市民の板書術

グリーンシティ福岡は人と自然をむすぶ「対話」と「体験」の場づくりを行います。特に「対話」の場づくりである会議やワークショップの運営では「ファシリテーショングラフィック(板書)」を活用しています。
理事の志賀が,NPOや市民活動だけでなく,職場の会議や町内会,住民参加のワークショップなどの場面を想定して,板書の技術や考え方をまとめていきます。

市民の板書術(25)「整理して抜け・漏れを防ぐ『マトリクス図』」2019.06.

「マトリクス図」は縦横のマス目でできた表形式の図です。私たちが子どもの頃から知っているのは学校の時間割。左側に1時限・2時限・3時限…,上部に月から金までの曜日が並んでいて,マス目の中には国語や算数といった教科名が入ります。マトリクス図のポイントは縦軸・横軸をどんな項目にするか。時間割の場合は縦軸が「時限」,横軸が「曜日」です。他にも,身の回りにはバスや電車の時刻表をはじめ,成績表や年表,売上の集計や在庫表など様々なマトリクス図があるので,どんな縦軸・横軸でできているかあらためて注目してみると参考になります。

会議や話し合いの板書としてマトリクス図が効果を発揮するのは,いろんな種類の意見が出てくるのを整理して全体像を把握したい時,また,その上で抜けや漏れをチェックしたい時などです。個人的には,くしゃくしゃに丸まったハンカチを両手の指でグッと広げて四角に伸ばすようなイメージだと思っているのですが,どうでしょう?
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例えば,イベントの準備会議。公民館で行う地域のお祭りの計画を話し合っていて,役割分担や準備作業の洗い出しをしているとします。そのまま意見を出していくと,ステージの担当者の話や広報の締め切りの話,去年の反省など話があっちこっちに飛んだ上,会議の終わりも見えなくなるかもしれません。
そんな時はホワイトボードに大きくマトリクス図を用意します。上部の横軸には「全体統括」「広報」「ステージ」「テント出店」など,お祭りを持ち場や役割に分解した項目を。左側の縦軸には「担当者」「今後やること」といった,その日に話し合いたい議題を項目としてを挙げます。このマトリクス図に「広報の担当者は○○さん」「テント出店で今後やることは○○と○○」などと書き込みながら話し合うと,会議の進み具合や検討の抜けや漏れが一目でわかるようになります。さらに,特定の人に仕事が集中しているなどの問題点に気付くことができるかもしれません。
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さらに,このお祭りが無事に終了し,「おつかれさまでした,次年度に向けてふりかえりをしましょう」という場面。ただ反省会をすると,一部で起きたトラブルの話に終始したり,良かった良かったという雰囲気になって課題や反省点が出てこなかったりすることもありがちです。
お祭りの各持ち場を満遍なく,かつ良かった点や問題,今後に向けた改善点も含めてふりかえりを行いたい場合。横軸は同じ「全体統括」「広報」「ステージ」「テント出店」のままですが,縦軸にはそのための設問として「よかった点」「問題点」「今後の改善点」を挙げておきます。全体像を確認しながら,「ステージの○○が良かった」「全体統括としての課題は○○」などそれぞれの持ち場の成果や課題等を出し合うことができます。

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少し違った例として研修や勉強会の場面。3人の話題提供者が話した後,最後の30分間,質疑応答やディスカッションをして深めていくとします。横軸には「話題1」「話題2」「話題3」と3人の話題提供者のテーマを。縦軸は「感想」と「質問」に分けておきます。場合によっては「自団体に取り入れたいこと」などの項目を追加してもよいかもしれません。参加者からの発言を当てはまるマス目に書き込みながら質疑応答やディスカッションを行いますが,参加者が10人以上になる場合は付箋を使うのも手です。個人で感想や質問を付箋に記入(数分間),その後,各自で該当する場所に貼り出してもらいます。その後は,付箋を読み上げながら質疑応答やディスカッションを進めます。
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これらの三つとも,縦軸・横軸が「話し合いたいこと(議題や問い)」×「話し合う対象(持ち場や話題)」だという点では同じです。会議で使うマトリクス図によくあるパターンということですね。
他の縦軸・横軸のパターンとしては,「時間(時刻・年月日)」×「持ち場・役割」によるマトリクス図(進行表や役割分担表)が使いやすいと思います。
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マトリクス図の強みは「たくさんの情報を整理して全体像を見渡せる」「抜けや漏れ,重複に気付きやすい」という点にあります。また図表全般に言えることですが,特にマトリクス図はそれ自体が出席者に「今日はこれだけ話しますよ」「現在これだけ進みました」「ここが空いています,意見はありませんか?」というメッセージを発します。時には「ここのマス目は埋まってしまったのでもう出さなくて結構です」ととられることもありそう。その意味では強力な進行ツールということです。

