昆虫動画はじめました

生まれ育った福岡の地と、昆虫をべったり愛するスタッフ・伊東が身近な虫のカワイイ動画を作って、皆さんを「虫好き」にしていくコラムです。撮影は主に週末、同類の夫と野山に出かけ、色んな虫の変わった生き様を撮っています。

県内でアブラギリの群落を見つけたのは昨年6月。
ここでなら、憧れのオオキンカメムシ達の暮らしを観察することができるかもしれない!そう思って夫婦で通い続け、8月の終わり頃まで暑さ厳しい時期に産卵から孵化、成長していく幼虫達の姿、成虫の旅立ちまでを撮り収めることができました!

はじめに気になったのは幼虫達のお尻から出ている長い管。
お尻から伸びているのかと思いきや、なんと長い口吻がはみ出しているのでした。
吸汁するときは、この中からもっと細い口針という器官が出てきます。

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幼虫達が吸うアブラギリの実を割ってみたらこんな感じでした。
中の種の部分を吸っているのでしょうか。

前作で周囲から好評をいただくことができ、気をよくした夫が立体展翅標本動画のパート2を作りました!
今回はこれまで作ってきた様々な種類の昆虫達が登場します。

コノハチョウの宇宙のような翅の輝き!
迫力満点のシロスジカミキリの顔面!
タマムシの翅の裏側のマットな虹色!

どれもずっと眺めていたくなる美しさですね。

先日、この動画も含めた作品と一緒に、子ども達の前で標本も公開する場をいただきました。

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目を輝かせて色んな角度から眺める子ども達(キオビエダシャクは鹿児島のお土産でいただいたもの 笑)。
身近な場所でこんなにキレイな虫がいるのかと驚いていました。
通常の標本だと生きている時の姿が想像しづらいのではないかと思いますが、立体展翅標本だとほとんどそのままの姿形なので、野外で出会ったときに気づきやすくなるのではと思っています。

朝、なかなかお布団から出られない寒い日が続いていますね。
この冬は数年ぶりにしっかり雪も積もったし、ちゃんと冬が来た!と感じています。

私はよく「冬でも虫っているの?」と聞かれますが、探せば結構見つかるもんです。
でも、多くは動きがないので動画的にはおもしろくないんですよね〜。
アラカシの葉で集団越冬していたキモグリバエ達もこの通り。ただじっとしていました。

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そういうわけで、今回はいつもと違った感じの動画を紹介します!
昨年、夫がSNSで知ってどハマりした立体展翅標本の作品です。標本を作っておうちで撮影しています。

通常の標本と違ってまるで生きているよう。
実物を観察したり、写真と見比べたりしながら脚や翅、触角などを細かく調整して再現しています。角度で変わる翅表の色、輝きが美しいですね。野外で出会ったシジミチョウが翅を開き、日を受けてキラキラした瞬間の感動が胸に押し寄せる感じを思い出します。何百回と見てきたヤマトシジミであっても、あの瞬間は「うわぁ〜」と毎回声が漏れるほど私は感動してしまうのですが、みなさんどうでしょう?
イベントで子ども達と一緒に虫を探すと、ついつい捕まえる方に楽しさの比重がいっちゃうんですが、ぐっとこらえてそんなシーンを一緒に楽しめるとよいなあと思っています。

因みに私のお気に入りはベニシジミ。スロー映像だとわかるのですが、シジミチョウのあの小さな頭ってよく動くんです。飛び立つ時はその方向に頭を向けるんですが、そこまで再現されている!お見事。

登場種は順に ベニシジミ、ヤクシマルリシジミ、クロツバメシジミ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ムシャクロツバメシジミルリウラナミシジミ です!

このブログで登場した2種も入っています。撮りつつも、捕っていたんですね〜。撮っている間に逃げちゃわないかなあとか、なかなかジレンマがあるんですよ(笑)
イベントで動画を観ていただく機会があれば、標本の実物も持っていこうと思います。

長袖Tシャツ1枚でもちょっと暑いくらい気温が高かった11月14日。
山間部でも20度ぐらいあったと思います。

今回もS会長に情報をいただき(うちの会長ほんとヤバイんです)、私だけ見れていなかったルリウラナミシジミを見事クリア!さあ、次はどこに行こうかと車の中で考えていた時でした。ふと目の前にある電柱を見やると、小さな粒が3つ、表面をウロウロしていたんです。 なんとなく気にしていたら、周囲から次々に飛んでくる。そういえば、ルリウラを探していた時、やたらとテントウムシが飛んでいたなと思い出しピンとくる。これはテントウムシが越冬前に集団で飛び回る現象!前から見てみたかったやつだ〜! 

