2/12に久々に「松葉の炭」を焼きました

国営公園の中での取り組みなので、事前の火気使用許可や耐火レンガと砂を敷き詰めた作業場所、防火用水の準備など、公園職員のみなさんの段取りがたいへんだったと思います。ありがとうございました。

一日中、松葉を焼いて家に帰ったら、服から燻製のような煙のにおいがしました。普通の焚き火の時と比べても、グッと強い気がする…。やっぱり、松ヤニとかそんな関係で、煙も強烈なのかもしれません。それか…シンプルに一日中、煙を浴びたからかな?

 

焚き火の煙にまつわる安全管理と言えばキョウチクトウが知られています。樹木全体が有毒なので、煙にも毒が含まれてくるそう。庭木の剪定などで発生したものを薪に使ってしまうことがあるかもしれません。ご注意を。

 

また、検索すると、ウルシハゼノキなどのウルシ科の植物も不向きと書かれていますね。

ウルシオール的にそうだろうな、と思いつつ、けれど、亡き恩師がご自宅の薪ストーブに使うためにハゼノキの丸太を持ち帰っていたことを思い出します。私が「先生、ハゼノキは燃やして大丈夫なんですか?」と尋ねると「これがトロトロと燃えてえぇ感じなんや〜」とおっしゃっていました。

とは言え、燃やす量や乾燥状態、部屋と薪ストーブの換気状況に寄ると思いますので、もし試すなら十分注意しながら&自己責任でお願いします。

 

昔から、かまどなどで煮炊きする時に使う薪としてクロキは煙が出やすいということで有名でした。あまりに煙が出るので(現代では言いにくい表現ですが)「ババゴロシの木」と呼ばれることもあったそう。かまどや五右衛門風呂などで火を焚く人が苦労する木だった、ということだと思います。

電気やガスが普及した日本ではイメージしにくいですが、まだまだ世界では焚き火で調理や暖をとっている人は多いです。下記サイトでは「世界30億人」とのこと。煙に長期間さらされることで「目の損傷、心臓や呼吸器の疾患、肺がん」などの健康被害を受けると言われています。

「世界30億人が「たき火」調理、煙害なくすには」ナショナルジオグラフィック.

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/090700341/ (2024.02.29.閲覧)

 

キャンプグッズとして人気の「BioLite」も、アウトドアマーケットで収益をあげて途上国の煙害を減らす、というブランドストーリーとなっていますね。

今回の松葉の炭づくりで使用した(株)モキ制作所の「無煙炭化器」にも共通することですが、煙を少なく、コントロールしながら上手に焚き火をすることは大事なスキルかと。

延焼や山火事、火傷だけでなく、近隣への迷惑や長い目で見た健康被害を減らすことになると思います。

今年1月2日に羽田空港で発生したJALと海上保安庁の衝突事故について。

翌1月3日には、航空安全推進連絡会議から緊急声明が発表されました。

詳しくは下記URLからどうぞ。

 

航空安全推進連絡会議(JFAS)

https://jfas-sky.jp

 

航空業界のことも航空機事故のことも詳しくはありませんが、私なりに要約するとこんな感じ。

 ・航空機事故を警察が捜査したことで原因究明に支障が出た事例がある。

 ・犯罪捜査と、事故原因究明のための調査は別物。

 ・国際ルールに則り「事故原因究明のための調査」を優先して。

 

なるほど。

何かの犯罪を対象にした時の「捜査」と、再発防止を目的にした原因究明の「調査」とでは、進め方や関係者の態度も変わるのでしょう。今回の緊急声明はその点が勉強になりました。

 

これを受けて、ちょこっと個人的な感想ですが、日頃の業務やイベントでトラブルやミスが起きた時も同じかもしれません。

発生したトラブルに対して「犯人探し」を行うか、「再発防止のための調査」を行うかで、組織の雰囲気や人間関係が変わってきそう。そして、長い目で見たら組織の安全管理に重大な影響を与えると思います。隠蔽とかのかたちで。

もちろん、後者の「再発防止のための調査」でいることが大事だと思っています。けれど自分でそう思っていても客観的にそう受け止められているかというと難しい…というか奥深いですね。言葉遣いの違いや当事者同士の人間関係、人によって受け止め方が違うことなど、中間管理職の人や学校教員だけでなく、親子関係でも友人関係でも、全国で3,000万人くらいの人が日々悩んでそうです。

 

 

 

年末になってダイハツの不正行為が大きなニュースになりました。

2023年4月に内部告発により不正が発覚。5月に第三者委員会を設置。

その第三者委員会の調査をもとに2023年12月20日に今回の発表があった、という経緯です。

 

第三者委員会の調査報告書はコチラ

社内の状況や雰囲気では「失敗を報告すると怒られる」「無茶なスケジュールや目標値が設定されている」「問題を発見した人が解決しなくちゃいけない」といったことがあったようです。

 

X(twitter)界隈でも「ブラック企業あるある」「同じ内容の報告書何回か見た気がしますね」「どっかの○薬会社の報告書をコピペ」とか、「弊社やんけ!」「身に覚えがありすぎる…」「なんでウチのこと知ってる!?」と話題に。

 

あちこちで似たような状況が見られるということは、他人事ではないということですね。大きく見れば人口減少や年齢構成の変化などが、無茶なスケジュールや目標値、余裕のない体制につながっているとも言えそう…。

 

2021年4月のコラムで医薬品メーカーの製造不正を取り上げました。なんというか、今回の件でも書きたいことは同じです。なので今月のコラムは「以下同文」。


年末で忙しいからって手抜きじゃないですよ!違いますよ!「同じだ」という強いメッセージなのです(強弁)。…何卒よろしくお願いいたします。

 

安全管理のコラム第60回「医薬品の製造不正で」2021年4月

 

 

 

 

 

だいぶ以前から言われている「PDCAサイクル」に加えて、この数年「OODAループ」という言葉を聞きます。どちらも、なんらかの作業や活動をしながら改善を行っていくための考え方ですね。

ざっくりまとめるとこんな感じ。

 

PDCAサイクル:次の4ステップをグルグル回して改善していこう!

