何人かで活動する現場では,想定されるリスクや注意事項を共有することが重要。その意味では「話し方」や「伝え方」も安全管理の技術の一つです。
先日,建設分野の安全教育ビデオを見る機会がありました。場面は建設現場の朝礼。現場監督が作業員に対して,作業上の危険や注意を伝える時の「良い例」や「悪い例」を役者さんが演じたものです。建設現場の朝礼での「伝え方」では,次のようなポイントがありました。

(1)「言ったから伝わる」は間違い。
「ベラベラ早口で一方的にしゃべる」「メモから目を離さず読みあげるだけ」「しゃべる順番が前後したりバラバラになったりでわかりにくい」。これでは,言ったけど伝わってない,言いっぱなしの自己満足です。
大切なのは,ゆっくり,具体的に言うこと。担当等があれば名前を呼びかけつつ伝えること。作業員の表情を見たり返事を待ったりして,伝わったかどうかの確認をすることです。
例:「○○さん,○○をお願いします。先月△△があったので,□□に気をつけてください。」

(2)マンネリになると伝わりにくい。
同じ作業が続くこともあります。連日同じ注意事項だと「いつも通りです」的な雰囲気になり,危機感や積極性が薄れてしまいがち。マンネリ打破のためには,伝え方やしゃべり方を変えるのも一つの手かもしれませんが,考えてみれば現場の状況が全く同じということはあり得ません。作業員の入れ替わり,作業の進捗,天候や気温の変化,作業者の体調,週のはじめと終わりなど,現場を取り巻く状況は日々変化しています。むしろ大事なのは現場を巡り,作業者の様子を見て日々の変化を捉えること。その上で,その日に必要な指示内容を伝えることだと言えます。

(3)「この人の言うことは聞きたくない」。
人間関係は大きく影響します。現場監督と作業員の個人的な関係性から「この人の言うことは聞きたくない」となることも起こります。そうなると,どんなに大切な内容であっても伝わりません。怒鳴ったり,頭ごなしに否定したりすることで関係が悪くなることもあるでしょうが,そうでなくても小さなことの積み重ねで人間関係がこじれることもあります。
「あいさつをすること」「他愛もない雑談をすること」「職種でなく名前で呼びかけること」などで,日頃からよい関係を作っておきたいものです。

ということで,建設分野の安全教育ビデオから学んだ「伝え方」のポイントでしたが,「作業員」を「参加者」に変えたら,自然観察のガイドやインタープリテーションにも共通することだな,と思います。安全な場づくりの基本はコミュニケーションかもしれません。

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