正午頃に気づいてから約1時間。始めは3頭だったテントウムシは最終的に3桁近くの集団になり(大半がナミテントウ)、みんな電柱の日陰側でウロウロ。落っこちては飛びあがって再び戻ろうとするので、電柱の下にいるとテントウムシまみれになれました。
ここの周りは広い草地。他に電柱が数本あったので見てみると、数は少ないものの同じような現象が起きていました。

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テントウムシ達は家屋のすき間や石の下など、風雪をしのげそうな場所で集団になって冬を越します。電柱にはきっとそのような場所が無いので、一旦こうして集まってから安全な場所を探しに行くのでしょうか?不思議だなぁ。

ついに、11年ぶりにこの時がやってきた!
運動会とか、Go To キャンペーンを使って旅行とか、皆さん10月をどうお過ごしでしたでしょうか?
実は福岡のチョウ愛好家さん達の間ではちょっとした”祭り”が起きていて、私自身も暇があれば当たりをつけて出かけていました。
通常は沖縄の島々や九州の南部でしか見られない、小さなモルフォチョウが福岡県の至るところで発見されていたのです。
台風が多かった今年。以前紹介したキョウチクトウスズメのように、嵐に乗ってこの小さなチョウも福岡にやってきていたようです。
(キョウチクトウスズメも発生しているとの情報あり)

このブログでは3回連続の登場となる同好会のS会長に案内してもらい、「うじゃうじゃいたよ」というポイントで撮影を行いました。

ルリウラナミシジミはこんなにキレイな翅をもっているのに、本当に翅を開いてくれないのが特徴だそうです。ギラッと反射するあの美しい青い輝きに、敵が見とれてしまっているうちに逃げる作戦なんでしょうか(笑)
こんなに語っている私ですが、実は撮影現場にはおらず、まだ見れていないのです。
もう随分寒くなってきましたし、南国のチョウが飛び回れる気候ではなさそうです。
ああ、私も”祭り”に参加したかった。私も「あの時はすごかったもんねえ。どこにでもおったよ」なんて将来若者に語りたかった。再来の時まで後悔はずっと続くことでしょう。

お近くに豊かな鎮守の森をもつ古めの神社はありませんか?
巨木が何本か生えてたら尚よしです。薄暗〜い感じのところです。
さあ、今週末はサツマニシキを探しに行きましょう!(台風来てるけど…)

サツマニシキを見るには幼虫の食草である”ヤマモガシ”という木を探すところから始まります。ヤマモガシはマカダミアナッツと同じヤマモガシ科の木で、このグループの植物は日本でヤマモガシ以外にありません。西側に分布していて、ちょっと珍しい木のようです。花の形も変わっています。

私が博多昆虫同好会に入って間もないころ、この蛾をフィールドで初めて目にした時、とても感動したのを覚えています。あの水色メタリックがキラキラしながら宙を飛ぶんです。高いところを結構なスピードで…。必死に追いかけてシャッターボタンを押すも、前述のとおり薄暗い場所なので満足いくものが撮れません。「もっと明るく手の届く場所でキレイに写真を撮りたい!」と強く思ったものでした。そんな思いから私のサツマニシキのためのヤマモガシ探しが始まりました。図鑑やネットの写真を見て、葉の形や幹の様子をたたきこみ、「サツマニシキを見たよ」と聞けばその周辺をウロウロ、葉っぱをぐいっと寄せて首を捻ったものです(今ならわかるけど、あれはミミズバイだ 笑)。そんな調子で一向に見つけられず、頼ったのが動画の冒頭で網を振っている博多昆虫同好会のS会長です(前回の「ムシャクロツバメシジミ」でも登場)。手近な自生地にサラッと連れて行ってくれて、これまたサラッとサツマニシキまで見せてくれました。以降は、おかげさまでヤマモガシ同定スキルを習得できました。やっぱり植物を覚えるなら知ってる人と歩くのが一番早いですね!って、肝心のサツマニシキの写真がキレイに撮れるポイントはまだ見つかっていないのですが。