 P 計画(Plan):目標を設定し、計画を立案する

 D 行動(Do):現場で実践する

 C 評価(Check):結果をふりかえり評価する

 A 改善(Action):改善のための取り組みを行う

 

OODAループ:次の四つを比較的短い時間で(可能なら瞬時に)やって対応しよう!

 O 観察(Observe):周囲の状況をよく観察し、情報を集める

 O 判断(Orient):その状況を判断し、方向付けをする

 D 決定(Decide):実際にどう行動するか検討し、決定する

 A 行動(Act):決定に従って行動する

 

「PDCAサイクルはもう古い。これからはOODAループ!」とか言われることもありますが、古いor新しいということでもなさそうです。

 

里山保全活動でPDCAサイクルやOODAループがどんなものになるか、具体例を挙げてみました。

 

<PDCAサイクルの例>

 P 計画:活動の2週間くらい前、タイムスケジュールと計画書を作成した。

 D 行動:活動当日。計画に従って10時〜15時の竹切り作業を行った。

 C 評価:作業終了後、担当者数名でふりかえりのKPTを行った。

 A 改善:後日、ふりかえりでの改善点をもとに、道具や資料を更新した。

 

<OODAループの例>

 O 観察:活動当日。作業者が道具置き場のブルーシートに

      足を引っかけているのに気付いた。

 O 判断:転倒などの事故を防ぐべきと判断し、何ができるか考えた。

 D 決定:ブルーシートの位置を少し離れた場所に動かすことにした。

 A 行動:数名に呼びかけてブルーシートを動かし、他の作業者にも

      「荷物置き、動かしましたよー」と周知した。

 

PDCAサイクルは順を追って進めるので、ある程度時間がかかります。刻々と状況が変化する場面ではスピードが追いつかないこともあり、それが弱みと言えば弱み。一方、話し合ったり、書面にまとめたりしながら進めるので「組織で共有しながら継続していく取り組み」にはとても有効です。

OODAループは、全て現場で短期間(可能なら瞬時に)に行われます。「スピーディーに臨機応変な対応が求められる取り組み」にはとても有効。刻々と状況が変化する場面でこそ活きてきます。反対に、組織での共有や一体感、ノウハウの蓄積や引継ぎといった点では注意が必要と思います。

 

個人的には、PDCAサイクルの考え方は、事業計画や週間工程などに埋め込みやすく、新人にも参加や貢献してもらいやすいのがいいと感じます。OODAループは現場に立つ個人のモチベーションや資質によるところが大きい。乱暴に言えば「現場をよく見て、自分の頭で考えて、臨機応変に対応しろ」ということですもんね。うっかりすると根性論になりかねず、一般化や手法化のいい方法ってあるかな?と考え中です。

里山保全活動などの野外活動は、自然環境や天候、多様な参加者など刻々と状況が変化する取り組みです。PDCAサイクルの考え方だけでなく、OODAループの考え方も身につけていきたいものだな、と思います。

 

見出し

 「ポカヨケ」という言い方を知りませんでした。

 なんかかわいいですね。ポカヨケ。ちょっとポケモンっぽい。

 意味は、作業ミス(ヒューマンエラー)を防止するための仕組みや装置のこと。「フールプルーフ」と近いですね。

 

ウィキペディアなどで挙げられている例は、

  • プレス機などでスイッチを左右に分けて二つ同時押ししないと作動しないようにして、手を挟む事故を防ぐ。
  • 洗濯機で脱水が完全停止しないと蓋が開けられないようにして、巻き込みを防ぐ。
  • AT車でギアをPかN、かつブレーキを踏んでいないとエンジンを始動できないようにして、誤発進を防ぐ。

などです。

 

仕組みや装置というわけではありませんが、

  • 板前さんが包丁を置く時、必ず横向きに、そして刃を自分から見て向こう側に向けて置くこと。
  • イベント会場などで床を這うケーブル類を養生テープなどで貼り付けておくこと。

なども、うっかりミスや事故を防ぐための習慣や取り組みですね。

 

グリーンシティ福岡の現場では、

  • 森の作業で、小さいお子さんに渡す道具セットからあらかじめ剪定バサミをはずしておく。
  • クラフトで、切り出しナイフなどは使う時まで表に出さない。

などが当てはまると思います。

デスクワークでも、

  • データ移行ではカット&ペーストでなく、コピー&ペーストしよう。
  • ブログの編集手順を、データ消去が起こりにくい手順にしよう。

といったことが最近、話題になりました。

 

たぶんポカヨケの一番の基礎は、事務所や作業場、デスク上の整理整頓でしょうね。

うっかりミスを防ぐための「ポカヨケ」、大事だなと思います。

今年の暑さはヤバいな、と感じます。

このコラムでは過去に3回、「熱中症」を取り上げています。

第53回「例年以上に熱中症に注意?」2020年7月

第29回「屋外作業の熱中症4パターン」 2018年6月

第19回「熱中症になりにくい身体」 2017年7月

 

