなる事故がありました。とても残念で悲しい事故です。

先月(2021年6月)、その事故の「再検証」が行われているとの続報がありました。


事故の現場は保育園から約800m離れた場所にある広場で、木立の中に隠れるようにお墓がある場所。保育士4人で46人の園児を連れた外遊び中に起きました。

詳細は「高森町立保育園において発生した死亡事故の検証等に関する報告書(2019年8月5日/高森町保育所事故検証委員会)」にまとめられています。

https://www.town.nagano-takamori.lg.jp/kosodate/2/6/4894.html
(2021.07.25.閲覧)


ただし、これは「再検証」の前の検証報告書です。

事故当日の朝に担任の保育士が「5分間程度下見した」と記載されていますが、この報告書が公開された後、実際は下見をしていなかったことが判明。2021年7月現在、あらためて町の検証委員会で再検証が行われており、7月中に結果が高森町に報告されるとのことです。

そのため、上記の報告書は近日中に追加もしくは差し替えられるのではないかと思います。


いずれにしても悲しい事故です。

同じく2018年は群馬県高崎市の神社で石灯籠に上って遊んでいた中学生が落下し、はずれた上部の石の下敷きになって亡くなる事故もありました。

古いお墓や灯籠などは「不安定な重量物」です。リスク要因であるとの認識をあらためて持っておきたいと思います。


加えてこの保育園の事例では、

当初の検証委の聞き取りで「下見をした」と事実と異なる証言がなされたこと。

事前に作成していた計画書が事故後に書き換えられて提出されたこと。

下見をしていないことを口外しないでと同僚保育士が依頼されていたこと。

などが、長野県警の捜査で判明しました。事故を起こしたことだけではなく、それを誤魔化すようなことが行われた点でとても残念な事例になったと思います。


うーん、いろいろ考えてしまいますね。

保育士さんはたいへんな仕事だと聞きます。仕事量の負担、賃金や時間の余裕、人間関係などは大丈夫だっただろうか?モラルやモチベーションを保てる職場環境や待遇だっただろうか?とか。

過ちを認めることって難しい。たいへんな勇気が要るように思います。誤魔化さず、まず過ちを認めることからはじめないと改善されることはないんじゃないか?とか。


亡くなったお子さんのご冥福を、そして保育士さんたちがいきいきとした、子どもたちへの目が行き届いた保育が広がることを祈ります。



安全管理のコラム第62回「ツツジ の蜜は毒?」2021年6月

 

私が小学校の頃、通学路にプランターでサルビアを育てているお宅がありました。真ん中から飛び出ている花びら。これを抜いて蜜を吸っちゃいますよね。仕方ない。

ほとんどすべてのサルビアが花びらを引っこ抜かれて、道沿いにチラホラ落ちてたのを思い出します。


よく公園や街路樹として植えられている木でも蜜を舐められるものがあります。5月くらいだったらクロガネモチの花やソメイヨシノの葉っぱの蜜腺にポツリと水滴のように蜜が出ていて、舐めると甘い。今時の子どもはそんなことしないかもしれませんけど(笑)。


ツツジの蜜も吸ったことがあります。ただ、わりと強い毒を持つツツジ もあるそうで、先々月ですがYahooニュースでも配信されていました。

ツツジの甘い蜜、吸ったら毒? 専門家「吸わない方がいいです」


ここで注意を呼びかけているのが「レンゲツツジ」。

日当たりのよい草原などに自生しますが、園芸品種としても庭に植えられることがあります。幹から葉っぱから蜜までグラヤノトキシンという痙攣毒を含むので牛や馬も食べません。2015年には庭木のレンゲツツジを食べた人が食中毒になった事故があったそうです。

海外ではハチミツでの中毒が報告されているとのこと。ハチミツは蜜蜂が採取した後、巣の中で水分を飛ばして濃度を高めるので、分量あたりの毒性が強くなるということだと思います。

 

全てのツツジが危ないわけではありません。

身の回りに多いヒラドツツジやサツキツツジ、クルメツツジなどの毒性は、弱いかほとんど無いようです。ただ記事中の専門家は「区別が難しいためツツジの蜜は吸わない方がいい」と指摘しています。

 

うーん、区別が難しいなら区別できるようになったらいいとも思いますが、そもそもツツジは公園や誰かの庭の木だったりします。花を引っこ抜いて蜜を吸うこと自体、イベントでどんどんやろう!というものではないですね。

植物を採取するマナーのこと、種類の見分け方や毒性のことなどをきちんと伝えた上で、限られた場所、特定の人と一緒に行う自然の楽しみ方だと思います。

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安全管理のコラム第61回「ボノボ行動観察中の事故の裁判で」2021年5月

6年前、アフリカで霊長類ボノボの行動観察中の大学院生に落枝が直撃した事故。裁判が行われていましたが、地裁の判決が報道されていました(2021.05.20.京都新聞ほか)。受傷した方は海外での事故であったことや、その後に重い障害が残ったことでつらい状況だと思います。お見舞い申し上げます。

落枝については、森林ボランティア関係でも事故が起きているので他人事ではありません。また地裁の判決理由にも思うところがあったので、以下まとめてみました。

 

2015年7月 アフリカのコンゴで京都大学大学院生がボノボの行動観察中、長さ90cm、重さ10.8kgの枝が落下。大学院生の頭部に直撃した。樹上のボノボたちがけんかをはじめたことが落枝の要因になったとのこと。

2018年9月 受傷した元大学院生らが京都大学と担当教授に対して2億7,400万円の損害賠償を求めて提訴。京都大学は請求棄却を求めた。

2021年5月 京都地裁が元大学院生らの請求を棄却。

 


一般に大学や指導教官が、研究中の学生の事故にどの程度責任を持つべきなのか?分野や状況によって異なるので単純な線引きはできないと思います。

ただ、今回の報道で京都地裁の判決理由が「木々が生い茂るジャングルでは落木の発生地点や落下軌道を正確に把握するのは困難な上、本件は落木が別の木に当たって落下方向が変わっており、『事故を予見、回避できる可能性はなかった』」とされている点には少し違和感があります。(カギ括弧内が報道記事。二重カギ括弧内が判決文の引用。)

 

正確に発生地点や落下軌道を把握する必要はありませんよね。落枝・落木はスレスレでかわしていくものではないので。

そのような落枝・落木が起こり得る場所かどうか判断して備えること。具体的には、安全な場所を選んで活動したり、ヘルメットなどの保護具を付けたりすること。落枝はそういった対応をとる類のリスクです。

 

ところで、これまで本コラムで取り上げた落枝による事故には以下があります。

 

2012年11月 岐阜県大垣市 スギの落枝による事故で小1女児死亡。
その後の岐阜大学の調査により、現地のスギ林は「こぶ病」に罹患して枝が落ちやすくなっていたこと。また、事故当日は強い風(最大瞬間風速10m/s)が吹いていたことなどが報告されています。

2014年4月 神奈川県川崎市 ケヤキの落枝で幼稚園児が重症。
商業施設内の広場で1978年に植えられたケヤキから落枝。定期的な剪定はしていなかったとの報道がありました。(2021.05.24.ストリートビューでその商業施設を確認したら、ケヤキは根元から伐採されているようです)


これらの事例にある

 ・こぶ病など枝が落ちやすい病気に罹患していること。

 ・強い風が吹いていること。

 ・根を伸ばしにくい環境で数十年間育っていること。

などは落枝が発生しやすくなる要因です。

加えて他にも、

 ・高木が混み合って育ち、下枝が枯れあがっていること。

 ・ナラ枯れやマツ枯れなどの病気に罹患していること。

 ・まだ幹に付いている枯れ枝が、雨後に水を吸って重くなっていること。

 ・枝を落としやすい樹種(クスノキなど)が多いこと。

などでも同様に落枝が増えます。

このような状況が見られるのであれば落枝の可能性が高まると考え、注意喚起するとか、適切な剪定管理を行うとか、立ち入り禁止するとか、どうしても入る場合は保護具をつけて行動するとかの対応が必要となります。



冒頭の事故が起きたジャングル、森自体がどの程度リスクのある状況だったのかはわかりません。

報道内容からの推測でしかありませんが、体重がオス42-46kg、メス25-48kgとなるボノボが樹上でけんかをはじめたというのは、かなり落枝の可能性が高まるように思います。少し距離を取って観察するか、直ちに保護具を着用するといった対応が必要だったのかもしれません(その対応をとる責任が誰にあったかは別問題として)。


上に書いた通り、報道にある京都地裁の「落木の発生地点や落下軌道を正確に把握するのは困難」であり「落木が別の木に当たって落下方向が変わっ(た)」ことから「事故を予見、回避できる可能性はなかった」とする判決理由には違和感があります。どんな落枝も発生地点や落下軌道、さらには発生時刻を正確に把握することは現実的に不可能だからです。

この書き方では「落枝事故は予見、回避できる可能性がない」とも解釈できます。それはマズい。判決文というより報道記事の切り取り方の問題なのかもしれません。


いずれにしても、落枝は「あの枝がここに落ちてきそうだから対応する」ではなく「枝が落ちてきそうな場所・状況だから対応する」といった姿勢で臨みたい。

そして、森や生きものに接する人が事故に遭うことを少しでも減らせたらと思います。

安全管理のコラム第60回「医薬品の製造不正で」2021年4月

 医薬品メーカーの小林化工と日医工が製造段階で不正を行っていて業務停止命令を受けたこと、一般にはそれほど大きなニュースとして扱われていない印象があります。しかし、多くの人に影響が出ると思いますし、病院や薬局の皆さんは新型コロナ感染症への対応に加えて、たいへんな状況ではないかと心配しています。

 ざっくり言うと、製造不正で業務停止命令→出荷調整や欠品が発生→他社の同等品に切り替えようとしてもそんなに在庫ないし急に生産を増やせない…ということが起きている様子。興味ある方は下記のtogetterや調査報告書などをご覧ください。

 

 実は今、日本の医薬品流通が壊滅しかけているという話
 (20210424付/20210426確認)

 小林化工の外部調査委員会報告書・概要版PDF
 (20210416付/20210426確認)

 

 上記の2社についての記事や報告書を見て、医薬品製造に限らずあらゆる分野の安全管理に共通するポイントがあると感じました。グリーンシティ福岡の活動分野に引き寄せて、思ったことを挙げてみます。