この動画を観て、サツマニシキのためのヤマモガシ探しを始めようと思った方、「あれ?これヤマモガシかな?」って思ったら、小さな穴がたくさん空いている葉っぱが無いか探してみてください。サツマニシキの幼虫が残す独特な食痕が間違いないと教えてくれます。

2016年11月。
とある場所にて同好会のメンバーでチョウのルートセンサスを行っていた時のこと。
事件が起きました。

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当時、毎月同じルートを歩いて見かけたチョウの種類、数を記録する活動を半年ほど続けていました。
山が近いこの場所では、普通種ながら幅広い種類のチョウが確認でき、ホッとする楽しみとなっていました。
毎回メンバーは少し変わるのですが、この時は同好会会長と夫と私の3人。
雑談しながら目に入ったチョウを表に記録していきます。

この時驚くのがチョウ屋さん達の匠の技。飛ぶチョウを見て、捕まえなくとも羽ばたき・飛ぶ高さ・行動・翅の形などで種名を言い当てていきます(確認するよ)。フィールドでしか体得できないスキルですね。かっこいい。因みに私はシジミチョウの仲間がさっぱりで、ヤマト、ルリ、ヤクルリ、サツマで「こんなん捕らんとわからんわ」と横で愚痴るレベルです。

ルートの折返し地点についた時、柵に1頭のシジミチョウがとまっていました。ヤマトかな?と特に気にせず通過する私に対し、慎重に写真を撮ってプレビュー画像を確認し、訝し気な様子を見せる会長。「これはおかしい」「ひょっとしたら」なんてことを言いながら、「一応とっとこ」と網を振っていました。

帰宅後、会長から連絡があり、あの1頭のシジミチョウが名古屋で問題になっていた外来種「ムシャクロツバメシジミ」だと知りました。
これが福岡でのムシャクロツバメシジミ発見例第1号です。新聞記事にもなりました( 「外来種チョウを福岡で発見 ムシャクロツバメシジミ 園芸植物の輸入で侵入?」西日本新聞ニュース)。
この後、周囲に情報が流れると各地で次々と発見されていきました。

自分の慣れたフィールドならば、判別できない虫を見つけたときも図鑑や経験からの予備知識で、ある程度選択肢が浮かびます。この時も私は”ここにいるはずがないもの”については頭から除外し、ヤマトかな?とそれに注目する体力・気力・時間を省くことを選択していました。こう整理して書くとこれは怠慢ですね(この調査はカジュアルな感じ)。

この事件は私に大きな衝撃を与えました。
変化していく気候、人の活動が与える影響で、自然環境はどんどん変化していっています。その大きな動きの中で、自分の身近な場所も変わっていっている可能性があること、それを心にとめながら自然を見つめるようになりました。私のような地域の自然愛好家こそ、情報を入れ意識しておく必要性があるように感じています。

ムシャクロツバメシジミは2016年以降、住宅街にある私の家のプランター、イベントで訪れた保育園の花壇などで毎年見かけています。つい先日も近所の病院の花壇で目にしたばかり。小さな黒っぽいシジミチョウを見かけたら、よ〜く見てみてください。

 

「ムシャクロツバメシジミ・成虫」 

「ムシャクロツバメシジミ・幼虫」

ついに梅雨が明けました〜。
これで週末の昆虫活動が天候に左右されにくくなりましょう。やったー!
そうは言いつつも、雨が続いたお陰でこれまで作ってきた動画の整理に集中できたことも良かったです。
8年前からちまちまアップしてきてはいますが、なんと68作品もありました。グループごとに分けてポートフォリオを作ったものの、多すぎてどうしたものかと悩み中(笑)混沌としていますが、良かったら覗いてみてください。

 むしむし動画集⇒http://hakatamushi.com/6464movie/
 (しかも管理人特権で博多昆HP上につくっちゃった)

