安全管理のコラム第38回「失敗知識データベース」2019年3月

失敗知識データベース」には,産業や科学技術分野を中心にいろんな分野の事故や失敗事例が蓄積されています。それらの事例から得られた知識やノウハウを発信しているありがたいサイトです。多くが工場や建設現場などの事例ですが,社会的にも話題となった「こんにゃくゼリー事故」や「六本木回転ドア事故」などの事例も入っています。
いろいろ経緯があってここ10年程の事例は入っていませんし,私たちに関係する野外活動や自然体験分野の事例はほとんどないのですが,それでもぜひ一度ご覧いただきたいサイトです。

このデータベース構築の中心となったのは東大名誉教授の畑村洋太郎先生。2000年に出た著書「失敗学のすすめ」は当時,話題になりました。「失敗学」とは,起こってしまった失敗に対し、責任追及に終始せず原因を究明し今後に活かしていく取り組みです。特に,同じ過ちを繰り返さないための対策やノウハウをどう社会に広めるか?を重視しています。

2005年に「失敗知識データベース」は当初,独立行政法人科学技術振興機構(JST)のプロジェクトとして立ち上がりました。その後2011年3月に事業仕分けによって「規模縮減」とされ,JSTによる運営は終了。2011年4月から畑村先生のサイト「畑村創造工学研究所」が引き取り,その後2017年に「NPO法人失敗学会」に移管され現在に至ります。

いくつか思うことがありますが,一つ目は「事故事例研究」や「ヒヤリハット研究」は「失敗学」のNPO・自然学校向けアレンジ版といった感じだなあ,ということ。いかに無理なく,日常の活動や業務の中に「失敗から学ぶ仕組みを織り込んでいくか」が肝心だと思っています。

二つ目は,いろんな分野を横断した大規模な失敗事例のデータベースは(有益だけれど)構築が大変だろうな,ということ。状況や組織文化などが様々であることに加え,営業秘密や個人情報の関係もあり,十分な情報を集めて記載することは相応のコストがかかるものだと思います。

三つ目は余談かもしれませんが,畑村先生は2011年6月から2012年9月,福島原発の事故調査・検討委員会の委員長を務めました(政府事故調の方)。このコラムを書いているのは震災から8年となる2019.03.11.。福島第一原発事故は「失敗知識データベース」のどの事例よりも大きな被害と影響をもたらしました。その教訓が今後に活かされることを願っています。

「失敗知識データベース」. http://www.shippai.org/fkd/index.php(2019.03.11.閲覧)
畑村創造工学研究所. http://sozogaku.com/hatamura/index.php(2019.03.11.閲覧)
特定非営利活動法人失敗学会. http://www.shippai.org/shippai/html/index.php(2019.03.11.閲覧)