1)間違いを指摘する人を尊敬しよう

 上記の外部調査委員会の報告書では、勇気を振り絞って上長に相談した従業員が「でしゃばるな」と叱責を受けたことが記載されています。下からの問題提起が許されない風潮があった、とも。間違いや不正に気づき、指摘してくれる人は貴重な存在です。間違いとまでいかなくても、めんどくさくて手順を省略しようとするのに対して「いやいや、ここはちゃんとやっておきましょう」と言える人は大切。尊敬したいと思います。

 

2)逸脱(≒ヒヤリハット)の報告を歓迎しよう

 製造業では決められた手順や管理基準から外れた状態のことを「逸脱」と言うそうですね。小林化工の工場では報告された「逸脱」の件数が年間数件程度と、異常と言って良いほど少なかったそう。これは逸脱が発生していないのではなく、逸脱が報告されていないことを示唆すると指摘されています。私たちの分野で言えばヒヤリハットみたいなものかと思います。ちょっとしたミスや間違いをきちんと報告できるかどうか?そこで起きたミスや間違いをみんなで共有して、今後起きないように対策を考えるためにも、その報告を歓迎したいと思います。

 

3)間違いを食いとめる仕組みを考えよう

 経口の水虫薬があるとは知りませんでした。ともかく、爪水虫などの治療薬であるイトラコナゾール錠50「MEEK」に、睡眠導入剤の成分である「リルマザホン塩酸塩水和物」が混入されたことが一連の不正でもっとも大きな被害を生みました。夜勤の作業者が保管場所に置いてあった原料を取り違えて計量したことが調査で報告されています。ただうっかりミスは誰にでも起こりうるもの。それを防ぐ仕組みが機能していなかったということです。

 事故に対する考え方のトレンドは、「事故の原因は周囲の環境など外部にある」から「ほぼ全ての事故がヒューマンエラー」という考え方に。「がんばれば事故は防げる」という根性論から「事故は起きるので如何に最小化するかが大事」という考え方に、移り変わってきたように思います。「人は間違いを起こす」ことを前提として、どうやって仕組みでそれを食いとめるか?を考えていきたいです。

 

4)妥当な目標を設定しよう

 同じく小林化工の調査報告書では、近年、生産量が右肩上がりで増え続けていたこと、スケジュール通りの出荷が何より優先されていたこと、が指摘されています。出荷スケジュールから逆算して各工程がスケジュールを立てるという、言ってみれば「バックキャスティング」的な考えが行われていたようです。その考え方自体は使い方次第なのでどうこう言いませんが、最初に立てた目標が妥当かどうかが大切。その目標が無理めなものであれば、現場に負荷がかかり逸脱やミスが発生しやすくなるのは当然です。同じようなことは、製造業でなくてもあらゆる分野で起きているように思います。

 

 医薬品の製造や流通については全く専門外ですが、とりあえずしばらくの間、薬局に行くことがあったら穏やかに薬剤師さんに接して感謝したいと思います。

安全管理のコラム第59回「想定以上の参加者」2021年4月

住宅地に近い緑地で里山保全活動の体験イベントを行った時の事例。

20名以下の予定で準備していたら当日30人以上の参加があった時,諸事情でその状態で実施することになりました。事故や怪我はなかったもののいくつも気になることが起きました。「適正な参加人数を守るのは大事だな」と反省したお話です。

 

<オリエンテーションが不十分になりがち>

趣旨の説明やスタッフの紹介,参加者属性の把握,作業内容と道具の使い方説明などのオリエンテーションがどうしても長くなります。そんな話はいいからさっさと作業に入りたいという人もいるので,進行役としてはつい話を短く割愛したくなってしまいます。最初から人数が多いことがわかっていれば,説明用のフリップや資料を用意したり,数名の作業グループに分かれた後に各グループリーダーから説明ができるように準備したりします。けれど,それらの準備ができていない時,オリエンテーションでの情報共有が不十分になりがちです。


<作業内容を縮小>

その体験イベントでは,ヘルメットをかぶり,それぞれがノコギリと剪定バサミを持って,枯れ木や枯れ枝の伐採・剪定,それらの枯れ木を使った土留め工,落ち葉やササ類の片付けなどを予定していました。参加者数が多く,リーダーの目が行き届かないと考えたので,もっとも事故のリスクが大きいと考えた立った枯れ木の伐採は行わないよう活動内容を変更しました。幸い(?)林内に散らばった枯れ木が大量にあったので体験イベントの作業量としては十分。ただし,体験内容としては若干単調になった印象はあります。


<予定していない作業が行われていた>

その一方で,リーダーの目が届かないところで参加者数名の判断で立った枯れ木の伐採が行われていました。結果的に事故は起きていませんが,リスクが高いと判断して取りやめた作業が知らない間に行われていたのは問題です。参加者数に対するリーダーの数が少なかったこともありますし,オリエンテーションでの理解が不十分だったということでもあります。


<ノコギリのケースを無くして探した>

事故も怪我もなく終了。しかし,道具を集めた段階でノコギリのケースが一つ足りず,裸のノコギリがポロンと残っていました。ケースだけ地面に放っぽりだして作業した後,ノコギリだけ持って帰ってきたのかもしれません。解散後スタッフで作業地近辺を探し回りました。けれど結局見つからず,仕方ないので捜索を切り上げ撤収しました。


<いや,ケースはあった>

事務所に戻って道具の最終的な手入れと片付けをしようとした時,探していたノコギリのケースに別の小さなノコギリが収まっているのを発見。ケースを無くしたわけではなかったことがわかりました。代わりにその別の小さなノコギリが収まっているはずのケースは,空っぽであったことに気づかずそのまま持って帰ってきていました。一言で言えば,現場での道具管理が杜撰になっていたということです。


他にも「参加者全員とコミュニケーションをとることができなかった」「作業の意図や趣旨が十分伝わってなさそうな参加者がいた」など気になる点がありました。それぞれ小さな出来事ですが,事故や怪我につながる入り口のようなもの。適正な参加者数を守ることが大事だとあらためて感じた出来事でした。


(追記)
余談ですが,ボランティア活動に対してなんらかの評価を行う組織(行政や助成元,CSRに取り組む企業など)では,参加者数の大小を重視していることが普通です。しかし,人数が増えることのリスクやその対策コストについて具体的に想定できているところは少ないので,注意が必要です。

 

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安全管理のコラム第58回「強風と乾燥時には焚き火をしない」2021年2月

2021年2月23日,二つの山林火災のニュースが流れました。
ニュースの見出しだけご紹介します。


 「栃木・足利で山火事、72世帯に避難勧告…自衛隊ヘリが散水しても鎮火に至らず」
  読売新聞オンライン 2021年2月23日

 「東京・青梅市 住宅から出火 けが1人 寺や山林にも延焼」
  TBS NEWS  2021年2月23日

 

青梅市の事例についての報道では「庭でたき火をしていて水で消した。しばらくするとバチバチという音がして火事に気付いた」というコメントが掲載されていました。

2月23日は青梅市や足利市も含めて関東甲信地域には乾燥注意報が出ていました。また,ところによって一時,強風が吹き,青梅市では13:20ごろに最大瞬間風速9.3m/sが記録されていたとのことです。


思い出したのは2017年5月の山林火災です。この時も二つの山林火災。宮城県栗原市と岩手県釜石市で起きた大規模な事例でした。当時の見出しをご紹介します。


 「山林火災、200世帯超に避難指示 宮城・岩手」
  日本経済新聞 2017年5月8日

 「岩手の山林火災 「一睡もできなかった」住民 ヘリ14機、懸命の消火」
  産経ニュース 2017年5月10日


この時,釜石市には乾燥注意報が出ており,さらに10:50ごろ最大瞬間風速25.9m/sが観測されていました。1年以上経って2018年12月には,宮城県栗原市の事例について地裁での初公判の様子が報道されました。その起訴内容によれば,

 ・当時,宮城県栗原市では強風注意報と乾燥注意報が発令されていた。

 ・男性が休耕田で伐採した竹を焼却した。

 ・消火確認を怠った結果,延焼し,住宅など20棟,山林約2.9haを焼失した。

ということだったそうです。

 

荒れた里山の手入れでは竹を伐採することも多く,竹炭づくりのため野焼きをすることがあります。

また,体験活動として焚き火や飯盒炊さんをすることもあります。

その際は,風と乾燥具合のチェックが必須です。

 1)気象庁のサイトや防災アプリで注意報のチェック(強風注意報,乾燥注意報の有無)。

 2)現地で風速計でのチェック。

グリーンシティ福岡では,現地の風速計で7.0m/sをたびたび超えるようなら焚き火は中止としています。平均風速にしたら5m/s前後です。


火を使う体験は楽しいですが,くれぐれも風と乾燥にご注意を!

安全管理のコラム第57回「日本の死者数が前年より1.5万人減」2021年2月

今朝,「日本の死者数が前年より1.5万人減 コロナ禍の「受診控え」が一因か」という記事を読みました。※「女性セブン(2021年2月18・25日号)」の記事が,BLOGOSに転載されているという理解でいいのかな?