きびしい暑さの中で行う野外体験では熱中症対策が必須ですね

こうのす山の親子体験ではお茶コーナーのジャグは二つ用意。一つはスポーツドリンクで、もう一つは氷水です。氷水の方はタオルや手拭いを洗ってしぼり、顔や首筋を拭くのにも使ってもらっています。

他にも「全体のプログラム時間を短くする」「活動場所の日当たりや体感温度を考慮する」など、できるだけのことをやっています。

 

さて、厚生労働省の人口動態調査では、熱中症で亡くなった方の数と推移がわかります。

グラフにしました。90年代〜00年代に比べると2010年代以降にかなり増えています。

65歳を区切りに色分けすると、とにかく65歳以上の増加が大きいことがわかります。

室内で、日常生活や就寝中に熱中症になる方が多いとも聞きます。

ご高齢の方はこれまでの習慣でエアコンを使わなかったり、体調変化を感じにくかったりすることがあるかもしれません。

ご家族や身近な方の過ごし方や体調をお互いに声をかけあいたいですね。

どうかみなさま、お気をつけてお過ごしください。

 

 

ということで6月16日にモリダスNORAの共催で行われたイベント

後日に行われたオンラインでのフォローアップも含めて、安全管理についてふりかえるとてもよい機会になりました。主催団体の松村正治さんもコラムにまとめてくださっています。ここの先月分も引用して「金言」とまで言っていただいて、うはは!照れるやら今さら責任を感じるやらです。

ということで、個人的に印象に残ったことを3点、挙げておきますね。

 

1.事例発表がすばらしかった&心強かった!

 10数団体と連携してヒヤリハット事例の共有・蓄積を行ったり、異なる団体間でネットワークを作り定期的な安全担当者の情報交換を行うといったお話を聞くと、「やっぱ関東すごいな。層が厚いな」と感じました。

 森林ボランティアの安全管理について、日々試行錯誤して、語り合い、蓄積している人たちがいるというのは心強い。特に、ヒヤリハットや事故の話題を共有できるってなかなかの信頼関係です。

 

2.「安全管理には二つの方向がある」仮説

 仮説というと大げさですが、森林ボランティアの安全管理には「森や作業に人をあわせていく方向」と「人に森や作業をあわせていく方向」の二つあることを意識しておくといいんじゃないか?ということです。

 森や作業に人をあわせていく方向なのは、
  
・適切な作業技術を身につける。
  
・装備と服装を準備する。
 
といったこと。できることが増え、作業の成果が大きくなり、環境改善も進みます。

 人に森や作業をあわせていく方向なのは、
  ・作業場所や内容を無理のないものにする。
  
・作業中にリーダーが目を配る。
 
といったこと。いろんな人が参加できるようになり、周知や啓発につながります。

 森林ボランティアは市民活動の一つのかたちなので、団体の雰囲気も多種多様です。団体によって二つの方向の割合は「6:4」だったり「3:7」だったりすると思います。ただ、両方向あることを意識しておくのは団体の多様性にとってはよいことだ、という気がします。

 

3.習慣に落とし込むの大事!けど、そのためのリソース配分に悩み続ける

 先月も書いた通り「日頃の習慣に落とし込むのに必要なのは根性ではなく技術」。そう思っています。

 具体的なタスクを活動スケジュールや業務工程の中に織り込んでいくことで、安全管理の技術も意識も高まります。ただ、やるといいタスクは膨大にある一方、そのために使える時間や予算には限りがあります。ボランティアなら時間は無限にある、なんてことはありませんし、NPOの管理部門の予算だって一般企業に比べたら微々たるもの…。

 習慣化したり、定期的なタスクを作ることは、時間や予算といったリソースを配分すること。その優先順位や分担で悩むのは、まあ、当たり前だろうな、という気持ちでいます。

 

p.s.

ちなみにイベント当日の「ファシリテーション」に反省点ありすぎで、メモを貼り付けときます。

・前日や当日午前の視察を楽しみすぎて、本番の時点でなんかやり遂げた気になってたような…。

・ボリュームたっぷりの話題提供を丸ごと受け取ろうとしたのは無謀。当たり前だけど、ディスカッションではテーマを絞り込まないといけません。

・室外機のファンの音や近く人の話し声など、周囲の音に気をとられすぎ。でもそういう性分なので、これは事前準備の範疇です。

・進行役なのに、安全管理講座の講師になりかけたり、気がついて進行役に戻ったり、立場がフワフワ動いてたのがよくなかった。

・オンラインや会場の意見を全て拾おうとしてたけど、あれは一人では無理。グリーンシティのスタッフがいてくれるからできてるんだなあ。感謝しましょう。

 

 


8ヶ月ぶりにコラム復活です!パチパチパチ。

来週16日は、東京の地球環境パートナーシッププラザで行われる「現場の声をもとに考える里山・森林ボランティアの安全管理」で進行役として出席する予定です。森林ボランティアの安全管理についていくつか話題提供をいただいた後、ディスカッションをする予定です。

その出席にあたっての自分用のメモを今回のコラムにします(当日、この内容の話題提供は予定してません)。来月は、出席して気づいたことや共有したいことをまとめようと思います。

以下、メモ。
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安全管理の「全体像」を見渡したい。
その意味でCONEリスクマネジャーなどの講習を受けるのも効果的。

特に「事故を起こさないためにできること」っていろんな分野・切り口で無数にある。その視野を広げるのが大切。「起きた後の対応」も不可欠だし救急講座や保険加入も必須ではあるけど、それで安心してるのはヤバイ。

 