気をつけたいのは,どんな縦軸・横軸や項目を設定するか,それぞれのマス目をどのくらいの大きさにするかというのは,進行役や板書役の恣意によるということ。なので,

 ○あんまり綿密な軸や項目にせず,出席者がすんなり納得できる大まかな項目にする。

 ○当てはまらない意見だと感じた時は,用意した軸や項目が間違っていたということ。
  図の方を修正したり,マス目をまたいだり,欄外に書いたりして柔軟に対応する。

などを心がけたいと考えています。

次回も引き続きマトリクス図ですが,より特定の場面で使用する例をご紹介する予定です(たぶん)。

市民の板書術(24)「A案とB案から選ぶ時の『対比図』」2019.05.

前回の「綱引き図」に似てますが,実は結構違うのが「対比図」。
二つ以上の案を比較して検討する時に向いた書き方です。

例えば,イベントの企画にA案とB案の二つがあり,どちらにしようか話し合う時。真ん中に縦線を引き,左側にA案についての意見,右側にB案についての意見を書いていくような図です。よくやるのが,片方に意見が出たら「それに対してこちらは?」と尋ねること。A案について「参加者がたくさん集まりそう」と意見があったら,それに対してB案は…?と尋ねます。出席者からは「リピーター中心で少なそう」とあるかもしれません。A案に「ゲスト謝金で若干予算オーバー」と出れば,B案に「予算に余裕がある」。A案が「新しい取り組みで少し心配」ということなら,B案「経験あり,落ち着いて実施できる」ということかもしれません。このように,対比させながら話を進めることをやりやすくする書き方です。

 判断基準や評価項目がある程度わかっている時は,あらかじめ項目を左端に項目を挙げておくのも手。罫線を引いて比較表や評価表のようにしてもよいです。例えばイベントの会場でA会場とB会場のどちらを選ぶか?という場合,「料金」や「広さ」「アクセス性」「会場の設備」などの項目を書いておきます。A会場の各欄には「会場費が安い」「アクセスはちょっと不便」「机と椅子が動かしにくい」など,B会場の各欄には「会場費は○万円」「駅に直結」「会場設営やりやすい」などの意見が入ってくると思います。

 あらかじめ項目を書いて表形式にしておくと,話がスピーディに進むので手早く決断したい時はオススメです。ただ,どうしても書かれた項目に従って考え,発言するので挙げられた項目以外の意見が出にくかったり,出席者の気持ちや感情を拾いにくくなる気はします。じっくり腰を据えて話をしたい時はあえて真ん中に縦線を引いただけのシンプルな対比図で,発言しやすいところから徐々に広げていくことも多いにありだと思います。

 表形式で進めたい場合は,下の方に「その他」か,自由な意見のための余白を空けておくとよいです。用意した項目以外の意見を受けとめる場所を作っておくということ。また,議題を選ぶかもしれませんが「個人的なオススメ度」「思い入れ」などの,出席者の好き嫌いや気持ちを尋ねる,やわらかい印象の項目を入れるのも機能するかもしれません。

 対比図で比較する対象は二つに限りません。三つ以上の場合もあります。「どちらにするか迷っている」「いくつかの候補から選びたい」という場面で対比図は効果的です。ちなみに「やるかやらないか決断する」場面での綱引き図との違いを対比図でまとめてみた図を挙げておきます。

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市民の板書術(23)「やるかやらないか迷った時の『綱引き図』」2019.04.

「やるかやらないか」を話し合うことってあります。そんな時は,真ん中に縦線を1本引いて,片方に「やる理由や根拠」,もう片方に「やらない理由や根拠」を書く「綱引き図」が便利です。

例えば,長年続けてきた公民館の地域行事をどうするか議論になり,今年開催するかしないかを話し合うような時。真ん中に縦線を引き,左側に開催する理由や根拠,右側に開催しない理由や根拠を書いていきます(左右は逆でも構いません)。開催する理由として出てくるのは「交流の場として期待している住民がいる」「予算的にも大丈夫」「なくなるとさみしい」などかもしれません。開催しない理由には「事務局の負担が集中して大変」「若者の参加が減ってきた」「昨年,トラブルが発生した」などが考えられます。