「重要な事実」と「ムチャクチャな論旨」が一緒になってますね(笑)。

 

「重要な事実」は,2020年1月〜11月の国内の死者数が125万人で,前年同期比で約1万5000人減少したということ(厚労省の人口動態統計速報)。
「ムチャクチャな論旨」は,「病院に行かない方が死者は減る」という印象に誘導するためにあの手この手を使っていること,です。
「ムチャクチャな論旨」についてはソッと置いておくとして(笑),死者数の減少についてどんな理由や背景があるかなあ?と考えました。

大きな理由は,手洗いや消毒,マスク着用でインフルエンザが激減したことだろうなと思います。さらにそれから起きる肺炎なども減少しているでしょう。ちなみにインフルエンザの2014年〜2019年の平均患者総数は約68.5万人です。これに対して2020/2021シーズンのインフルエンザ患者数は1,000人に達しておらず,割合で言えば0.1%ちょっと。激減です。

また,外出が減って交通事故や屋外での事故が減ったということもあるかもしれません。例えば,警察庁の発表による2020年1月〜12月の交通事故死者数は2,839人で統計開始して最小。前年に比べて376人の減少で,はじめて3,000人を下回りました。ただ,交通事故はこの30年減少傾向ではあります。

他にもあるかもしれません。上記の記事のように「医療ミスや過剰医療が減少したから死者数が減った」というのは…全く関係ないと断言はできませんが,あったとしてもすごく小さいんじゃないかと思います。

「安全管理のコラム」的な視点からは,インフルエンザにしろ,交通事故にしろ,私たちは日頃からいろんなリスクを飲み込んで生活してるんだなあ,ということを思います。
手洗いやマスク着用をしたり,飲み会を控えればインフルエンザは激減する。けれど,多少のリスクがあるとは知っていながら,手洗いやマスクをしなかったり,飲み会を楽しんだりする。
年間,数千人の方が亡くなっていると知っているけれど,車は便利なのでそれに頼った社会で生活する。

全てのリスクを避けるのは不可能ですし,そんなことをしてたらなんの楽しみもはりあいも学びもない生活になりそうです。私たちは多かれ少なかれリスクを飲み込んで生活しているし,それらに対して適切な?ほどほどの?ふさわしいレベルの?備えをすることが大事なんだろうな,ということを考えました。

安全管理のコラム第56回「枯れ木の『揺れ』に着目」2020年12月

都市部の緑地でも中山間地域の里山でも,樹林地が放置されてずいぶん育っている状況があります。
そんな場所では木々同士の競争がおこって枯れる木も出てきます。このような比較的大きな枯れ木にどのように対処していくかは,今後もっと課題になっていきそうです。

森林ボランティアが手道具(ノコギリなど)で枯れ木を伐る時には,前に書いたようにいろんな注意したいポイントがあります。
それらに加えて今回は枯れ木の「揺れ」に着目です。えぇ,いつも以上に一部の方向けの内容ですとも。


一つ目はノコでギコギコ伐っている時のこと。
ノコをひくテンポにあわせて枯れ木の揺れが大きくなっていくことがあります。揺れが大きくなっていくと枝や幹が途中で折れて,伐採している作業者の真上に落ちてくる危険があります。
なので,作業者や周囲で見ている人はその枯れ木の揺れを注視しておくとよいと思います。ノコをひくに従って揺れが大きくなっていく様子が見られたらノコのテンポをゆっくりさせます。すると木の揺れがおさまります。

たぶんこれは,ノコのテンポがその木の「固有振動数」に合って「共振」してるということなんじゃないかと。高校で物理選択だった人はなんか「弦の振動」とかそのへんを思い出すかもしれません。基本振動の他に,その整数倍で振動するはずなので…え?なんかこんな感じ…?
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詳しくはわかりませんが,とにかく揺れ具合に注意しながら作業したらいいし,揺れが大きくなるようだったらノコをゆっくりにすると収まると思います。


二つ目はロープで引き倒すときのこと。
枯れ木は特にツルが効きにくく,一旦倒れ始めると一気に倒れます。途中で幹が折れたりもします。
なので,倒れ始めるまで追い口を入れるのではなく,まだ倒れ始めていない段階で,作業者全員が安全な場所に退避した上でロープで引っ張ります。
この時のロープをとにかく力任せに引くのはNG。ロープや滑車に大きな力がかかりますし,作業者もたいへんです。一旦,ロープを引いたら力をゆるめて,再度引っ張る。
この時,倒そうとしている木はわずかに揺れると思います。経験上2秒間隔くらいのことが多い印象。この木の揺れに合わせて,こちらに来るタイミングで引っ張る。向こうに戻るときは緩める,とします。
何度か繰り返して倒れなさそうだったら,用心して近づき少し追い口を進める。また退避して再度ロープで引っ張る。これを繰り返して,作業者が伐倒する木の直下にいない状態で倒します。
木の揺れを活かしながら小さな力で倒す,というのがよいと思っています。


とは言え,以前の繰り返しになりますが,森林ボランティアでは難しいor危険な木に手を出さないのが1番大切。
確かに,身の回りの森に枯れ木が増え,散歩をしている人たちや森で遊ぶ子どもたちのことが心配。さらに行政など緑地や公園の管理者は予算不足で森の中の枯れ木まで手が回らず…森林ボランティアでなんとかしたいと思う気持ちはあります。が,ともかく安全が第一。

ボランティアでも対処可能な枯れ木を,さらに安全に確実に処理するために「揺れ」にも着目しましょう,というお話でした。

安全管理のコラム第55回「オンラインイベントの保険」2020年10月

オンラインイベントが盛んになってきました。

講演会,分科会があるようなシンポジウム,資格の研修,料理教室やヨガ教室などもあります。
グリーンシティ福岡でも、オンライン観察会「ZOOM de かんさつ会」のほか、いくつかの研修、会場参加とオンライン参加の両方があるハイブリッドのワークショップなどをやってきました。

そんなオンラインイベントの保険ってどう考えたらいいんでしょう?
オンラインイベントは、移動や転倒、危険生物などのリスクが少ないです。そもそも参加者はそれぞれの自宅など離れた場所にいるので、その安全管理まで責任を負うことができるのかどうか?
よくわかりません。

そんな中,来月実施予定なのが「オンライン de 木のマグネット」というイベントです。
森の中から中継して樹木や生きものの観察をしつつ,森の手入れで出た材を使ったクラフト体験を行います。
参加者の皆さんはご家庭のパソコンやタブレットの前で,解説を視聴しながらクラフト体験を行います。
紙やすりを使ったリスクの少ない作業とは言え,手を削ったり,手が触れて貴重品を壊したり,などの事故が考えられないわけではありません。

今後のプログラムの発展も考えて、保険の代理店さんに尋ねてみました。
あくまでグリーンシティ福岡で加入している保険についてです。

<傷害保険>

 ・オンライン上でも保険適用の判断は参加が確定出来る場合に限る。
 ・今まで通り、事故があれば参加者名簿を提出する。
との回答だったので,参加者が確定できるのであれば対象となるということだと思います。
しかし、例えば「参加途中に抜け出して銀行に行って事故にあった」のは対象外です。

<賠償責任保険>

 ・オンライン上でも法律上の賠償責任を被る損害には保険適用できる。
 (対象は「第三者(観客等)」「参加者」の2つの場合が考えられる)
 ・訴訟された場合の,訴訟に関する費用,過失が認められた場合の賠償金などが補償される。
と回答をいただきました。
ただ,主催者側に法律上の責任があるかの認定が,オンラインでは,より難しいかもしれないと想像します。万が一の場合は,早めに代理店や場合によっては弁護士などに相談する必要があるかもです。

オンラインイベントでも適用されることをうたった保険では「ヨガの保険」があります。
もともとヨガ教室では「指導の仕方で身体を痛めた」という訴えがありそうです。自粛期間中にオンライン指導が増えてきたことが背景にこのような保険のニーズも高まったのだと思います。


オンラインイベントでどのような保険に加入するか?もしくは加入しないか?はイベントの内容によると思います。
各団体,各事業でぜひご検討を! 

安全管理のコラム第54回「ぶどうによる窒息」2020年10月

 

先月(2020年9月),東京の幼稚園で4歳男児が給食に出されたぶどうをのどに詰まらせて亡くなった事故の報道がありました。亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りいたします。


ぶどうはおよそ直径3cmで,皮をむいた状態で1人あたり3粒,出されていたそうです。

私自身も一番上の子が1歳前後のころに覚えがあります。少し皮を破った巨峰を一粒,私が手に持った状態で吸わせるととても喜んでいました。ところが予想以上の「吸引力」で,巨峰一粒がまるごとスポッと口の中に!

あわてて吐き出させたのですが,一瞬ヒヤリとしました。15年以上経っても覚えています。

ぶどうのサイズは危ないとわかっていたので,右手で子どもの背中を支え,左手の指4本でぶどうをしっかりつかみ,目は離さないようにしてあげていたのですが,吸い込むときは吸い込む。気をつけなくてはいけないと思いました。

 

過去にも同様のケース(ぶどうによる窒息事故)は起きています。

9月7日の事故発生の直後,福岡市は10日に市内の保育園・幼稚園に「ぶどうやミニトマトなど丸くてつるつるした形のものは4つに切って丸くない形にして与え,あめやタブレットなどは大きさにも注意するように」との通知を出しています。

 

グリーンシティ福岡では給食を含め,食事の提供はほぼ行わないのですが,身近な会食やプライベートの飲食でも気をつけていきたいと思います。

安全管理のコラム第53回「例年以上に熱中症に注意?」2020年7月

 

新型コロナの影響もあって今年は例年以上に熱中症に注意が必要そうです。バラバラと関連する話題を挙げてみます。

 

<暑熱順化>

暑さに体がだんだん慣れてくることを暑熱順化と言います。私たちの体は暑さにさらされた時,血流を増やしたり,汗をかいたりして体温を下げようとしますが,上手に対応できるには数日〜数週間の慣れが必要。「暑い環境での運動や作業を3〜4日すると汗をかく自律神経の反応が早くなる」「3〜4週間経つと汗に無駄な塩分を出さないようになり,熱けいれん等を防ぐ」ということだそうです。

<マスク着用は熱中症のリスク>

厚生労働省と環境省が作成した「令和2年度に必要な熱中症予防行動」というリーフレットでは「マスク着用により、熱中症のリスクが高まります」と明言されています。言われなくても体感してるよ!という方がほとんどかもですが(笑)。感染予防と熱中症予防を両立させるというなかなかたいへんなシーズンです。リーフレットでは,他者と2m以上の距離が確保できる場合はマスクをはずすように推奨されています。

 

<マウスシールド(透明マスク)>

口元に密着するマスクの代わりに「マウスシールド(透明マスク)」を着ける人が増えてきました。ただ,接客業や食品製造の現場など仕事の場面がほとんどです。蒸れにくいので熱中症対策にいいんじゃないかと思っていますが,それで街中を歩いている人は見ませんね。表情が見えやすくなる利点もあるので,イベントする際にスタッフ用として準備するといいかもしれません。

 

<空調服>

建設・土木業界では普及されてきた空調服。ファンが内蔵されていて風を送り込んで体温を下げる作業服(ブルゾンやベストタイプ)です。ワークマンにはレジャー用途も考えて色が鮮やかな「空調ウェア」があります。吸湿性や速乾性が高いコンプレッション(体にピタッとフィットする肌着)と一緒に着用することがおすすめされています。保全作業や屋外イベントのスタッフには必須装備になっていくのかもしれません。

 

<アイススラリー>

アイススラリーとは氷の粒と液体が混ざった状態のことです。フローズンドリンクみたいな感じ。商品としては「ポカリスエット アイススラリー」などが販売されています。常温の水と比較してアイススラリーの方が熱中症対策に効果的と言う研究報告があるそうです。確かに温度は低いですがホントに熱中症になった場合,100ml程度の量じゃ足りないとは思います。