安全管理は、
活動を制限するために行うものではなく、
活動を続けるために行うもの。

あれもダメこれもダメ、こうしなくちゃダメという口調になることもある。仕方がない面もあるけれど。「安全管理は活動を安心して続けていくために行うもの」という考えを根っこにして、「これをしたいのであれば、これが必要」といった態度でいたい。で、それはかなり高度で難しいことな気がするけれど。

 

多様な人を受け入れる活動には、
多様な成果が内包されている。

森林ボランティアは市民活動の一つなので、多様な人を受け入れ、多様な成果を育てるような場であってほしい。自分たちの気持ちや関心、人数や経験度など、身の丈にあった活動を選ぶのが大事。「私たちの手に余るからこの作業はしない」とか。それに応じて必要十分な頻度や精度、労力をかけて安全管理を行いたい。

 

日頃の習慣に落とし込むのに必要なのは
根性ではなく技術。

安全管理の取り組みは、いかに自分たちに無理なく日頃の習慣に落とし込めるかがカギ。「必要な項目は網羅しているけど書くのがそんなにめんどくさくない書式を作る」とか、「多少のイレギュラーがあっても吸収できる作業計画を立てる」とか、「初めての人でもわかる道具の置き場所を決める」とか、「ミーティングや確認の時間をあらかじめ折り込んでおく」とか、「注意書きが目に留まる場所に来るように書く」とか。これらに必要なのは根性ではなく技術。お互いに教えあうことができる。

 

ボヤッとしてる人や時間も、あれはあれでいいもの。
「リダンダンシー」と呼べばかっこいい。

…んじゃないかな?
ボヤッとするなら安全な場所でどぞ。

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幼稚園のバスでお子さんが取り残されて亡くなるという悲しい事故がありました。

これに関連する報道の中で、アメリカのスクールバスの事故防止策を紹介する記事があります。

スクールバス製造会社「ICバス社」の「Leave No Student Behind Alarm System」。

公式ページの動画がコチラ。

https://www.youtube.com/watch?v=T0eUYv4YlLQ
 

言葉で説明すれば、

 ①バスを停めてエンジンを切ると車内でアラームが鳴る。

 ②アラームを止めるボタンは車内後方にある。

 ③運転手は車内後方にボタンを押しに行く。

 ④その途中で座席に子どもが残っていたら運転手の目に止まる。

というものです。
 

全くハイテクな感じじゃなく、むしろ「アナログ」と言うか「身体的」と言うか…。

ですがシンプルで効果的かもしれません。

事故やミスを防ぐための対策って、いろんな方向性やアプローチがありそうです。

どんなアプローチがあるか、思いつくものを挙げてみます。

 

◯根性論的なもの

 「気を付ける」「心を入れ替える」「がんばる」と言ったもの。それだけでは不十分ですね。その気持ちでいるうちに具体的な対策を行わなければ、ほぼ無意味です。

 

報酬によるもの

 「1年間無事故でボーナス」とか「忘れ物をしなかったらオヤツ」みたいなやり方。本人のモチベーションを高めることで、安全のための行動を促します。

 

懲罰によるもの

 「事故でボーナスカット」とか「忘れ物をしたら怒る」みたいなやり方。上記と反対に、本人の危機感や責任感を高めることを狙っていると思います。ただ、これミスが起きた後の話なのでどのくらい効果があるでしょうか…?

 

教育によるもの

 上司や先輩が教えたり、研修を行ったりするもの。本人の理解が深まったり、モチベーションが高まったりしますが、単発では効果が低い気がします。組織的に行ったり継続することで、風土のように根付いていくと思います。

 

習慣化によるもの

 上記の「教育」の一種だと思いますが、事故やミスを防ぐための身体的動作をくりかえし現場で行って身体に染み付かせるものです。例えば「仕事場に到着したら道具を確認し日報に記入する」のような動作です。習慣化したい動作は2週間繰り返せば身体が覚えるという説があります。

 

人員体制によるもの

 人員を増やしてチェック係や管理担当者を置いたり、チェックのための時間をとる方法。人員や時間、つまりコストをよりかけることになるので、無闇に増やすことはできません。また単純に人や時間を増やしただけでは解決しないというのも悩ましい…。教育や経験、時にはプロ意識のようなものが求められるからです。

 

◯チェックリストによるもの

 やるべきこと、必要なことをリストにして、漏れがないか確認する方法です。手順や項目が多い時ほど絶大な効果を発揮しますが、最大の弱点は「見るか?手に取るか?」どうか。どんなによく出来たチェックリストでも参照されない限り無力です。必要な場面で目に留まるように配置できているかがキモ。

 

行動の制限や身体の誘導によるもの

 今回のアメリカのスクールバスの事例のように、否応なく身体を動かしたり、制限したりする方法。プレス機や裁断機を操作する時の「両手起動スイッチ」は、誤ってどちらかの手を負傷しないように、わざと離れた位置にある二つのボタンを押させるというものです。どこかの高速SAのトイレの鍵を巨大化させて小物置きにしたら携帯の忘れ物が劇的に減ったのも似ています。携帯を持たない限りトイレから出られないように制限しているからです。

 

「ハイテク」によるもの

 業界や仕事によってはチェックや品質管理をセンサーとAIが肩代わりしています。私たちのような野外活動や保全ボランティア分野では馴染みが薄い気はしますが、そのうち開発されるかもしれませんね。ちょっとずれるかもしれませんが、Apple Watchは身近な安全管理のハイテク機器と言えそうです。

 

◯負荷を減らすことによるもの

 そもそも忙しすぎたり、体力的にしんどくて集中力が途切れたりしている場合は、仕事の量を減らすことが何よりの対策になると思います。むちゃな目標を達成するために現場が大変になっている時、どんな「報酬」も「教育」も「チェックリスト」もうまくいきません。余裕や余白、冗長性って実はすごく機能的なものなんじゃないかな、とも思います。