さて、そんな梅雨の貴重な晴れ間に撮影したのが今回の「アオスジアゲハ」です。
県内北部のとあるダムにて。外周を車で走っていると、山からの小さな流れにアオスジアゲハやかカラスアゲハ、ヤクシマルリシジミ、イシガケチョウなど美しいチョウたちが吸水している場面に出くわしました。種は様々ですが、花の蜜や樹液でなく、こうして水分を摂っているのは実はみんなオス。性成熟のために必要なミネラルを補給しているのだそう。

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今回の作品に登場するようなアオスジアゲハが集団で吸水している場面はよく見かけます。山でなくとも、室見川上流の河原でも見かけたこともあります。ただ、吸蜜はせいぜい視界に5,6頭が入る程度。1本の木に50頭ほどのアオスジアゲハが集まっているところなんて初めて目にしました。

撮影できたのはほんの一部で、実際はこの1本のナンキンハゼ全体にこの光景が広がっていた状態です。私たちが見ていた面の反対側にもいたので、実際は3桁いっていたのかもしれません。他にも同じような花の状態のナンキンハゼはいくつもありましたが、これほど集まっていたのはこの木のみ。翌日も確認しましたが、同じ状況でした。観たままの感動・驚きを伝えたいけれど、それを語らずして映像で伝えるって本当に難しいことだなと改めて感じた日でした。来年のために工夫を準備しておかなければ!

因みに鳴いているのはヒメハルゼミたち。謎のスイッチで突然合唱を始めます。私が初めて耳にした時、ロードバイクの集団が近づいてくるのかと身構えてしまいました。

暑い。
まだ6月で標高も400mほどもある山の中なのに汗が止まらない…
朝から出かけ、夕方まで虫の採集や写真を撮った帰り道。
まあまあ疲れていたけど、前から気になっていた涼しそうな神社が目に留まり、つい寄ってしまいました。

境内にいくつも聳える巨木は歴史の長さを感じさせ、大きく広がる枝葉が作った木陰でこの神社はとても涼しい。地面も幹もたくさんの緑のコケで覆われ、晴れていても空気は湿潤な感じがする。そんなとっても気持ちの良い空間。近くではあまり見かけません。

木造の社を見ると柱や縁に小さな穴がたくさん空いているのに気付きました。中には土のようなもので塞がれているものもあります。一度塞がれた後に空いた形跡があるようなものも。しばらく観察していると、小さなハチ達が穴に出入りしたり覗いたりしているところが見られました。この社はハチに人気の集合住宅と化していたようです!

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そのハチたちの中に変わったリズムで材の上を歩く不思議なハチがいました。ずっと見てみたかったシリアゲコバチです!このハチはハナバチやアナバチの幼虫に卵を産み付けて寄生するので、材の中にいる幼虫を探しているところだった様子。姿は見えないのに、どうやって見つけるんだろう?音?におい?不思議です。さらに産卵のモーションはもっと不思議。動画でご覧ください!

ぐっぐっと針を垂直に突き立てていますね。結構な力が要りそうです。そのために他のハチたちとはずいぶん異なる体型をしているのでしょうか。謎がいっぱいです。

 

追記

夫の解説を聞きながら何度も繰り返し観てどうやって産卵管を刺しているのかが理解できました。ただ文章と図で説明しようとすると、なかなかのパワーが必要なので産卵管の形だけなぞってみました。
普通にお尻と思えるところから真っすぐ伸びているのは鞘のようなもので、産卵管ではありません。矢印の始点はおそらく産卵管の付け根。名前の通り腹部〜尻にかけて反り上がっているように見えます。点線の部分は体の間(表現に迷う 笑)にあって見えていないところ。実際はどんな形になっているかわかりません。産卵管がこんな形になっていると知ると、上からや正面からの画でも節と節の間に展開した透明な膜から針が透けて見えておもしろいです。

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私のリモート業務が始まったのは4月の頭でした。事務所の廊下から見える高く真っすぐ伸びた樹、チャンチンがまだ淡い桃色のステキな葉を展開させていた頃。この間、事務所に立ち寄った時に見た姿は別の樹のように青々としっかりした葉を繁らせていました。
緊急事態宣言の解除、学校再開、世の中も再び動き出しましたね。