 

参考文献:

 環境省熱中症予防情報サイト「熱中症を防ぐためには」. https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/3-1.pdf(2020.07.31.閲覧)

 厚生労働省「新しい生活様式における熱中症予防行動のポイントをまとめました」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html(2020.07.31.閲覧)

 大塚製薬「ポカリスエットアイススラリー」. https://pocarisweat.jp/products/iceslurry/(2020.07.31.閲覧)

安全管理のコラム第52回「ボーイスカウトアメリカ連盟の破産申請で」2020年6月


先月(5/19)に自然体験活動推進協議会のリスクマネジャー更新研修を受講しました。野外活動を行う団体の安全管理担当者の資格です。

その中で情報提供の一つとして下記のニュースが紹介されました。
全米最大ボーイスカウトが破産申請 性虐待の訴訟数百件
(朝日新聞デジタル 2020年2月18日)

 110年の歴史がある「ボーイスカウトアメリカ連盟(Boy Scouts of America 以下BSA)」が今年2月18日に、日本の民事再生法にあたる連邦破産法の適用を申請しました。ボーイスカウト活動の中で行われた青少年への性的虐待について数百件の訴訟が行われているためです。
 急に青少年への性的虐待が増えたというわけではなく,一部の州で性的虐待についての提訴期限が一時的に撤廃されたとのこと。これにより過去の被害にさかのぼった訴訟が可能になったことが背景にあるようです。

 うーん,これは残念なことですし,大多数の真っ当に活動してきた人たち,日本のボーイスカウト関係者にも悲しいニュースだったと思います。

 とは言え,ある外部機関の調査報告では1944〜2016年にかけての性的虐待の加害者は7,819人,被害者は12,254人とあり,相当な数の被害者がいたのも事実。「BSAが『破産』という選択肢を選んだこと」にはいろいろ解釈や想像ができるようですが,これを機会に性的虐待の被害が減ることを願っています。

 多くが,キャンプなど様々な活動で一緒に行動する指導者やスタッフが加害者,そこに参加するor指導を受ける子どもたちが被害者という図式だと思います。
 私が10年以上前に受けた安全管理講習でも「男児であっても抱っこしたりしない」「密室で子どもと二人きりにならない」等の指導がありました。その時は「そこまでする必要があるのかな?」と感じたのが正直なところ。けれど,日本でも今年に入って,サマーキャンプを行う団体でボランティアスタッフをしていた20代男性が,複数の男児への性的暴行で逮捕・再逮捕されたことがニュースになっています。

 仮に本人に悪意が無くても,体の接触や写真撮影が子どもを傷つける,もしくは親御さんの誤解を生むということは十分考えられます。
 グリーンシティ福岡はキャンプ活動を行なっていないのでそもそも機会は少ないのですが,子どもさんとの接し方や親御さんの理解を得ること,ボランティアスタッフさんとの確認事項などはあらためて意識しておかないと,と感じたニュースでした。

安全管理のコラム第51回「zoomイベントのチェックリスト」2020年5月

4月から始めた「ZOOM de かんさつ会」は,全国からご参加いただいて好評です。

一方で,オンライン会議ツールであるzoomについては,セキュリティ上の問題が取り沙汰されています。この対策・対応も一つのリスクマネジメントです。ネット記事などをもとに以下の三つにzoomを使うことのリスクをまとめました。

1)第三者が乱入して嫌がらせをする「zoom爆弾」

URLとパスワードが分かれば誰でも参加できるのがzoom会議です。悪意を持って,もしくはいたずら心で招かれていない第三者が入室してきて,騒いだり不適切な画像を映し出したりする迷惑行為が「zoom爆弾」。参加URLとパスワードを不用意に公開した場合,そのリスクが高まります。「知らない外国の人が出てきて踊った」とかのユーモラスなものもあれば,「グロテスクな画像が共有され参加者がショックを受け,本題の会議どころではなくなった」といったことも考えられます。

2)PCから情報を盗まれたりする「脆弱性」

一般に,プログラムの不具合や設計ミスがあって,外部からのハッキング(情報を盗んだり,任意のプログラムを実行したり)することが可能になっている状態を「脆弱性」と呼びます。zoomについて,私はハッキング被害の実例を確認できていないのですが「Webカメラがハッキングできる」「認証情報を盗むことができる」など複数の「脆弱性」があるという指摘がされています。古いバージョンのzoomを使っているとそのリスクが高まります。

3)zoomを装って不正サイトへ導く「フィッシング」

通販会社やクレジット会社を装い「認証に失敗したので,詳細はこちらをクリック」等の内容で電子メールを送信し、うっかりURLをクリックした人から個人情報を取得したりするオンライン詐欺をフィッシングと言います。zoomでは,主催者から届いたURLをクリックするという参加方法が多いので注意が必要です。zoomではないサイトなのに,"zoom”の文字を含めた新しいドメインは3,300個も確認されているそうですよ!

これらのリスクに対して「zoomを使わない」という判断もあります。もし仮に,機密やプライバシーに関する会議だったらzoomは避けたほうがよさそう。
一方で,はじめての人やPCに不慣れな方の使いやすさを考えるとzoomはたいへん優れています。また,対策をすれば十分リスクを低減させることができると考えました。

では,どんな対策をするとよいか?ということですが,一般的なことは参考URLの記事をご覧ください。
対策を立てる時に大事なことは「コストに見合った対策か?」「仕事の手順に組み込んでいるか?」の2点です。「ZOOM de かんさつ会」用に絞り込んだり,アレンジした対策の例として実際のチェックリストの一部を抜粋して掲載します。

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<事前準備(スケジューリング時の設定)>
 □ミーティングパスワードを「必須」に →1)「zoom爆弾」対策
 □待機室を有効化を「チェック」 →1)「zoom爆弾」対策
 など。

<告知時(SNS等での広報文章に明記)>
 □zoomを使用したイベントであることを明記する。 →使いたくない人は使わない
 □「案内メール」の送信予定日時を示す。 →3)「フィッシング」対策
 など。

<案内メール(前日の夕方に送信)>
 □URL,ID,パスワードを個別に連絡。 →1)「zoom爆弾」対策
 □「URL,パスワードを共有・公開しないこと」をお願い。 →1)「zoom爆弾」対策
 など。

<zoomイベント開催前>
 □zoomクライアントが最新バージョンか確認する。 →2)「脆弱性」対策
 □待機室で申込者名簿と照会,確認できたら入室許可。 →1)「zoom爆弾」対策
 など。

<zoomイベント実施中>
 □基本的な使い方を紹介する。(ミュート,チャットなど) →1)「zoom爆弾」対策
 など。

<あらしや不具合が起こった場合>
 □参加者の迷惑行為:「口頭注意」→「待機室」→「チャット」。 →1)「zoom爆弾」対応
 □第三者の迷惑行為:即座に「待機室」ないし「削除」。 →1)「zoom爆弾」対応
 など。

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急速にオンラインイベントが普及しています。
今後はネット上でのリスクマネジメントも大事になってきそうですね。


参考文献:
「安全なテレワークのために:「Zoom」のリスクとセキュリティを理解する」トレンドマイクロセキュリティブログ. https://blog.trendmicro.co.jp/archives/24590 (2020.05.06.閲覧)
「Zoomの危険性 使用禁止する企業、組織が増えている理由」IT小僧の時事放談. https://ityarou.com/ithoudan0630/ (2020.05.06.閲覧)
「Zoomの脆弱性やセキュリティに関する5つの問題 すぐにできる対策も解説」TECH CAMPブログ. https://tech-camp.in/note/technology/84112/ (2020.05.06.閲覧)
「Zoomを安全に利用する4つのポイント。Zoom爆弾や情報漏えいへ対処する。」Yahoo!JAPANニュース. https://news.yahoo.co.jp/byline/ohmototakashi/20200406-00171691/ (2020.05.06.閲覧)

安全管理のコラム第50回「COVID-19に関するガイドライン」2020年4月

「ガイドライン」とは,おおまかな指針や指標,判断基準といった意味合いです。
今回のCOVID-19 (新型コロナウイルス)の感染拡大では,それぞれの業界や団体,施設等でガイドラインが作成されています。

野外活動を楽しみたい一般の方向けのガイドラインとしては,(一社)コンサベーション・アライアンス・ジャパンの「野外に出るときに/5つのガイドライン」があります(アメリカのOutdoor Allianceが発表したガイドラインを日本版にリライトしたもの)。
以下,項目のみ抜粋します。

 1)まわりの人々の健康と安全を脅かさないこと。

 2)戸外に出るときは、他者との安全な距離を保つこと。

 3)家の近くにある自然を楽しもう。

 4)ケガや病気をしないように慎重に行動しよう。

 5)休業、休園、閉鎖、中止をリスペクトしよう。

また,より身近な都市公園の利用については,ワールド・アーバン・パークス・ジャパンが世界公園週間(4/25〜5/3)の案内の中で「COVID-19を拡げない公園の使い方 イラスト」を公開しています。

イラストの中では,

 ・お互いのために2m離れましょう。

 ・混雑して安全な距離が取れないときは,おうちに帰り,出直しましょう。

 ・公園への立ち入りが制限されていることもあります。

 ・症状があったり,感染の疑いがあるときは,公園などを利用しないでください。

 ・手すりやベンチ,遊具,その他,みんなが触れるモノには注意しましょう。遊び終わったら手を洗いましょう。

などが描かれています。

上記2つは全世界的なガイドラインなのでおおまかなものです。国や自治体,その施設や公園のガイドラインや指示が優先します。


ちなみに,グリーンシティ福岡では「新型コロナウイルス感染症への対応・対策」の名称でガイドラインを作成し,公開しています。

ワークショップや会議といった室内イベント,自然観察会や保全作業といった屋外イベントなど,イベントの実施可否や感染予防策を中心にレベル1〜5を設定しています。このガイドラインを踏まえて状況に応じた対応をとっています。

現在(2020年4月20日)はレベル4。全ての対面型イベントは中止しており,オンライン配信等によるイベントのみを検討。職員は原則リモート勤務です。

今後,緊急事態宣言の解除や感染の収束などにより,レベル3→2→1と警戒の度合いを下げていくことができたらと願っています。しかし,長期化する見込みもありますし,緊急事態宣言の発令と解除が繰り返されることも十分考えられます。レベル4(全ての対面型イベントの中止)とレベル3(屋外イベントのみ対策をとりながら実施)を行き来する可能性もありそうです。