 

 

挙げていけば「装備・機材」とか「視覚化」とか「声がけ」とか他にもいろいろありそう。

「安全工学」界隈ではこういったことがうまく整理されているのかもですね。

不勉強で調べてません…。

 

とにかく、いろんなアプローチが考えられます。

小さな事故も、大きな悲しい事故も、減らすためにできることが必ずあると思います。

8/25あたりに岐阜県河川課のページがTwitterでバズってました。

水難事故等に関するQ&A(よくある質問)

togetterも貼っておきますね。

岐阜「だから川で泳ぐのやめてってば!」担当者の心の叫びが伝わる水難事故Q&Aがすごい「これは力作だ」

 

個人的に海や川は好きですが、プライベートで楽しむ以外に仕事として水辺のアクティビティをやったことがありません。グリーンシティ福岡も完全に「陸戦型」。

なので、川遊びや海の体験を業としてやってる人はすごいな、と思います。数秒気を失ったら命に関わるフィールドなので、水辺系の自然学校やアウトフィッターたちは安全管理意識が段違いですよ。

 

さて、冒頭の岐阜県のページ。

最初、見た目だけで「シンプルになが!」とちょっと笑いそうになりました。

けれど、スクロールダウンしていくうちに、繰り返し言ってきたことなんだな…、実際に発生した事故が元になったものがあるな…と伝わってきて、黙って読み進めることに。

 

行政に限らず組織が外に出す文章は、係員→係長→課長…といった具合に複数人のチェックが入って、整理・分類されたり、冗長な部分を削ぎ落とされて、無難なものになりがちです。

よく言えば「間違いがない、読みやすい」。悪く言えば「熱を失った、建前的な」。

けれどこのページ。長くて、再三同じことを繰り返しています。反面、熱意や意思が感じられて、生々しい。本当に伝えたい、という意気込みを感じます。

 

同じく水辺の安全について。

こちらの取り組みも、2007年から根気強く一つのメッセージを発信し続けています。

 

子どもたちにライジャケを!(Facebookページ)


どちらも内容はもちろんですが、大切なことを繰り返し伝え続けるその姿勢を尊敬します。

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先日、JCVN主催の安全管理についてのオンライン講座で話題になりました。

子どもがノコギリなどの刃物を使う時、サイズのあってない大きな軍手をしていることがあります。

それで、すべって危ないことがあると話が出たので、グリーンシティの事務所に置いてある各種サイズの子ども用軍手をご紹介しました。油山の森林ボランティアSさんから褒めていただいたので、コラムに書いときますね(笑)。

 

基本、イベントでもボランティア活動でも軍手は持参いただいています。けれど、小さいお子さんのいる親子連れが大人用の軍手しかお持ちでない、ということもあり…。そんな時、事務局で用意した子ども用軍手を貸し出すことがあります。

いろんなサイズがあるので、スムーズに選べるようスタッフあっちゃんが「軍手サイズ表」を作ってくれています。原寸でカラーコピーした軍手の画像をA3サイズのラミネートにしたもので、ここに手をあてるとどのサイズかわかって便利!(冷静に考えたらこれ「表」ではないな…。)

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事務所にあるのは、子ども用の3S、2S、S、M、L。別のメーカーの「子ども用」、「レディース」そして一般用です。意外とレディースがフィットする小学生も多いですね。

 

最近は自前の軍手や手袋をご用意いただくことが増えたこともあり、貸し出す機会はめっきり減りました。

貸し出したら毎回洗濯しますが、新品を買い取ってもらう方式でもいいかもですね。ただ、子ども用の軍手って大人用より高いし、現場で現金のやりとりをしたくないこともあって、保留したままになっています。

 

ともあれ、フィットした軍手を使いましょう!

 昨年2月の安全管理コラムで「日本の死者数が前年より1.5万人減」という記事を取り上げたのですが、今年2月に出たのは「国内死亡数が急増」というニュースでした。


「国内死亡数が急増、1〜3月3.8万人増 コロナ感染死の4倍」日本経済新聞. (2022.07.02.閲覧)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA021SU0S2A600C2000000/

「21年の死者、戦後最多145万人 デルタ株流行が影響 厚労省速報」朝日新聞デジタル. (2022.07.02.閲覧)https://www.asahi.com/articles/ASQ2T54GBQ2TUTFL005.html

 

 日経は「急増」と書いてるし、朝日は「デルタ株の流行が影響した」と断言してます。ちょっと不安に感じますね。試しにグラフを作ってみました。厚労省の人口動態調査の数字です。

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 オレンジが死亡数(単位:万人)で左側の目盛り。青が前年との増減(単位:万人)で右側の目盛りです。

 

 はっきりわかるのはこの四半世紀ずっと増加傾向だということですね。高齢化が進むとはこういうことなのか…。

 

 日経に書かれている通り2020年に比べたら2021年は「急増」していますが、最近の傾向の中に収まっている気もします。朝日の「デルタ株流行が影響」というのは嘘ではなさそうですが、それが主因と読めるように書いてもいいのかどうか…ちょっと疑問。(2021年にデルタ株以外も含めた新型コロナ感染症で亡くなった方は1.5万人弱です)

 

 統計については素人ですが、前年との増減(青い棒グラフの上下)に何か意味を見出そうとするのは大変そう。一方、四半世紀のトレンド(オレンジ色の折れ線グラフの傾き)は明確ですね。確実にこれからの社会を考える手がかりの一つだと思います。