さて、外出自粛につき昆虫動画の新作はできていません。ですので、今回は過去作を再編集したものを紹介したいと思います。

福岡では運が良いと見れる蛾、「キョウチクトウスズメ」です。
なぜ運が良いと見れるのかというと、実は本来この蛾は福岡には分布していないのです。低気圧や台風などに乗って沖縄地方や東南アジアから成虫がやってきて、運よく辿りつけたものが子孫を残し、数を増やしたところで私たちの目にふれているのだと思われています。でも、残念なことに彼らは福岡の冬を越すことはできません。せっかく子孫を残しても、ここで途絶えてしまうので定着には至っていないの
です。今のところは。
晩夏、公園や団地でよく見かけるわりに、猛毒をもつキョウチクトウの樹の葉がボロボロになっていたらサインです。不思議な青い目玉模様をしたぷりぷりイモムシを探してみてください。

2013年以降、私たち夫婦はシーズンが来たら毎年目を光らせていますが、福岡市でこの年ほどの「大発生」は起きていません。どことなく南国感漂うこの美しい蛾が、はるか上空を飛んで海を越え、国境を越え、私たちの住む街にやってくる。想像するとワクワクしませんか?やっぱり虫にはロマンがあるなぁ。

 

<おまけ>

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先日、グリーンシティ福岡の事務所にとまっていたそうです。
ステルス戦闘機のようなフォルム、緑色のカモフラ柄。キョウチクトウスズメと共通点はありますが、こちらは同じスズメガの仲間のウンモンスズメです。サクラなどを食べるので街中でも見かけます。鮮やかな緑色をしたキョウチクトウに対して、こちらは渋めな抹茶色。サクラを食べるし後翅はサクラ色だし、なんか和テイスト。以上、雑な見分け方でしたー。

これまで経験したことのない息苦しい日々が続いていますが、日課の散歩で見かけるヤマトオサガニたちが私の癒しとなってくれています。潮の満ち引きのタイミングがあえば、近くの川のポイントは大小無数のオサガニたちが穴から出てボーッと日光浴をしていて、私に気づくとサッと穴に引きこもるんです。たまにベンケイガニのような大型のカニが混ざっていてさらに楽しませてくれます。そう、マイブームはカニ。
散歩に生きもの観察の要素があるとおもしろいですよね。でも何をどう観察したら良いのかわからないという方!グリーンシティ福岡では「ZOOM de かんさつ会」というオンライン型の自然観察会を計画中です。無料期間中ですので、ぜひお気軽に参加してみてください!


さて、外出自粛ということで、我が家では撮り溜めた収録を編集する作業が捗っています。
今回は夏に撮影した希少種のトンボ「ヤクシマトゲオトンボ」を紹介します。

トゲオトンボの仲間は九州・四国以南に生息していて、離島を除く九州に生息している種はこの「ヤクシマトゲオトンボ」とされています。他種の分布は沖縄・鹿児島の離島ごとに分かれ、地域ごとに1種ずつ分布しているようです。このことは、トゲオトンボの仲間が撮影したような狭い範囲で一生を過ごし、命をつないできたことを示すのではないでしょうか。
もし、この岩壁が開発や災害で無くなってしまったら…
絶滅が危ぶまれる希少な生きものを見つけると、うれしい反面、不安の種のようなものが心の隅にどんどん積み上げられていく感じがします。

冬枯れの田園地帯。田んぼの間にあるU字溝を覗くと、勢いよく透明な水が流れていて、底には青く目立つアラカシの葉が1枚。何かいっぱい付いてる…!

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実はこれ「ブユ」の幼虫です。
体長は大きいもので4mmほど。激しい流れの中、お尻の吸盤で葉に引っ付き、上半身は投げ出して水流に任せています。独特のスタイル!でもこれ、葉が流れちゃったら万事休すです。

子どもの頃、脚が痒くて無意識に掻いているうちに、気づくと直径5cmぐらいに腫れあがり、触ると不思議とカッチカチになっていることが何度かあったんです。母は「ブトに刺されたっちゃろ」と言って軟膏のムヒをくれました。「ブト」ってなんなんと思いつつも、特に追及しないまま私は大人になりました。そして今、ようやくその姿を知ることに。想像だとデカイ蚊だったんですが、小さなハエの仲間。名称はブトとかブヨとか地域により様々なようですが、正式には「ブユ」というそうです。母もきっと本当の「ブト」を知らないはず。今度聞いてみよう。