ガイドラインには,あらかじめ判断基準や目指す状態を設定しておくことで,

 1)他の人と考えを共有することができる。

 2)当初の目標を忘れないでおける。

 3)その場その場で考える負担を減らせる。

といった効果があると考えています。特に自粛や制限が長期化する見込みの中では,ガイドラインを設けておくことの効果が大きいと思います。

安全管理のコラム第49回「お茶コーナーの接触感染予防」2020年3月

2020年の1月から現時点(3月)まで,世界的に新型コロナウイルスの感染が広がり問題になっています。

このコラムでも2019年1月に「インフルエンザを広めない」のタイトルで書きました。

 ○体調が悪い人は出席しない。

 ○手洗いやアルコール消毒ができるようにしておく。

 ○室内であれば随時,換気する。

 ○アイスブレイクを非接触系のものにする。

 ○お茶コーナーのお菓子を個包装のものにする。

 ○ドアノブやポットを適宜アルコールで拭く。

などを挙げていますが,新型コロナに限らず,毎年インフルエンザの時期にイベントや野外活動を行う人は心がけたい内容だと思っています。

これに加えて,先日行った「しかボラ(志賀島森林保全ボランティア)」では,お茶コーナーでのお茶のサーブをスタッフが行うことにしました。

「しかボラ」は野外で森の手入れをする活動で,寒い時期のお茶コーナーには,あったかい麦茶の入ったジャグ,チョコレートやおかきなどの個包装のお菓子を用意しています。これまではあえて参加ボランティアのみなさんに自分でジャグからお茶を注いでもらうようにしていたのですが,それでは蛇口のレバーを全員が触ることになります。蛇口を介した接触感染のリスクを減らすために,手を消毒してゴム手袋をつけたスタッフが全員分のお茶を注いで配るようにしたのでした。

寒い屋外では鼻水やくしゃみが出ることも多いです。頻繁に手を洗える場所でもありませんので,鼻をかんだ後の手で蛇口のレバーを触ることもあると思います。複数人で触る物や場所には相応のリスクがあると考えた方がよさそう。その意味では,共用する道具(根切りバサミや刃物手入れの油など)も同じですが,軍手の上からなので多少マシだと考えています。

あくまで,中止要請が出されていない範囲の規模・内容のイベントを,一般的な感染防止の注意事項を守りつつ,さらに独自の防止策を加えて実施している,という事例としてご紹介しました。上記で感染を防ぐことができると保障できるものではありませんし,感染拡大の状況が変化したり,新たな国の指針や感染防止策などが示された場合は,それに従ってイベントや活動の催行判断,運営方法の検討を行なっていくことが必要です。

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安全管理のコラム第48回「セーフティトークの3ステップ」2020年2月

ガイドツアーや保全作業などを始める時のオリエンテーションは安全管理の意味でも重要。タイムスケジュールや天候の注意,立ち入り禁止区域,道具の使い方などを説明し,事故が起きないようにするものです。オリエンテーションの中でも,特に安全に関する部分は「セーフティトーク」と呼ばれます。


オリエンテーションやセーフティトークをする時は「組み立て,場をつくり,表現する」の3ステップを意識するとよいです。

最初の「組み立てる」は,事前に話す内容を組み立てておくということ。
安全について話しておくとよいことって「今日は暑いから熱中症と水分補給のこと…,服装については…,園路を離れると急斜面があるので…,この道具を使う場合は…」などいろいろ。まずはそれらを洗い出すのがスタートです。
と言っても,それら全てを長々と説明しても聞く側は覚えられないし興醒めしてしまうかもしれません。口頭で説明して伝わるのはきっと2〜4項目が限度。「今日は言わなくていいこと」「現場でその都度,注意喚起すること」「優先度が低いので時間が空いたらお話しすればよいこと」などを省いて絞り込みます。その上で,絞り込んだ内容をどんな順番で話すのが効果的かを考えます。

次の「場をつくる」は,集まる場所やお互いの距離感のこと。
屋外でオリエンテーションやセーフティトークを行う場合,集まる場所が大事です。
車やその他の騒音がうるさくないか?参加者から太陽がまぶしくないか?他の一般市民の通行の妨げにならないか?などに気をつけ,落ち着いて説明ができる場所を選びます。
また,みんなが散り散りに立っていたり,遠巻きに見ていたりすると声が届きません。集まった時にイマイチ遠いなあと感じたら「あと2歩,前にお進みください」などと言って,ギュッと近づくのがよいと思います。いきなりしゃべり出す前に,落ち着いて話を聞ける場をつくることが大事です。

三つ目の「表現する」は,口や表情,身振り手振りで伝えること。
人前でしゃべる時,慣れてない方は自然と声が高く,スピードも速くなりがちです。少しだけ,ゆっくり,落ち着いた声を心がけるとよいようです。
また,顔や体は参加者の方を向けること。手元のメモを見ながらの場合でも,なるべく顔は上げておきたいですね。目線を配ることもポイントです。参加者一人ひとりの顔を順に見ながら話をすると,参加者を歓迎する気持ちがお伝えできると思います。
表情や身振り手振りも大切ですが,それぞれの人の個性や持ち味があると思います。


「適切な情報提供」は安全管理の上で不可欠です。
効果的なオリエンテーション&セーフティトークが行われますように!

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安全管理のコラム第47回「交通事故のこと(3)」2020年1月

飲酒運転による死亡事故は年々減少してきました。
特に2007年の改正道交法施行の前後で612件(2006年)から305件(2008年)に半減。このきっかけとなった2006年の福岡市の海の中道大橋の事故をご記憶の方も多いと思います。ただ,この数年は200件前後が続いて「下げ止まり傾向」です。


ところで,みなさんお酒はどれくらい飲みますか?
全く飲まない人から「ザルの人」までいろいろと思いますが,私は居酒屋だったら,生を2杯,芋のロックを3-4杯という感じかなあ?最近は周りにつられて焼酎の代わりにハイボールを飲むこともあります。
さすがに飲酒直後に運転する人はもういないんじゃないか,と。たぶん。微妙なのは飲んだ翌日の運転です。

アルコール摂取量の基準として「お酒の1単位」という言い方があります。純アルコールに換算して20gのことで,ビール中瓶なら1本(500ml),日本酒なら1合(180ml),焼酎なら0.6合(110ml)が1単位の目安です。さっきの「生を2杯,芋のロックを3-4杯」であれば合計5〜6単位になりますね。

で,アルコールの分解にかかる時間は(体質や体重によって違いますが)1単位なら約3〜4時間,2単位なら約6〜7時間とされています。居酒屋で生2杯+焼酎3杯(計5単位)を飲んだら,覚めるまで15〜18時間かかる計算。21時で飲み会終了としても,早くても次の日の正午までお酒が残ってる計算に…!!
これは朝から運転する予定がある人は前日はお酒を飲めないということですね。

運転が仕事の業界には飲酒運転防止のマニュアルやガイドラインがあります。
「(公社)日本バス協会」や「(公社)全日本トラック協会」などの飲酒運転防止対策マニュアルでは,二日酔いの防止に関して以下のようなルールが定められています。
 ・勤務時間前8時間は飲酒禁止。
 ・飲酒後8時間たてばアルコール血中濃度が必ず平常値に戻るものではないことの指導を徹底する。
 ・行先地及び宿泊地における飲酒禁止。

飲酒運転による交通事故は,重大事故につながる危険性が高いです。
次の日に飲酒運転をすることがないよう,お酒の量や飲み会の時間をお互いに気をつけていきたいですね。

参考文献:
 警察庁「みんなで守る『飲酒運転を全体にしない,させない』」
 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
 (2020.01.19.閲覧)
 公益社団法人アルコール健康医学協会「飲酒の基礎知識」
 http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html
 (2020.01.19.閲覧)
 公益社団法人日本バス協会「飲酒運転防止対策マニュアル」
 https://www.mlit.go.jp/common/000168539.pdf
 (2020.01.21.閲覧)
 公益社団法人全日本トラック協会「飲酒運転防止対策マニュアル」
 http://www.jta.or.jp/member/pf_kotsuanzen/inshuunten_boushi_1909.pdf
 (2020.01.21.閲覧)

安全管理のコラム第46回「交通事故のこと(2)」2019年12月

今年12月1日から「ながら運転」が厳罰化,違反点数は「携帯電話使用等(保持)」が1点から3点に,「携帯電話使用等(交通の危険)」が2点から6点になりました。6点と言えば一度で免停です。

「ながら運転」に関する警察庁の発表では,スマホ等を見ていたことによる交通事故の件数は増加傾向。交通事故全体の件数は減少傾向なのに,です。さらに,スマホ等見ていなかった場合の事故と見ていた場合の事故を比べると,死亡事故の確率は2倍以上になるらしく,事故の深刻度が高いそうです(平成30年実績)。

思い出されるのは2016年10月に起きた事故。トラックのドライバーがスマホゲームのポケモンGOをやりながら運転し,集団下校中だった小学生をはね,4年生の男児が亡くなりました。

ポケモンGOは世界的なブームになりましたが,アメリカでは交通事故との関係を調べた調査も報告されています。"Death by POKEMON GO(ポケモンGOによる死)" というなかなかストレートな表題のレポートです。
アメリカのパデュー大学の二人の教授が,ポケモンGOリリース後,インディアナ州ティピカヌー郡でに起きた交通事故,約12,000件を調査・分析したものです。「ポケストップ」の周囲100メートル以内で起きた事故を集計したり,走行しながらでも利用できる「ポケストップ」とそうでない「ポケジム」を比較したりしつつ,結果,約12,000件の事故のうち134件が,ポケモンGOが原因だったとしています。これから「推論」すると全米におけるポケモンGOによる事故は14万5千件以上,死亡件数は256人になるとのこと。
あくまで推論だと思いますが,ちょっと衝撃を受ける数字です。これはポケモンGOによる影響だけを考察していて,メールやSNS,動画やコミックなどのアプリによる影響は含まれていないのでなおさらです。

私自身が気をつけたいのは,Googleマップなどのナビアプリの使用です。目的地の入力や高速を使うか使わないかの条件設定を済ませてから,車を動かすように徹底しないといけませんね。