 話題になった書籍「FACTFULNESS」にあるように、事実を確かめたり、時系列に並べたり、他の対象と比べたりするのは大事ですね。安全管理にも必要な視点だと思います。

 少し前、2022年4月にネットニュースで見かけました。国立公園内の植物をナタで刈った疑いで男性2人が書類送検されたそうです。

 

 場所は小笠原諸島の母島で、約240メートルにわたってヒメフトモモやシマモチといった植物9種計17本をナタで刈ったとのこと。これによる自然公園法違反の疑いです。目的は釣りに行くための道づくりだったそうで、別の報道では、巨大魚のロウニンアジを釣れる場所を探して農道から海岸へ行く道を切り開いた、ともありました。


「世界遺産・小笠原で植物損傷容疑 「釣り行くため」240m傷つける」朝日新聞デジタル. https://www.asahi.com/articles/ASQ4L365GQ4HUTIL031.html(2022.05.31.閲覧)


 この「自然公園法」で言う自然公園とは以下の3種類のことです。


 国立公園_______日本を代表する自然の風景地(全国で34箇所)

 国定公園_______国立公園に準ずる優れた自然の風景地(同56箇所)

 都道府県立自然公園__都道府県を代表する自然の風景地(同311箇所)

 

 さらに一つの自然公園の中では、自然環境の重要度などに応じてエリア分けが行われ、それぞれ許可が必要な行為などが細かく定められています。


 特別保護地区____特に厳重に景観の保護を図る地区

 第一種特別地域___現在の風致を極力保護する地域

 第二種特別地域___農林漁業活動について努めて調整を図る地域

 第三種特別地域___通常の農林漁業は風致の維持に影響が少ない地域

 普通地域______地域内の集落や農耕地など

 


 今回の件が刑事事件にまでなったのは、世界自然遺産でもある小笠原国立公園の中でも、特に重要な「特別保護地区」で起きたというのが理由ですね。

 森林ボランティアでは、わりと普通に草木を伐ったり森の中に通路を作ったりします。いくら善意でやっていたとしても、うっかり法令違反してしまっては問題。皆さんも身近な自然公園の範囲を調べてみてください。

 


 ちなみに、福岡市域ではどのあたりが自然公園になるかというと…。

 

 玄海国定公園______奈多海岸から志賀島、能古島、糸島半島へ

 脊振雷山県立自然公園__佐賀県と接する脊振山脈一帯

 


 私たちも「しかボラ(志賀島森林保全ボランティア)」で自然公園周辺での活動を行っています。

 特に、志賀海神社の裏手から通称「火焔塚ルート」の山頂向かって右手側。そして潮見公園周辺が「第二種特別地域」となっています。小笠原の事例のように「国立公園」の「特別保護地区」というわけではありませんが、自然公園の区域内です。気をつけます。

 

 余談ですが、自然公園の範囲や制限などについては、情報発信がまだまだ進んでいませんね。スキャンした地図のPDFがアップされているくらいで、見やすく使いやすい地図はなかなかありません。なんとかならないかなあ?

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先月、スタッフのまさみんから花粉症になった話を聞きました。

週末にスズメノカタビラでリースを作ろうとしたら、くしゃみ鼻水が止まらなくなったんですって!


コラム「草花クラフト」にその時のことが書かれてます。


スズメノカタビラは、道端や庭、田畑、校庭などごく普通に見られます。一番「雑草」って言われがちな草かも?イネ科の植物で、シャラシャラとした穂をつけます。よく見るとかわいい。


イネ科の植物は風媒花(ふうばいか)なので、花粉を風に運んでもらって増えていきます。イネもコムギも、竹の仲間やススキもイネ科なので花粉を飛ばします。

この飛んでくる花粉が原因になるということですね。


花粉症というとスギやヒノキが有名ですが、それ以外にも様々な植物が季節ごとに花粉を飛ばします。

九州地方で花粉症を起こす花粉が飛ぶ時期はだいたいこのくらい。

 ス ギ   2-3月

 ヒノキ   3-4月

 イネ科   4-5月 カモガヤ、ハルガヤなど

 キク科 9-10月 ブタクサやヨモギなど

参考文献: 環境省(2019)花粉症環境保健マニュアル2019.

https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2019_full.pdf

 

実は、私もスズメノカタビラで花粉症が出るとは知りませんでした。おそらくそんなに多くの人でなく、一部の人だけだとは思いますが…。

イベントなどで、大人数で草地で遊んだり、草花クラフトしたり、草むしりをする場合は、時期を考慮して気をつけたいと思います。まれなようですが、喘息の発作やアナフィラキシーショックを起こした例もあるそうです。


一つ幸いなのは、イネ科の花粉はあまり飛ばないことです。

スギやヒノキの花粉は何十キロも飛散するので逃げられません。しかし、イネ科の花粉は飛んでもせいぜい数十メートル程度。草地から離れたら避けることができます。

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つい先日(3/24-25頃)、バズってたのが面白いと思ったのでtogetter貼っておきますね。


なんか許されているけど正直ダメな気がするもの3選「サウナの整い」「カフェイン」「餅」


サウナもカフェインも餅も、それぞれ一定のリスクはありそうですね。

サウナのヒートショックにしろ、カフェインの過剰摂取や常習性にしろ、餅の誤嚥にしろ、みなさん十分ご注意ください。自分自身は、サウナの水風呂は冷たくて苦手、コーヒーは2日に1杯程度、餅は好き、という感じです。