「ジギジギジギジギジギ」
夏から秋にかけて、田んぼや草むらの脇を通るときに聞こえてくる虫の声。
たどってみるとその正体を低い草の葉や茎で見つけることができます。
小さなキリギリスの仲間、ササキリです。
ササキリは他の鳴く虫に比べ鈍感なのか、そろーりそろーりと忍び足で近づけば、翅をこすり合わせて鳴いている姿を割と簡単に見せてくれます。実は3年前に鳴く虫を集めた作品を作っているのですが、同じキリギリスの仲間のウマオイやヤブキリなどは、私が近づく時に踏んだ小さな砂利の音で逃げ出してしまうほど敏感でした。(悔しくて路面を靴下で歩いていたのが懐かしい)
 ⇒鳴く虫を集めた過去作品「集く」(2017年)

今回、鳴いているササキリを見つけたとき、すぐ側にいるメスの存在に気づきました。もしかしたらオスの声に誘われてやって来たのかもしれないと思い、チヂミザサやゲンノショウコが咲く可愛らしいお花畑でしばらく2人を見守っていました。

残念ながらこちらの期待したラブシーンは撮れませんでしたが、ササキリ女子のもみ殻外し、すごくないですか?
ちょっと言葉が悪いですが、バッタの癖にこんな巧みな口技を持っているだなんて。しかも美味しいとこだけ食べちゃうグルメ家だったとは!知らなかった驚きの一面です。

子ども達の虫かごでよく見かけるけど大抵カマキリのエサ役になっているササキリ。
もうちょっとスポットが当たって欲しいスゴ技の持ち主でした。

11月ごろ。住宅街にある自宅の周りを歩いていると、ぷぁ〜んとゆるく、時にビュッと速く、とても不器用に飛ぶ小さなオレンジ色の物体が目の前を横切るようになります。1つ見つけると、あ、あそこにもここにも。辿っていつものおじちゃん家のマサキを見ると、今年もいるいる!と一安心。正体はオレンジと黒のふわふわした長い毛を持つ蛾、ミノウスバ。
ミノウスバが飛んでいる時間は日中。鮮やかなふわふわの毛に透明な翅。虫に詳しい人でないと、なかなか蛾だとは思えないルックスかもしれません。

幼虫が食べるのはマサキやマユミで、ちょっと古い住宅やお寺の生垣を本当にボロッボロにしています。街中でかわいそうなニシキギ科の木があったら、だいたいミノウスバの仕業と思って間違いないでしょう。そいういうわけで、春によく殺虫剤をかけられて苦しんでいる幼虫たちを目にしますが、幸いなことに近所のおじちゃん家は見逃してやっているようです。

ということで、今回の動画はおじちゃん家のマサキで撮影をおこないました。

動画では卵の上にかぶさる母親について”守っている”と表現しましたが、実際のところ、どういうつもりなのかはわかりません。少し刺激してもカウンター攻撃をしてくることはなく、その場から離れずにじっとしているような感じです。たまにその状態で死んでいるものを見つけることもあります。

自分の毛を抜いて卵を覆い、敵みたいなのが来てもその場から逃げ出さず、死んでもその姿勢を保ち続ける母親の姿。人間と重ねると胸を打ちませんか?
これで殺虫剤をかけずらくなった方がいたら、私の目論見は大成功。

私にとって冬の足音を感じられるものごとの1つに、スズメバチの死骸があります。
野山や道端でぽつ、ぽつと目立つようになってきたら、どこかで春夏を逞しく生き抜いた巣が来年の女王を生み出し、終わりを向かえようとしているのかな?と感慨に浸ります。
完全に死んでいるのを確認して手の上で見てみると、意外と黒いふわふわの毛が生えていてゾウの頭を思い出してしまうのは私だけでしょうか?

