第12回 時間感覚 (2019年5月)

かたつむりが好きな私は、よく「おっとりしてる」などと言われます。
それは、かたつむりと私の共通点のひとつです。
私がかたつむりに似てきたのかもしれませんし、そんな私だから、
かたつむりを好きでいるのかもしれません。

かたつむりの時間感覚って、どうなっているのでしょう。
確かに、かたつむりはゆっくりと動くもの。
スローライフの象徴のような存在です。
かたつむりの時間感覚は、やっぱりゆっくりしているのでしょうか。

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時間感覚に関係があると考えられるのが、生き物それぞれの「時間分解能力」です。

たとえば、私たちが日常的に使っている蛍光灯の光。
蛍光灯は実際には高速で点滅していますが、それを点滅していると
感じることはありません。 これは、蛍光灯の光の点滅のスピードが
あまりに早すぎて、人間の 時間分解能を上回っているから。
一方、蛍光灯の点滅のスピードをゆっくりにしていくと、
だんだんちらちらする点滅が気になるはずです。
点滅するスピードが人間の時間分解能力より小さいと、
点滅が気になってしまうのです。

時間分解能は、生物種によって異なります。
ユクスキュル(1864ー1944)というドイツの生物学者の実験によれば、
かたつむりは1秒間に4回の振動までは感じとることができるけれど、
それ以上に細かい振動になると、振動を感じることができないそうです。
一方、たとえばミツバチは、人間よりも5倍ほど高い時間分解能力を
持っているとされています。
人間にはわからない細かい翅の動きなども、感じ取れるのかもしれません。

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時間分解能力が高い生き物ほど、周囲のものの動きをゆっくりと
感じられ、時間分解能力が低い生き物ほど、周囲のものの動きが
早く感じられるということが想像できます。
たとえば、時間分解能が低い生き物では、周囲のものが素早く
動いているように感じるというわけ。
ハエを叩こうとしてもすぐに逃げられてしまうのは、
ハエの時間分解能力が人間よりとても高いから。

もしこれが正しければ、かたつむりは周囲のものに対して
「ずいぶん速く動くなぁ」と感じているかもしれません。

とはいえ、人間がほかの生きものになることはできないので、
想像でしかありません。

かたつむりも急ぐことがあります。
危険を感じたときなどは、すばやく引っ込むのみならず、
移動が速くなることもあります。
そんなときは、自分がゆっくりだなんて、ちっとも思って
いないでしょう。
「あー、あせったー! 急いだから、ギリギリセーフだった!」
なんて瞬間もあるかもしれません。

きっと人間だって一人ひとり一人時間感覚が違いますし、
あるいは一人の人間でも状況によって、時間感覚が異なります。

私はきっと、人間の中ではゆっくりな方です。
そして、私自身も、慌てることもあるし、のんびり過ごすこともあります。
楽しい時間はあっという間に過ぎるし、苦痛なことはいつまでたっても
時間が過ぎないように感じます。

多様な生き物たちが、多様な人たちが、それぞれの異なる時間を感じながら、
今の瞬間を重ねている。
そう思うと、人との出会いも、生き物との出合いも大切にしたいなぁと思います。