厳罰化がはじまった2019年12月上旬のある日,福岡市中央区薬院の交差点で信号待ちをしてる間になんとなく通り過ぎる車のドライバーを見てました。20台ほど通り過ぎるのを数えた中で1人,スマホをハンドルに重ねて持ちながら運転してる人がいました。
うーん,意外とまだいるのかもしれません。


参考文献:
 日本経済新聞 2018/10/26「愛知・ポケGO事故2年 遺族『ながらスマホやめて』」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191201/k10012197481000.html (2019.12.19.閲覧)
 警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/keitai/info.html (2019.12.19.閲覧)
 Mara Faccio, John J. McConnell (2017) Death by Pokémon GO: The Economic and Human Cost of Using Apps While Driving. https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3073723 (2019.12.19.閲覧)
 GIZMODO 2017/11/28「ポケモンGOで増えた米国での交通事故は、推定約10万件以上」https://www.gizmodo.jp/2017/11/pokemon-go-caused-traffic-accidents.html (2019.12.19.閲覧)

安全管理のコラム第45回「交通事故のこと(1)」2019年11月

先日,屋外イベントで20人ほどの参加者を先導する途中,森に沿ってカーブした道路を横断することがありました。見通しが悪い割には40km程度のスピードで通過する車もあり,交通事故が心配な場所でした。
無事にみんなで横断できたのですが,イベント後のふりかえりではスタッフから「あの時はこう誘導するとよかった」など,いろいろ意見が出てきました。その様子を見て,事故が無かったからとスルーするのでなく,交通事故をきちんと意識してふりかえりや情報共有をするのはいいことだなあ,と感じました。

警察庁が今年はじめに発表した2018年の交通事故死者数は3,532人。1948年に統計を開始して以降もっとも少なくなったそうです。平成に入った頃は1万人前後で推移していましたが,この20年間は減少傾向が続いています。運転マナーや車両の安全性の向上,取締りの強化や道路などのインフラ整備などの効果が現れているのだと思います。人口動態(若者が減るとか)も影響しているかもしれません。
ちなみに同じ交通事故でも厚生労働省の統計は集計対象が異なります。直近のデータである2017年では交通事故による死亡数は5,004人となっています(事故発生から1年以内に亡くなった方)。その内,歩行者の交通事故,つまり歩いていて自動車やバス等と接触して亡くなった方は1,872人でした。

全体的に減少傾向ではありますが,現在でもこれほど多くの方が交通事故の被害に遭っているのはとても残念で悲しいことです。

そもそも自動車は重量が大きくスピードも出せるので危険性の高い道具です。ただ身の回りに溢れているので,その危険性に鈍感になっている気がします。1m横でチェーンソーを振り回されたら驚いて逃げ出しますが,車が1m横を通り過ぎても大して驚きませんよね?

ところで,自然体験や環境保全活動のリスクとしては,熱中症や溺水,落雷,スズメバチ ,作業道具による怪我などをよく挙げます。厚生労働省の人口動態統計での,これらに関係する2017年の死亡者数は以下の通りです。


 熱中症___635人(自然の過度の高温への暴露)
 川や海での溺水___676人(自然の水域内での溺死及び溺水)
 落雷___1人(落雷による受傷者)
 スズメバチ___13人(スズメバチ ,ジガバチ及びミツバチとの接触)
 作業道具___27人(無動力手工具,動力芝刈り機,動力手工具の合算)

 歩行者の交通事故___1,872人

それぞれの事故が起きる状況は異なるので単純に比較することはできませんが,これらを見ても交通事故は頻繁に起こり得る,常に意識しておきたいリスクであると感じます。
寄生獣ミギーも眠りにつく前に言っています。
「……それより交通事故に気をつけろ」

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安全管理のコラム第44回「お互いに声をかける」2019年10月

令和1年7月7日,高知市で行われた河川清掃イベントで3歳の男の子が亡くなる事故がありました。
報道によると,父親と男の子が2人で高知市秦南町の久万川(くまがわ)の河川清掃イベントに参加。朝6時半くらいから町内会の関係者など40人くらいで河川敷のごみ拾いや草刈りをしていたとのこと。7時過ぎに男の子の姿が見えなくなったと通報が行われました。捜索の結果,男の子は川の中で発見。その後,死亡が確認されたそうです。

とても悲しい事故です。男の子のこと,親御さんのことを思うとたいへんつらい。
ネット上では,小さい子どもから目を離してはいけないとか,水辺ではライフジャケットを着用させるべき,といったコメントを目にしました。確かにその通りかもしれませんが,一番悲しんでいるのが誰かと考えると,保護者の責任ばかり追及するのも心情的にきびしい…。

保全作業やイベントの運営者としては,参加者がお互いに知った者同士か?ということもかなり大きいと思っています。

地域活動的なイベント(町内の一斉清掃や農村の草刈りの共同作業など)では,日頃から顔を合わせている人で行うことが多いです。そのため,程度の差はあれ,お互いに声をかけあったり目を配ったりが行われやすい。
一方で,参加者を一般募集するようなイベントでは,知らない者同士なので,お互いの声かけや目配りを期待することはまずできません。その分,オリエンテーションで進め方や安全のことについてしっかり説明を行い,スタッフやグループリーダーが見回って安全管理を行います。

地域活動では,参加者が三々五々集まって五月雨式に清掃や草刈りを始めたりします。全員が見知った仲で,お互いのコミュニケーションが取れているのであればそれも構いません。しかし,住人の入れ替わりがあったり,日頃の交流が少ない地域だったりする場合は,そのやり方では不十分です。

活動を始める時にみんなで集まって「今日は20人での作業だな」「わからないことはあの人に聞けばいい」「ご年配の方は無理しないように」「自分で歩き回りたい盛りの小さい子がいる」といったことを共有し,参加者同士で声をかけたり目配りしやすい状況を作りましょう。特に子どもたちの安全は周りにいる大人全員で気にかけていきたいと考えています。

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安全管理のコラム第43回「落雷事故は防げる」2019年8月

夏の時期に多い落雷事故について。

1996年8月の大阪府高槻市の落雷事故。同市で開催されたサッカー大会に出場して被災した男子高校生は重度後遺障害を負いました。その後の訴訟の結果,高槻市体育協会などは3億円を超える賠償金を支払うことになりました。裁判所が「落雷事故の責任を認めた」=「落雷事故は防ぐことができるものであると判断した」ということだと思います。

この訴訟にも一部関わった弁護士の望月浩一郎氏は,「落雷は防げないが落雷事故は防げる」と題した資料を公開しています。

ここで紹介された落雷事故防止の方法はとてもシンプルです。

 1)ピカッと光ったら逃げる。

 2)ゴロッと聞こえたら逃げる。

 3)雷雲が完全に消えるまで避難し続ける。

の3点です。
他にも訴訟の経緯や落雷事故の事例などがまとめられていて,スポーツに限らず野外活動を行う指導者にはぜひ読んでいただきたい資料です(2010年作成)。

個人的に注意したいと思っているのは「雨宿りの場所」。
濡れない場所で雨が止むのを待っている時,そこが安全な場所かどうか?建物の軒先や木の下などは危険です。例えば雷が建物に落ちた場合,電流は建物の壁に沿って流れます。その時に軒先に人がいると「側撃雷」と呼ばれる壁からの放電に撃たれるおそれがあります。木の下にいる場合も幹からの側撃雷があります。木の場合は幹から2m以上離れること。建物の場合は,外ではなく室内に入ることが大事です。

もう一つは,避雷針の有効半径は案外狭いということです。
2014年8月に愛知県扶桑町で起きた高校野球部の練習試合中の落雷事故。グラウンドのバックネットの支柱には避雷針12本が設置されていましたが,マウンド上のピッチャーは守れませんでした。通常,避雷針はその高さ分の半径しか有効ではありませんし,グラウンドや公園の全域をカバーするほどの避雷針を立てるのは難しい。避雷針があるからといって油断はできません。

ついでに,メガネや時計などの金属類を身につけているからといって雷が落ちやすくなるわけではありませんし,ゴム長靴やレインコートを着ているからといって落ちにくくなるわけではありません。雷ほどの電圧になると多少の金属や絶縁体はほとんど関係ないようです。

近年,落雷による事故やその死傷者数は減少傾向にあるそうです。落雷事故を防ぐための知識が広まりつつあるのだと思います。

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安全管理のコラム第42回「枯れ木の伐採」2019年7月

森林ボランティア限定の話題かもしれませんが,枯れ木伐採の注意点をまとめました。

いわゆる里山的な森の手入れは昭和30年代くらいまで普通に行われていました。その後,電気・ガスや化学肥料の普及に伴い,次第に管理放棄されていきます。現在,都市緑地や特別緑地保全地区になっているまちなかの森は,だいたい放棄されて半世紀ほど経った「かつての里山」と言えます。そんな「かつての里山」の多くは現在,枯れ木が非常に多い状態です。放棄されて数十年経って,常緑樹に負けたハゼノキやヤマザクラなどの落葉樹,寿命が短い傾向にある亜高木のクロキ,込み合いすぎてヒョロヒョロになった高木の常緑樹などが次々に枯れていく段階に入ったからです。

遊歩道や園路が通った緑地ではそんな枯れ木が事故の原因になることも考えられます。森林ボランティアでも枯れ木を伐採することがあります。通常の伐採とも重複しますが,以下のようなポイントには特別に注意したいところです(ノコギリなどの手道具での作業を想定しています)。

1)近づく前に,上方の枯れ具合をチェック。
全体的に枯れていて倒れそうな状態なのか,一部の枝が枯れて落ちてきそうなのか確認します。もしかすると,折れた枯れ枝が途中で引っかかって宙ぶらりんになっていたりするかもしれません。

2)足元の落ち枝の片付け。
落ち枝で足元が散らかっていることも多いです。とっさの時に足にひっかけたりするかもしれませんし,伐倒した木に当たって跳ね上がったり飛び散ったりするかもしれません。事前の片付け,大事です。

3)全方向で樹高以上の距離,退避する。
枯れ木は思いがけない方向に倒れることがあります。伐倒の担当者以外で見学やサポートを行う人は,倒そうと思っている方向からだけでなく360°全ての方向で樹高以上の距離をとって退避します。