生きたスズメバチを手の上で観察する方法は他にもあります。
秋頃になると
、成熟した巣からオスが出てくるようになります。オスの外見はメスより体が小さめで、触覚がにょ〜んと長かったり顔の部位の形が違ったりするのですが、見た目にわからない大きな違いは針を持たないことです。
このオスであれば手に乗せても噛まれるだけなので(あまり痛くないらしい)、SNS上には生きたスズメバチを手に乗せている猛者の写真や動画が散見されます。
今年は私も見極められるようになったので、自信をもってネットしました。

今回はいつもと違った動画です。
夫が仕事で使用したサーモカメラで撮影しています。ものすごーく高価なものだとか。
翅を動かすための筋肉がある胸部が一番温度が高く、32度を超えています。末端は冷え冷え。
狩りバチの仲間は胸部から腹部の間が細くくびれています。これは胸部の熱を腹部に逃がさない工夫になっているんだそうです。
人も目で追えないような飛翔で狩りを行うヤンマも同じ形をしていますね。
借り物なので続編は期待できませんが、いつものカメラでスズメバチの作品も作りたいです。

数年前、田仲義弘さんの『狩蜂生態図鑑―ハンティング行動』を読んでから、ずっと気になっていたハチに出会うことができました。
俗にいう”ゴキブリをゾンビ化して操るハチ”、サトセナガアナバチです。
この衝撃的な生態、世間では数年前に映画化された漫画『テラフォーマーズ』に登場した、海外に生息する
エメラルドゴキブリバチで知られていることと思います。
実は同じ行動をするハチが日本にもいるんです。名前だけ見ると、日本の虫だから地味なんでしょ?と想像しちゃうかもしれませんが、サトセナガアナバチだっていうなればサファイアのように青く輝く美しいハチです。
私がまだOLをしていたころ、中央区にある某営業先の駐輪場で、このハチの後脚と腹部だけが転がっていたのを発見しました。拾い上げて日の光にかざすと、腹部は金属のようにピカピカ光り、鮮やかな赤い腿節とのコントラストにグッと心を掴まれました。いつか生きている個体を見つけてやるぞと思っていたら、10月に仕事で訪れたとある集会所で、当にゴキブリ(クロゴキブリ幼虫)を引っ張っている最中の姿が目に飛び込んできたのでした。

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普段、私が虫を探すとき、虫モードに切り替えてサーチするのですが、今回は仕事中だったため本当に不意打ちで、一瞬目の前のことが理解できていませんでした。
一拍置いて「えーーーーーーっ?!!」と大声をあげた、はず。あまりに興奮してよく覚えていませんが、居合わせたスタッフが若干ひきながら撮影する私を撮っていてくれました。感謝です。
(あ、これは仕事中ですが、移動前の片付け時間的なやつですので、あしからずご容赦ください)

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この後、夫へ連絡し、翌朝から撮影。このフットワーク軽い感じが夫婦で共通の趣味を持っていることの良さですね。生活の中で、大体”虫”に関することは順位高めです。
その後も何日か通い、結果200を超える動画ファイルができあがりました。実はここからが動画作品の大変なところ。どんなシーンがどんな画角で入っていて、ピントが合っているのは何秒から何秒の間なのかというリストを作らなければならないのです。その後、カットして繋いで色を合わせて、字幕をつけるのか動画で説明するのかなど試行錯誤を重ね、8時間収録したものが数分にまとまります。いやー
ということで、今回の撮影ではメスがゴキブリを運ぶところや、巣に連れて行ってフタをするところ、オスがちょっかいをかけてくるところなどのシーンが撮れていますが、運ぶところのみに絞ってまとめました。

今回、合計3日ほど粘って撮影しましたが、狩りをする大事なシーンが撮れませんでした。これは予想ですが、落ち葉を分けると丁度良いサイズのゴキブリの幼虫たちがわさわさ出てくるので、狩りはてっきりそこで行われるものと思いこんで、地面付近を注視していました。
ところが、撮影したハチは樹上から現れたのです。撮影中、私が夫に話しかけようと身を動かした時、間に丁度良いサイズのゴキブリの幼虫が空から落ちてきたこともありました。今思うと、あれはハチに追い詰められたゴキブリだったのではないでしょうか。来年は、樹上に目を見張ってリベンジしたいと思います。