また,仕事や協力の依頼をいただいて引き受けるかどうか話し合うような時。片方の引き受ける理由の枠には「人脈が広がる」「売り上げが期待される」「ちょっと好奇心,興味ある」など。反対側の引き受けない理由としては「時間や体力的に不安」「なんとなく気が進まない」などがありそう。
他にも「プロポーザル(提案競技)や助成金に申請するかしないか」「スタッフを募集するかしないか」「引っ越しするかしないか」など,0か1か,オンかオフかを話し合う時に向いた書き方です。工夫やコツとしては以下があります。

1)矢印で綱引きしている様子を表現
縦線から矢印を引っ張って理由や根拠を書くと,左右で綱引きしているように見えます。単に見栄えだけの話ですが,バカにできません。左右から引っ張られている様子,しかしどちらかに意思決定しなくてはいけない状況が視覚的に共有されるからです。きっと話し合いにも影響を与えます。また,重要な理由や根拠には長い矢印,それほど重要でない理由や根拠には短い矢印と使い分けて,その長さで強弱を表現するのもやり方です。

2)気持ちや感情も書く
板書全般に言えることですが,「なんかやってみたい」や「やめた方がいい気がする」といった個人的な気持ちや感情,肌感覚なども大切に書くとよいです。特に綱引き図を書く時は「やるかやらないか」を意思決定する場面が多いので,当事者のやる気や感情は重要。明確な言葉や論理になってないモヤモヤ・フワフワして見える内容でも,本音が現れていることは多いと思います。

3)理由や根拠を深掘りする
書き出した理由や根拠をそのままにしておくのでなく,「どうしてそう感じたの?」「具体例はある?」と深掘りして,外側に向けて書き足していくのも効果的です。最初の地域行事の例で,開催する理由として「期待している住民がいる」が挙がったら,「期待している住民がいるんですね?」と水を向け,より具体的な話を聞いてみる。開催しない理由として「若者の参加が減ってきた」が挙がったら,「どのくらい減ったかわかりますか?」など,その根拠や発言者が抱いている印象などを尋ねてみる,などです。

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やる・やらないの両方の理由や根拠,その具体例などを書き出していくことで,意思決定を行いやすくなります。悩むようだったら「これらの理由の中で,重視するものはなんですか?」と尋ねて,重視したい箇所をアンダーラインや赤マルで強調していくのも手。「綱引き図」はシンプルですが,使い勝手のよい図です。
ちなみに「A案,B案のどちらにするか?」という時は「対比図」が便利。見た目がそっくりですが,ちょっと違うので次回,取り上げたいと思います。

市民の板書術(22)「漢字が書けないんです」2019.03.

板書の講座で「漢字が書けないんです」とお悩みをいただくことがあります。
告白すると私こそ子どもの頃から漢字が苦手なので,この件に関してはどうにも自信がありません…(笑)。

板書で漢字が書けなかったことで一番の失敗談は,大学院生だった2000年頃のこと。住民参加のまちづくりでご高名なE先生をお招きしてのパネルディスカションです。聴衆は100名か200名くらい。私は模造紙を何枚か貼り合わせて板書をしていました。終盤までいい感じに書けていたと思います。ディスカッションの最後はE先生のまとめ。よりによって住民参加のまちづくりにちなんだオリジナルの四字熟語をいくつも挙げてその意図を説明していくというものでした。板書役の私はあやふやな漢字を書いたり,思い出せない字がちょいちょい出てきたりで,E先生や他のパネラー,聴衆からも「○○の字だよ」とか「○○ヘンに○○」とかヘルプが入り…。E先生の名人芸的なクロージングは全く趣旨の違う場になったのでした。あれはヤバイ。ヤバかった。漢字で書くほかない状況だったので,えーっと,…ヤバかったなあ!

とは言え普段は,とりあえず「ひらがなかカタカナで書いておく」が漢字が書けない時の基本の対処法だと思います。悩んで手を止めたり,スマホで漢字を検索するよりは,話し合いに付いていくことを優先したいからです。

予防策の一つは,事前に出てきそうな漢字を予習しておくことです。その会議やワークショップで「これだけは漢字で書けないとマズイ」という大切なキーワードや人のお名前等があれば,確認・練習しておくとよいと思います。
また,会議が終わった後,その日あやふやだったり思い出せなかったりした漢字をメモ帳かPCに残したりしてもよいですね。ちょっと学校の予習復習のようなノリですが,漢字が苦手な人にはオススメです。