みんな普通にやってるけど、よくよく考えたらリスク結構高いんじゃないの?という行為って他にもいろいろありそうです。

リンク先のつぶやきの中では確かに「自動車」はかなりのもの。交通事故死者数、以前は1万人超でしたが昨年はじめて3,000人を下回りました。とは言え国内だけで毎年数千人の命を奪っている道具であることは事実。みんなそれを飲み込んで、利便性や経済的恩恵を享受しているということかと思います。

また「クレジットカードは今ならセキュリティ面で絶対認可されない」というのもそうかもな、と思いました。数十年前ならOKだったけど、今からはじめようと言ってもだれも賛同してくれなさそう。いや、このあたりのセキュリティは詳しくないですが、以前は手書きのサインで、最近でもカード裏に印字されたセキュリティコードで認証するって、なんか牧歌的だなという気がします。

 

記事を読んで考えたのは…

 

○ みんなある程度のリスクを飲み込んで暮らしている___利便性や気持ちよさ、かかる手間ひまとの兼ね合いでリスクを許容したり、補償しあっていること。

 

○ リスクに対する評価は暮らしぶりの変化や技術の進歩で変わる___以前なら大丈夫とされていた行為が時代が進んで非常識になったり、野蛮に感じられたりすること。

 

○ 慣れ親しんだリスクは低く、新しいリスクは高く評価する傾向がある___これまでやってきた危険行為の(飲み込めている)リスクよりも、新しい行為の(飲み込めていない)リスクに目が行きがちなこと。

 

といったことです。

 

まあとにかく、時々スッと真顔に戻って「これよく考えたらやばくない?」と、立ち止まれるといいなと思います。これまでの行為を見直したり、公平な視点でリスク評価するってわりと難しいですけれど…。できてませんよ(笑)、できてませんが、努めたいことかと。

前回コラムの写真には「ハインリッヒの法則」の図が載っています。

安全管理の研修ではお馴染みの考え方で、ハインリッヒという人が1929年に出した論文が初出です。

 

おおざっぱに言うと、事故やヒヤリハットは

 重大な事故:1

 軽微な事故:29

 ヒヤリハット:300

という割合で起きているということが統計的な調査からわかった、というものです。

ウィキペディア「ハインリッヒの法則」に詳しいので時間のある方はどうぞ!

 

ハインリッヒの法則をビジュアル化したのが下のピラミッドの図です。

安全についての社内ミーティングや研修でやることをお勧めしている「事故事例研究」や「ヒヤリハット研究」は、このピラミッドの図で言うと、どのあたりの出来事を対象にしているか?も書き加えてみました。

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報道された事故を題材にして行う「事故事例研究」は、ピラミッドの頂上の部分にあたります。ネットニュースや新聞などで見られる事故は人命に関わるものだったり影響の大きいものだったり、重大な事故であることがほとんどだからです。掲載されているのは「ニュース性」があると判断されたものなので当然と言えば当然。

 

反対に「ヒヤリハット研究」は、ピラミッドの下の部分です。自団体の出来事や活動経験の中では、実際の被害は無かったヒヤリハットか、あったとしても比較的軽い事故が多い。それらが題材となるからです。確かに重大事故も起き得るのですが頻度としては少ないと思います。

 

この図を見ながら我が身をふりかえって思うのは「中程度の事故」、例えば病院に行く程度の事故(骨折や大きめの切創など)については、知識が少なかったり想定ができていないかもしれないな、ということです。(そしてそれはこれまで身近ではそのような怪我や事故があまり起きてないと言う幸運なことだと思います。)

この辺りの「中程度の事故」については、ボランティア保険を扱っている立場の方が情報をたくさんお持ちではないかと思います。森林ボランティア界隈で言えば、「グリーンボランティア保険」の取り扱い窓口となっているNPO法人森づくりフォーラムさんなどです。

ちょうど森づくりフォーラムさんではこれまでの事故事例などを整理・集計されているそう。いずれ情報交換させてもらえたらと思っています。

この週末(2022.01.29-30.)はモリダス主催による「野外体験活動における安全管理とコミュニケーション研修」に講師としてお招きいただきました。

多摩市の森林ボランティアのネットワーク組織である「森木会(しんぼくかい)」のみなさんも多く受講してくださり、森の活動にフォーカスした安全管理や団体運営をじっくり話し合いました。

その2日目では午前中いっぱいを使って「ヒヤリハット」をテーマに講義や実習をを行いました。

「ヒヤリハット」とは、事故にはならなかったけどヒヤリとしたりハッとした事故一歩手前の出来事のこと。そんなヒヤリハットに気付いて、今後の改善に活かしていくことはその組織の安全管理上、重要かつ効果的だと考えています。

 

発生したヒヤリハットが具体的な改善案や対策に活きるまでには、いくつかの分岐があります。

 

1.「気づく」か「見過ごす」か?

 あぶない!と思う状況が起きても気づかないことがあります。特に未経験者や新人の場合は状況を把握できておらず見過ごしてしまうことも。それがヒヤリハットだと気付いた時点ですばらしいことだと思います。

 

2.「現場で共有する」か「自分だけに留める」か?

 そのヒヤリハットを現場にいるうちに周りのスタッフや関係者と共有したり、内容によっては参加者やボランティアにアナウンスしていくことが次の一歩。恥ずかしく思ったり、マズいと感じて誰にも言わずソッと自分の心のうちに留めていると、うやむやになってしまいます。そしてきっと同じことが起きる…。

 

3.「記録して残す」か「記録せず忘れる」か?