しかし、3日粘って一度出会えたこんなシーンに、探しもせずに出会ってしまう私って”もってる人”です。虫活動に限ってですが。

森に囲まれた静かな湖の畔。
水面に落ちた葉の上を、小さなハエたちが忙しく動き回っていました。
よ〜く見ると、その中にはカマキリのようなカマを持ったハエたちの姿が。
名前は「カマバエ」。多分、種としてはミナミカマバエなんだと思いますが、詳しくないの「カマバエ」としました。体長は5mm弱と小さく、すばしっこい虫です。
田んぼの畔など、湿った泥地があればどこにだっていると聞きましたが、なかなか見つけることができず、今回やっと撮影することができました。

カマだけでなく、不思議と顔や動きまでカマキリに似ているカマバエ。
狩りはじゃあどうなのか?と、まさしく動画向きな瞬間を待ちわびて3時間。
彼らはただウロウロしたり、掃除したりするだけで、一向にその瞬間を見せてはくれませんでした・・
これまた、来年の宿題です!

夏休み期間、グリーンシティのイベントでも昆虫関係のものが盛り沢山でしたが、私の所属する博多昆虫同好会でも、山の上でライトトラップをして観察会を行いました。ほんと虫三昧の夏。お腹いっぱい!あ、実は私、虫を食べることにも少し興味があるんですよ。以前、昆虫料理研究家の内山昭一先生が福岡でイベントをされた時に、アブラゼミの幼虫のアヒージョや、モンクロシャチホコの幼虫の塩煎り等をいただきました。この2品、とても美味しかったです。あれ以来、初夏、学校や公園の桜並木の下に、駆除されて転がっている無数のモンクロシャチホコ達を見ると、勿体ない気持ちになるようになりました。口に入れるとふんわりと桜の香りが鼻に抜けて良いんです。味というか風味を楽しむものですかね。

さて、大きく脱線してしまいましたが、今回は前述した同好会でのライトトラップ時、シーツに集まる虫達そっちのけで撮影していた「ヤツメカミキリ」の産卵シーンを作りました。シーツに虫はやってきてくれても、生態を見せてくれるわけではないのですが、今回はたまたま近くにあった桜の木に飛んできて産卵を始めた様子。周りには、虫も人もいっぱいいて賑やかだったのですが、彼女には関係無かったようです。

こうして産み付けられた卵は、孵化〜成虫になるまでずっとこの木の中で暮らします。
なので幼虫の姿は直接は見れませんが、木の中にいるかどうかを知るサインはあります。木の下に細長い木くずのようなものがまとまって落ちていないか探してみてください。落ちていたら幹を辿って、穴が開いているところを見つけてください。カミキリムシの幼虫はそこからその細長い糞を出しているのです。たまに木からショリショリ削るような音も聞こえてくることがあります。(これは私の実体験)

園芸本に幼虫の駆除は、ハリガネで刺殺すべしと書いてありました。ちょっとかわいそうだけど、それをそのまま炙って食べてみると良いかもしれません。食べられる昆虫の中ではトップクラスに美味しいそうですよ。

実は今回、最新作が前回の「シリアゲムシ」をさらに追って作った動画なので、ここでは過去作品を紹介しようと思います!
とはいえ、新しい「シリアゲムシ」にはズルいオスの登場など、前回には無かったシーンも撮れているので、
気になる方はYoutubeで是非ご覧ください!⇒「シリアゲムシの配偶行動

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およそ7月から限られた砂地で見られる狩り蜂「ニッポンハナダカバチ」は、全国的に数を減らしていて、環境省のレッドリストでも絶滅危惧Ⅱ類、福岡県だとさらに上の絶滅危惧ⅠA類とされている希少種です。
このハチの存在・生息場所は、私の尊敬する大先輩から伝えられ、「将来もしかしたらいなくなってしまうかもしれないので、是非動画で記録してください」というミッション(勝手にそう捉えている)のもと、とある海岸へ夫と通い続けて制作しました。完成はまだ先の作品ではありますが、自分で掘った巣穴を出て、狩りへ出掛けるシーンから、獲物を持って帰ってくるシーンまでを少しだけ切り出してまとめた作品をご覧ください!

ニッポンハナダカバチは空中で獲物のハエを捕らえるそうです。
その瞬間が撮れれば作品は完成するのですが、とんでもないスピードで飛ぶため難航しています。
完成は来年か?!