自分で気づかずに書き間違いをしていることもあります。違う字を書いたり,横棒が一本少なかったりとかです。けれど,話し合いの内容や進行に影響しないことも多く,誰も気づかなかったり,気づいたとしても指摘されないことがほとんどではないでしょうか。
漢字の間違いを指摘された時はラッキーです。話し合いに協力的な出席者がいるということですし,自分にとっても同じ間違いを繰り返さずに済むということでもあります。言い訳せずに感謝して訂正します。また,休憩時間や会議後に「あの字,間違えてるよ」と教えてくれる優しい方もあります。基本的にファシリテーショングラフィックは出席者が見てない状態での加筆や修正はしないものですが,単純な書き間違いの場合は「見え消し(取り消し線など)」して訂正しておくとよいと思います。

もちろん漢字が書けるに越したことはありませんし,大切なキーワードや人のお名前などは正しい表記を努めます。が,ほとんどの場合,多少書けなかったり間違ったりしても問題にはなりません。場合によっては「とりあえずひらがなやカタカナで書いておくこと」が,良い意味で板書の「権威」を下げ,意見やアイデアを出しやすい雰囲気を生み出す場合もあります。

市民の板書術(21)「フサホロホロチョウ理論」2019.02.

少人数の話し合いで「動物の名前」をたくさん挙げる場面がありました。グラフィッカは「ゾウ」「ウサギ」「カブトムシ」といった発言を箇条書きで書いていきます。そんな中,一人の参加者が「フサホロホロチョウ!」と言いました。グラフィッカは「なんだ?その面白げな名前は?冗談かな?まさかそんな動物がいるの?」と面白がったり悩んだりしてるうちに,つい他の発言を書き漏らしてしまったそうです。

フサホロホロチョウは,キジ目ホロホロチョウ科に属する実在する鳥です。アフリカ中央部などの乾燥した地域に生息し,草や虫やトカゲとかいろいろ食べます。首から上はコンドルやハゲワシみたいで,体の前半分はコバルトブルーと黒と白のストライプでフサフサ,後ろ半分は黒地に白のドット柄。大人になると目が真っ赤になります。食用に飼育されることもありますし,危険を感じたら走って逃げるので「アフリカの派手なニワトリ」といった感じです。

話し合い中の発言で知らない単語が出てきたらどうするか?例えば専門用語。一般的でない用語が出てくることがあるでしょう。もしくは地名。地元の人しか知らない字名などです。他にも関係者のお名前や地域の伝統行事の呼称,その団体の過去の出来事などいろんな場合が考えられます。
そんな「知らない単語」が出てきた時にやるといいことがあります。

1. とにかく聞こえたままを口に出して繰り返す。
聞き間違いがないか確認できます。また,きっとそのそぶりで「あぁ,この人は知らないんだな」と出席者に伝わりますし,それはよいことだと思います。場合によっては補足説明をする出席者もあるかもしれません。

2. 他の出席者の表情を確認する。
他の出席者がその単語を知っているのか,知らないのか,表情を見渡して確認します。板書役以外は全員が知ってそうな場合,一部の人が首をひねって知らない様子を示している場合,全体的にキョトンとしてほとんどの出席者が知らなそうな場合等,いろいろあると思います。その様子次第で,対応も少し変わります。

3-1. ほぼ全員がわかっている様子で,かつ他の発言もどんどん出てきて忙しい場合。
とにかく聞こえたままをひらがなでもカタカナでも書いておき,次の発言に備えるのがオススメです。書いておけば,後で余裕ができた時に確認できますし,板書役からの質問で議論をスピードダウンさせるのももったいない話です。

3-2. ほぼ全員がわかっている様子だが,他の発言も少なくそれほど忙しくない場合。
一旦,ひらがなかカタカナで書きとめます。その意味や漢字での書き方などを出席者全体から教えてもらいながら,正しく書き加えます。教える&教えられることで出席者との関係性が強められることも多いですし,その単語の説明をやりとりする中で新しい意見や発見が得られることがあるためです。

3-3. わかっていない様子の人が複数もしくは大勢いる
こちらもとりあえず書くのですが,引き続き発言者に補足をお願いし,その説明や語句の定義などを少し小さめの文字(色を替えてもよいでしょう)で書き加えます。出席者が知らない状態で話し合いを進めることも難しいので,情報共有のためにもその単語の確認を行います。

この,知らない単語が出てきたときの対応は「フサホロホロチョウ理論」と呼ばれています(たぶん3人くらいに)。

むしろ,地域の課題を掘り下げる会議や団体のミッションを言語化する会議では「知らないこと」が話し合いを促進することもあると思います。ただし,スピード重視で忙しい会議なのであれば,その分野や経緯を理解している進行及び板書役が適任と言えます。

 

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市民の板書術(20)「色覚異常とプロッキー」2019.01.