4)伐倒のきっかけはロープで与える。
伐倒の瞬間までノコギリを引いているのはマズイ。枯れ木は倒れる時の加速度で枝や幹が折れます。特に幹が「く」の字に折れて根元に落ちてきた場合が危険です。加えて,地面に倒れて枝が飛び散ることも多いため,伐倒時に周囲に人がいないようにすることが原則です。そのために,伐倒の担当者は慎重に受け口・追い口を作りつつ,樹冠が動きそうになったら速やかに退避します。退避を確認した上で,事前に張っておいたロープを引き安全な距離から伐倒のきっかけを与えます。引いても倒れないようなら,ロープを緩めた上で再度,慎重に追い口を進めて,退避とロープの牽引を繰り返します。このため,事前のロープ設置は不可欠です。

5)伐採中は常に上を確認。
ノコギリの振動で枝や幹が折れる場合があります。樹冠が動きそうかどうかを確認する必要もあるので,伐倒の担当者は2,3回ノコギリを引いては上を見る,みたいな感じになると思います。もう一人が安全係として離れた場所から木の全体を見ておき「大きく揺れる枝がある」とか「樹冠が動き始めた」などの注意喚起をするのがよいと思います。ノコギリなど手道具での作業は大変ですが,お互いに声を掛けあえるという最大のメリットを活かしましょう。

6)ツルがほとんど機能しないことがある。
もともと枯れ木は材に粘り気ががなく「ボキッ」「ボソッ」という感じに折れてしまいます。さらに部分的にグズグズに腐朽が入っていることもあります。通常の伐採は,受け口・追い口で切り残した「ツル」が蝶番のような役割を果たして,伐倒方向とスピードをコントロールするという考えですが,これがほとんど機能しないかもしれません。そのため,上記の360°退避,ロープで伐倒,常に上を確認が重要となります。

7)大風の後,雨の後の注意。
台風などの後,枯れ枝がよく折れています。途中で引っかかっていることもあります。また,腐朽が入ってグズグズになった箇所は雨が染み込みやすいので,雨が降った後は枯れ枝は水を含んで自重で落ちやすくなっています。大風や雨の後は作業前のチェックを念入りにしたいところです。


と,いろいろ書きましたが結局は「無理しない」のが一番。「枯れ木は通常の伐採の倍は危ない」と考えて,自分たちの手に負えない作業はやらないという判断が森林ボランティアにはもっとも大切だと思います。

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安全管理のコラム第41回「ガイドレシオ」2019年6月

ガイドレシオ(guide ratio)という言葉があります。登山などでガイド1人が何人の参加者(顧客)を連れていくかという比率です。ガイド1人に対して参加者が10人の場合はガイドレシオ1:10です。例えば(公社)日本山岳ガイド協会の「ガイド対顧客標準人数比率に係る規定」では,

 里地里山の整備された自然観察路等___1:15
 安心して歩ける初心者向けの登山道___1:12
 縦走も含む中級者向け登山道________1:10
 岩尾根なども含む上級者向け登山道___1:5

などと定められています(積雪のない時期)。
現場のリスクの大小によってガイド1人が目配りできる人数は変わるという考え方ですね。他にも(一社)日本アルパイン・ガイド協会やガイド会社などで定めた規定があります。

グリーンシティ福岡はいわゆる山岳ガイドは行なっていませんが,自然観察会では1:15,近郊の低山を含むハイキング等では1:12を超えないような定員やスタッフ体制にしています。
このように登山以外の体験プログラムでも,ガイドレシオの考え方は役立つと思います。

例えば,小学生の子どもたちとの里山保全体験で,ヘルメットをかぶって手ノコで中低木(樹高2mから5m程度)の伐採を行うような場合。現場スタッフ1人あたり何人の参加者が適正でしょうか?
うーん,難しい。学校団体などで参加者が子どもだけの場合と,親子体験で保護者が付いている場合では違うでしょうし,貸し出す道具の種類や数によっても変わってきそう。あえて目安を設けるとしたら,子どもだけの場合1:8程度。親子連れなら3,4組(保護者と子どもが半々くらい)を担当するということで1:12程度でしょうか?

別の例では刃物を使ったクラフト体験。グリーンシティ福岡では,切り出しナイフで小枝を削る「森のえんぴつ」づくりを行ないます。15分程度の短い体験ですが,指を切るなどのリスクがある内容です。実際にこれまでは,小学校高学年なら1:3程度。小学校低学年なら1:1での指導してきたように思います。

活動内容や対象,周辺の状況によって一人のスタッフが対応できる人数は変わるので,一様に決めることは困難です。とは言え,上限としてガイドレシオを設けておくことは安全管理にもなりますし,体験プログラムの適正な単価・料金を守っていく上でも一つの根拠になると思います。
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参考文献:
(公社)日本山岳ガイド協会. http://www.sakura11.com/kmga/reshio.pdf
(一社)日本アルパイン・ガイド協会. http://www.agsj.org/kyoukai/kiyaku/NAIKI_RATIO(h250115kai).pdf
(一社)日本旅行業協会. https://www.jata-net.or.jp/membership/info-japan/climbing-tour/pdf/201303tourclimb_guiderecio.pdf

安全管理のコラム第40回「企業ボランティアの保険」2019年5月

環境保全を行なうNPOの活動に,企業が社会貢献やCSRとして参加されることがあります。例えば海岸清掃だったり,植樹や草刈など。そんな場合は,事前に保険についてお互いで確認しておきましょう,というお話です。

企業であれば,労災保険や勤務中の事故に対して掛けている各種保険で補償がきく場合もあります。参加した社員本人が怪我をした時の医療費(傷害保険),活動中に誤って人や財産を傷つけて発生した示談金・賠償金(賠償責任保険)の両方について,補償されるかどうか確認します。林業体験などリスクの高い活動は,補償の対象外になる場合があるので注意したいところです。

間違いがないのは,受け入れ団体側が加入しているボランティア保険や行事保険に加入すること。林業体験であれば「グリーンボランティア保険」など,それぞれ団体が活動にふさわしい保険の情報をお持ちのことと思います。

半年ほど前(2018年秋頃),企業の社会貢献を進める某全国組織から「企業ボランティアを受け入れてほしい」と依頼がありました。「無償で」ということだったので,最低限の条件として「参加企業側でボランティア保険に加入することが『必須』」と伝えると「それでは参加のハードルが高いので『必須』ではなく『推奨』にしてほしい」との回答がありました。内心「ちょっと何言ってるかわからない」と思いながら「保険料をお支払いいただければこちらで手続きしますので,ぜひ加入を」と返すと「それでも難しい」とのことで,受け入れ自体が見送られることになりました。

結局,物別れに終わったので私の伝え方が悪かったかなあ?と反省しかけましたが… いや,保険が「推奨」とかやばいでしょ。それは「フィランソロピー」じゃないなあ(笑)!

知らない間にリスクを背負い込んだり,相手に押し付けたりしないように気をつけたいですね。
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参考文献:
 加納社会保険労務士事務所「ボランティア活動中の事故〜労災保険給付との関係」
 http://www.sr-jinji.com/news26.html (2019.05.15.閲覧)

安全管理のコラム第39回「伝える・伝わる」2019年4月

何人かで活動する現場では,想定されるリスクや注意事項を共有することが重要。その意味では「話し方」や「伝え方」も安全管理の技術の一つです。
先日,建設分野の安全教育ビデオを見る機会がありました。場面は建設現場の朝礼。現場監督が作業員に対して,作業上の危険や注意を伝える時の「良い例」や「悪い例」を役者さんが演じたものです。建設現場の朝礼での「伝え方」では,次のようなポイントがありました。

(1)「言ったから伝わる」は間違い。
「ベラベラ早口で一方的にしゃべる」「メモから目を離さず読みあげるだけ」「しゃべる順番が前後したりバラバラになったりでわかりにくい」。これでは,言ったけど伝わってない,言いっぱなしの自己満足です。
大切なのは,ゆっくり,具体的に言うこと。担当等があれば名前を呼びかけつつ伝えること。作業員の表情を見たり返事を待ったりして,伝わったかどうかの確認をすることです。
例:「○○さん,○○をお願いします。先月△△があったので,□□に気をつけてください。」

(2)マンネリになると伝わりにくい。
同じ作業が続くこともあります。連日同じ注意事項だと「いつも通りです」的な雰囲気になり,危機感や積極性が薄れてしまいがち。マンネリ打破のためには,伝え方やしゃべり方を変えるのも一つの手かもしれませんが,考えてみれば現場の状況が全く同じということはあり得ません。作業員の入れ替わり,作業の進捗,天候や気温の変化,作業者の体調,週のはじめと終わりなど,現場を取り巻く状況は日々変化しています。むしろ大事なのは現場を巡り,作業者の様子を見て日々の変化を捉えること。その上で,その日に必要な指示内容を伝えることだと言えます。

(3)「この人の言うことは聞きたくない」。
人間関係は大きく影響します。現場監督と作業員の個人的な関係性から「この人の言うことは聞きたくない」となることも起こります。そうなると,どんなに大切な内容であっても伝わりません。怒鳴ったり,頭ごなしに否定したりすることで関係が悪くなることもあるでしょうが,そうでなくても小さなことの積み重ねで人間関係がこじれることもあります。
「あいさつをすること」「他愛もない雑談をすること」「職種でなく名前で呼びかけること」などで,日頃からよい関係を作っておきたいものです。

ということで,建設分野の安全教育ビデオから学んだ「伝え方」のポイントでしたが,「作業員」を「参加者」に変えたら,自然観察のガイドやインタープリテーションにも共通することだな,と思います。安全な場づくりの基本はコミュニケーションかもしれません。

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安全管理のコラム第38回「失敗知識データベース」2019年3月

失敗知識データベース」には,産業や科学技術分野を中心にいろんな分野の事故や失敗事例が蓄積されています。それらの事例から得られた知識やノウハウを発信しているありがたいサイトです。多くが工場や建設現場などの事例ですが,社会的にも話題となった「こんにゃくゼリー事故」や「六本木回転ドア事故」などの事例も入っています。
いろいろ経緯があってここ10年程の事例は入っていませんし,私たちに関係する野外活動や自然体験分野の事例はほとんどないのですが,それでもぜひ一度ご覧いただきたいサイトです。

このデータベース構築の中心となったのは東大名誉教授の畑村洋太郎先生。2000年に出た著書「失敗学のすすめ」は当時,話題になりました。「失敗学」とは,起こってしまった失敗に対し、責任追及に終始せず原因を究明し今後に活かしていく取り組みです。特に,同じ過ちを繰り返さないための対策やノウハウをどう社会に広めるか?を重視しています。