 ヒヤリハットを記録することで、あらためて改善案や対策を考える時の材料にすることができます。活動やイベントの当日、記憶が生々しくてよく覚えているうちに活動日誌やふりかえりメモ、報告メールなどに記録するとよいです。そうでなければ、きっとみんな忘れてしまいます。

 

4.「記録を見返して対策する」か「記録を埋もれさせる」か?

 記録したヒヤリハットは見返すことで効果を発揮します。いくら記録をため込んでも、埋もれさせては時間や労力の無駄。直後でもいいですし、定期的なミーティングで取り上げるのでもよいと思います。発生したヒヤリハットは、関係者で共有しつつ、改善案や対策を立案し、それを実行することではじめて活かされます。

 

6年前ですが「ヒヤリハット研究」のやり方をこのブログにも書きました。よろしければこちらもどうぞ!

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先日かなたけの里公園で行なったイベント「はじめてのたき火・はじめてのノコギリ」の当日。

天気予報での風速は5.0m/sとなっていました。つまり1秒間に5.0m進む速さの風。時速に置き換えると18km/hなので大したことないような気もします。

ですが、吹きさらしのたき火スペースを使うのはやめにして、半屋外の炊事棟にあるブロックで区切られたかまどスペースに変更して実施しました。当日の様子はコチラ

 

さて、気象用語の定義では、「風速」「瞬間風速」は次のとおりです。

 風  速:10分間の平均風速(単位:m/s)

 瞬間風速:3秒間の平均風速(単位:m/s)

天気予報などで見かけるのは「風速(10分平均)」ですね。お天気番組では「最大瞬間風速」を口頭で付け加えたりします。「瞬間風速(3秒平均)」のうち最大のものです。

 

一般的に「瞬間風速」は「風速」の1.5倍から3.0倍、時にはそれ以上になるのだそう。

なので冒頭のたき火プログラムの日、天気予報での風速が5.0mだったということは、最大瞬間風速が15.0mとかになってもおかしくないということですね。

 

風速の数字を見なくても現地の体感で、風がビュービュー吹いて、たき火の火が真横に流れるようだったり、くべた焚き付けの葉っぱが舞い上がって他所に飛んでいくようであれば十分危険な状況です。中止や場所の変更を考えた方がよいと思います。

もちろん「強風注意報」が出ているのであれば問答無用でたき火イベントは中止(まさか「暴風警報」が出ている時にたき火をしようとする人はいないと思います)。

ちなみに福岡市の場合、風速12m/sを目安に「強風注意報」、風速20m/sを目安に「暴風警報」が発令されます。目安となる風速は地域によって異なります。

 

天気予報の風速5.0m/sで「焚き火中止」を呼びかける体験施設やキャンプ場もあります。

指導者が付き添っているかどうか?たき火場所の周辺がどんな環境か?などで判断は変わると思いますが、天気予報の風速5.0m/sは一つの判断ポイントになるように思います。

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いや、実際11月のグリーンシティはやたらと忙しかったです。多くの方のおかげでもあり、ありがたいお話です。

まあでもあんまり忙しくなると、それは安全管理上でも問題かもしれません。どんな問題になり得るか、思いついたものを挙げてみます。


<準備がおろそかになる>

 この「準備おろそか系」の問題にはいくつか種類がありそうです。

 まず「事前の情報共有が不十分になる」。スタッフ同士の「あれやっといてね」とか「タイムスケジュール変更しました」などをしっかり共有する時間がとれなかったり、メール等を流していても見る暇がなかったり。

 また「計画や手続きを省略する」ということもありそうで、いつもは作成している実施計画書や道具チェックリストなどをつい、ザッと済ませたり、省略したりすることも起こるかもしれません。

 その結果「道具の忘れ物」が発生して、あわてて取りに戻ったり、現場の有り合わせのもので対応したりすることもありそうです。


<あわてた作業、無理な作業>

 時間が足りない状況ではつい、「あわてた作業、無理な作業」をしてしまうことがあります。走ったり、荷物をたくさん運ぼうとしたり、車を飛ばしたり。その結果、事故や怪我が発生するかもしれません。

<寝不足とそれによる注意力の低下>

 個人に起こりやすいのは、がんばりすぎて夜中過ぎまで仕事して「寝不足」になって、仕事現場で体調不良や見落としが起きるといったことです。寝不足と水分不足はてきめんに仕事のクオリティに影響しますね。

 また「注意力の低下」で危険な兆候や参加者の体調不良に気づけなくなることも考えられます。体力や気力が落ちて注意が散漫になることもありますが、他の考えことや気がかり、「帰ったらあの仕事もしなくちゃ」などがあって目の前の出来事に集中できなくなるということもあります。


<心が離れる>

 忙しい時には挨拶や会話がおろそかになったり、落ち着かない態度だったりして、スタッフ同士や参加者との「心が離れる」ということも起こります。関係づくりがうまくいってない状況。こうなると、説明や注意が行き届かなくなったり、ちょっとした素振りが誤解や反感を生んだりすることもあります。そうやって理解不足やイライラが広まっていくと、事故や怪我も起こりやすくなります。


あぁ!書いてて苦しくなってきますよ(笑)。

幸い、忙しいながらもグリーンシティでは準備や体調管理、関係づくりは「大丈夫」な状態で11月を乗りきることができたと思います。実施計画書もほぼ作ってる、ヘルメットやノコギリの手入れも良い、当日の実施後にはKPTをして後日ファイルで共有した、ブログも書いてる...。スタッフみんなのおかげですね。ありがとう!

あらためて、無理に仕事をとってこない、とか、スタッフ体勢や休日の計画を行う、とか、あわててると感じた時は深呼吸、とかも安全管理としてやっていかねばなあ、と、当たり前なんですが考えたのでした。

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