ファシリテーショングラフィックで使うプロッキー等の水性マーカーには,8色や10色,12色といったパッケージがあります。使いこなせばそれこそ色んなカラフルな表現をすることも可能です。
 ちょっと気に留めておきたいのが,日本では男性の20人に1人,女性の500人に1人は「色覚異常」だという事実。学校の教室に1人ずつくらいいる計算になります。「色盲」「色弱」「赤緑色盲」とも呼ばれていました。「盲」や「異常」という表現が差別的ということで,2017年頃から「色覚多様性」とも呼ばれるようになりました。ここでは現時点でもっとも一般的な呼称と思われる「色覚異常」としておきます。

 色の見え方に関するバリアフリーについては,東京大学の伊藤啓先生と東京慈恵会医科大学の岡部正隆先生らが,2002年から公開されている「色覚バリアフリープレゼンテーション法(旧名称:色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法)」のサイトがとてもわかりやすいのでご覧ください。
http://cudo.jp/cbf/

 では,水性マーカーで模造紙に書く場合はどんなことに気をつけたらよいでしょう?色覚異常を持つ知人が協力してくれて,実際に試し書きをしながらプロッキーの色の見分けについて話を伺いました。

「赤と緑の違いはわかる」
 赤緑色覚異常と呼ばれることもあるくらいなので,「赤」と「緑」の色使いには注意しないといけない,とずっと思ってきましたが,実は両者の違いは十分わかるとのこと。同じ系統には見えるものの,「赤」の方が濃く、「緑」の方が明る見えるそうです。マーカーではありませんが,細い赤(例えば赤いボールペンなど)は,むしろ黒に見えて困ることがあるそうです。筆記具では全般的に「赤」のインクは濃く強く作られているのかもしれません。

「青と紫の見分けはつかない」
 「青」と「紫」の見分けはかなり難しいということでした。プロッキーでは「青」や「紫」は「黒」ほど沈まず,しかし強く目立つ色なので見出しに使うことがあります。「青」と「紫」の違いだけで大見出し/小見出し等の階層を表現するような使い方をしないよう気をつけたいですね。

「緑と茶は一緒。橙色もかなり近い」
 「緑」や「茶」は,「黒・青・紫」ほど強く重たくないけれど,書いた文字がはっきり見えるので,とりあえず使う&たくさんの文字を書くことがあります。しかし両者の違いがわかりにくいので「緑」と「茶」で発言の種類を仕分けしたりしないようにしたいものです。そう言えば私も質疑応答の場面で,質問を「緑」,回答を「茶」で交互に書いたりしていました…。反省。

「ソフトピンクへの変更は英断」
 三菱鉛筆(株)は色覚異常への対応として2010年に「桃色」を廃止して,新しく「ソフトピンク」を開発して差し替えました。以前の「桃色」は色覚異常の人にとって「水色」との区別がつかないものでしたが,現行の「ソフトピンク」は違いがわかりやすくなっています。変更は英断でした。ただし「ソフトピンク」は,15色セットに入っている「灰色」との見分けがつかないのでご注意を。

 人によって型や程度が異なるので,上記が全ての色覚異常の人にあてはまるわけではありません。ただ,色の違いだけで意見の仕分けや重み付けをすることは避けた方がよいですし,それはきっと他の多くの人にとっても見やすくなることだとも思います。
 色覚異常の人は,周りの状況や会話の文脈,過去の記憶を手掛かりにしながら,それがどんな色か推測しながら会話に参加していることがあります。時にはそれが負担やストレスになることもあるでしょう。
 会議や話し合いの場面で,出席者が本題以外に頭を使ったり,不要なストレスや疎外感を感じなくて済むような書き方・色の使い方をしていきたいものです。

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※左側がコピー用紙にプロッキーで書いてスキャンしたもの。
 右側がphotoshopの「色の校正」機能で「P型(1型)色覚」を再現したもの。

ファシリテーショングラフィックの連載を再開。

以前からグリーンシティ福岡の会員や近しい方にお送りしていたファシリテーショングラフィックについての連載を再開しました。締め切りがないとつい先延ばしにしてしまうので,グリーンシティのメールマガジンと同時に書く予定です。第1回から第19回についてはいずれまとめて発表したいと思います。