2005年に「失敗知識データベース」は当初,独立行政法人科学技術振興機構(JST)のプロジェクトとして立ち上がりました。その後2011年3月に事業仕分けによって「規模縮減」とされ,JSTによる運営は終了。2011年4月から畑村先生のサイト「畑村創造工学研究所」が引き取り,その後2017年に「NPO法人失敗学会」に移管され現在に至ります。

いくつか思うことがありますが,一つ目は「事故事例研究」や「ヒヤリハット研究」は「失敗学」のNPO・自然学校向けアレンジ版といった感じだなあ,ということ。いかに無理なく,日常の活動や業務の中に「失敗から学ぶ仕組みを織り込んでいくか」が肝心だと思っています。

二つ目は,いろんな分野を横断した大規模な失敗事例のデータベースは(有益だけれど)構築が大変だろうな,ということ。状況や組織文化などが様々であることに加え,営業秘密や個人情報の関係もあり,十分な情報を集めて記載することは相応のコストがかかるものだと思います。

三つ目は余談かもしれませんが,畑村先生は2011年6月から2012年9月,福島原発の事故調査・検討委員会の委員長を務めました(政府事故調の方)。このコラムを書いているのは震災から8年となる2019.03.11.。福島第一原発事故は「失敗知識データベース」のどの事例よりも大きな被害と影響をもたらしました。その教訓が今後に活かされることを願っています。
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「失敗知識データベース」. http://www.shippai.org/fkd/index.php(2019.03.11.閲覧)
畑村創造工学研究所. http://sozogaku.com/hatamura/index.php(2019.03.11.閲覧)
特定非営利活動法人失敗学会. http://www.shippai.org/shippai/html/index.php(2019.03.11.閲覧)

安全管理のコラム第37回「"accident"と『不慮の事故』」2019年2月

1990年頃から欧米の医療や安全管理の分野では「事故」を意味する単語として"accident"ではなく"injury"が使われるようになっているそうです。もともと"accident"は「思わぬ出来事」「神様のいたずら」「不可避の運命」といったニュアンスとのこと。「事故を思わぬ出来事のように捉えるのでなく,予測・予防するものとして捉えよう」という考えが背景にあります。

 一つの例が下記の参考文献の中でも引用されていました。医学の専門誌である「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(イギリス医師会雑誌:British Medical Journal)」の2001年の論説記事です。その記事のタイトルは「BMJ bans “accidents” / Accidents are not unpredictable」で「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは"accident"(の語を使うこと)をban(禁止)する」と言っています。事故は予測不可能ではない,という強いメッセージですね。野外での体験活動や保全作業に関わる私たちも心にとめておきたい認識だと思います。

 一方,日本語で"accident"に近い言葉といえば「不慮の事故」。「思いがけない,予測不可能な事故」といった意味合いで一般的に使われています。
 ちなみに政府統計の人口動態調査では死因のカテゴリーとして「不慮の事故」があります。平成29年に「不慮の事故」で亡くなった方の数は40,329人でした。具体的にどんな事故が含まれているかと言うと「交通事故」「転倒・転落・墜落」「不慮の溺死及び溺水」「不慮の窒息」「自然の力への曝露」などです。溺死は浴槽での事故が多く,窒息は誤嚥など,自然の力への暴露は低体温症の割合が高いです。また,保険業界の「不慮の事故」とは「急激かつ外来かつ偶然の事故」と定義されていますので,業界によって多少意味は異なります。

 「不慮の事故」という表現が一般的に使われる場合,事故の被害者やその周辺の方々を慮っている面もあるかと想像しています。事故の原因や経緯を探っていくことは,誰かの(もしかしたら被害者自身の)責任や落ち度を追及したり,ともすれば被害者やご遺族を傷つける場合もあります。「思いがけない出来事だった」と包み込むような気持ちが現れた言葉なのかもしれません。
 とは言え,今後,同じような事故を起こさないためには「思いがけない出来事だった」で終わってはマズイ。警察の方は交通事故が「不慮の事故」だとは思ってないでしょうし,介護事業者の方は浴槽での事故や誤嚥を「不慮の事故」と考えていないと思います。冒頭の欧米の例のように,冷静に事故の原因を探り,予測・予防に努めていく姿勢が必要です。

 ちょっととりとめのない散文になりましたが,あえて「不慮の事故」という表現を選ぶ気持ちと,冷静に原因を探っていく姿勢。どちらもあってほしいと感じています。
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参考文献:
「「事故」という言葉を変える―accidentからinjuryへ」Medical Note. https://medicalnote.jp/contents/160318-014-XQ(2019.02.06.閲覧)
「BMJ bans “accidents” 」PMCアーカイブ. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1120417/(2019.02.06.閲覧)
「事故死の予防とCDR」小児保健研究. https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2017/007606/023/0574-0577.pdf(2019.02.12.閲覧)

安全管理のコラム第36回「インフルエンザを広めない」2019年1月

1月9日に厚生労働省は,12月24-30日の全国のインフルエンザの患者数が1医療機関あたり11.17人となり,注意報レベルになったと発表しました。

ちなみに福岡県だと同じ週で13.59人。この定点医療機関の1週間のインフルエンザ患者の平均人数である「定点あたり報告数」が10人を超えると「注意報レベル」で,4週間以内に大きな流行が発生する可能性が高いとされています。さらに30人を超えると大きな流行と解釈され「警報レベル」となります。

福岡県内のインフルエンザの流行情報はこちら。(2019.01.09.閲覧)
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/seasonal-flu-alert-2018-2019.html
少しスクロールすると過去5年間の流行状況のグラフがありますね。2017-2018シーズンの「定点当たり報告数」は1月下旬の時点で80人を超えており大変な流行だったことがわかります。また2015-2016シーズンは全体的に時期が遅れて2月に入って本格化,3月でもまだピークが収まっていなかった様子がわかります。
いずれにしても1-2月はインフルエンザの流行期。体験プログラムや会議・ワークショップなどを企画運営する立場としては,目の前で「アウトブレイク」を起こさないように気をつけることも安全管理の一つと言えます。

そのためには参加者やスタッフ一人ひとりが予防に努め,体調が悪い時は出席しないというのが基本ですが,イベントの事務局としてできることもいくつかありそうです。
例えば,手洗い場所をアナウンスしたり,マスクしていてもOKと伝えたりすること。たまに気兼ねしてマスクを外す方もあります。室内のイベントであれば,休憩時間に窓を開けて空気の入れ替えをすること。グリーンシティでは経験がありませんが,施設管理者だったら加湿器の設置もアリかもしれません。湿度を高めることでウイルスの飛散が抑えられるそうです。

体験プログラムならではなのが,アイスブレイクを非接触系のものにすることです。ワークショップの冒頭で行う,短いゲーム形式の自己紹介や仲間づくりのことをアイスブレイクと言います。いろんな種類のワークがありますが,ペアを見つけて握手するなど,接触を伴うワークは流行期に行わない方がいいんじゃないかと思っています。

また「お茶コーナー」について。ワークショップの内容や長さによっては,クラッカーにジャムを乗せて食べられるようにしておくとか,ちょっとした軽食程度のものを用意することもあるでしょう。しかしインフルエンザ時期は,スプーンや取り箸を共用しないように市販の個包装のものにしておくのが無難。ただ,お茶コーナー自体はこまめにお茶を飲むことがインフルエンザ予防に効果があると思っています。

お茶コーナーの一角にはアルコールスプレーと使い捨てマスクを置いておき「ご自由にどうぞ」としておくのもアイデアです。スタッフが気が付いた時に,ドアノブやポットのボタンなどをアルコールで拭くのもよいかもしれません。使い捨てマスクは救急セットの中ではなく,使ってもらいやすい場所に出しておくとよいです。このあたりは,会場の雰囲気や出席者数にもよるので,どこまで準備するかはそれぞれだと思います。

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安全管理のコラム第35回「じこはおこるさ」2018年12月

小さなお子さんに大人気の「きかんしゃトーマス」。その舞台であるソドー島のノース・ウェスタン鉄道では,シャレにならないくらい事故が多発しています。機関車たちが負けん気とかいたずら心とかを出して,ちょくちょく脱線したり鉄橋から落ちたり床屋に突っ込んだりするのです。局長であるトップハム・ハット卿は何度引責辞任をしなければいけないでしょう?そんな感じ。

テレビ版のトーマスには「じこはおこるさ」という挿入歌がありますが,なんかじわじわ面白い。トーマスやパーシーら機関車たちの事故が延々繰り返される映像にのせて「事故がほらおきるよ,突然さ。運が無いときはしょうがない,なんとかしよう」と少年合唱団が歌っています。
気になってネット検索したら,ブログで取り上げている方もありました。

機関車トーマスに見る日米の危機管理意識の差、あるいは「そんなのどうでもいいからこの歌を聞け」
https://yusato.exblog.jp/17823930/
(2018.11.19.閲覧)

日米,というか日英の危機管理意識の差かなるほど。
確かに,事故が起きるよに続く歌詞が英語では "Make sure you learn your lesson. You'll know better next time" となっていますが,同じ箇所が日本語で「二度とやらなければいいけど」と訳されていて,だいぶ雰囲気が違います。もともとは「そこから学べ,次はマシになる」くらいの意味ですね。全般に英語では「どうあっても事故は起こるものだから,そこから学んで次に活かせ」というメッセージがあったのに,それが薄れて日本語では「事故が起きるぞー事故が起きるぞー」という雰囲気に(笑)。それがじわじわ面白い理由の一つな気がします。

事故から学んで次に活かすには,このコラムでこれまで紹介してきたヒヤリハットの収集と研究,事故事例の収集と研究,SHEL分析やなぜなぜ分析などを使って是正報告書を書くことなどが効果的。いずれも「過ちから学ぶための仕組み」です。ヒヤリハット収集や是正報告書は自分たちの過ちから学んで次に活かすため,事故事例を集めるのは他の場所で起きた過ちから学んで次に活かすためです。

「事故は起きるべきでない」と強く思いすぎると,過ちを認められなくなったり,隠蔽したり,「想定外だ」とか言い出したりしそう。「事故が起きてもいい」と言いたいわけではありません。最大限の努力をしつつ,けれど時には「じこはおこるさ」と割り切って,事故時の対応やダメージの低減,その後の改善行動のための備えをしておきたいものだ,と思います。

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