数年前、田仲義弘さんの『狩蜂生態図鑑―ハンティング行動』を読んでから、ずっと気になっていたハチに出会うことができました。
俗にいう”ゴキブリをゾンビ化して操るハチ”、サトセナガアナバチです。
この衝撃的な生態、世間では数年前に映画化された漫画『テラフォーマーズ』に登場した、海外に生息する
エメラルドゴキブリバチで知られていることと思います。
実は同じ行動をするハチが日本にもいるんです。名前だけ見ると、日本の虫だから地味なんでしょ?と想像しちゃうかもしれませんが、サトセナガアナバチだっていうなればサファイアのように青く輝く美しいハチです。
私がまだOLをしていたころ、中央区にある某営業先の駐輪場で、このハチの後脚と腹部だけが転がっていたのを発見しました。拾い上げて日の光にかざすと、腹部は金属のようにピカピカ光り、鮮やかな赤い腿節とのコントラストにグッと心を掴まれました。いつか生きている個体を見つけてやるぞと思っていたら、10月に仕事で訪れたとある集会所で、当にゴキブリ(クロゴキブリ幼虫)を引っ張っている最中の姿が目に飛び込んできたのでした。

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普段、私が虫を探すとき、虫モードに切り替えてサーチするのですが、今回は仕事中だったため本当に不意打ちで、一瞬目の前のことが理解できていませんでした。
一拍置いて「えーーーーーーっ?!!」と大声をあげた、はず。あまりに興奮してよく覚えていませんが、居合わせたスタッフが若干ひきながら撮影する私を撮っていてくれました。感謝です。
(あ、これは仕事中ですが、移動前の片付け時間的なやつですので、あしからずご容赦ください)

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この後、夫へ連絡し、翌朝から撮影。このフットワーク軽い感じが夫婦で共通の趣味を持っていることの良さですね。生活の中で、大体”虫”に関することは順位高めです。
その後も何日か通い、結果200を超える動画ファイルができあがりました。実はここからが動画作品の大変なところ。どんなシーンがどんな画角で入っていて、ピントが合っているのは何秒から何秒の間なのかというリストを作らなければならないのです。その後、カットして繋いで色を合わせて、字幕をつけるのか動画で説明するのかなど試行錯誤を重ね、8時間収録したものが数分にまとまります。いやー
ということで、今回の撮影ではメスがゴキブリを運ぶところや、巣に連れて行ってフタをするところ、オスがちょっかいをかけてくるところなどのシーンが撮れていますが、運ぶところのみに絞ってまとめました。

今回、合計3日ほど粘って撮影しましたが、狩りをする大事なシーンが撮れませんでした。これは予想ですが、落ち葉を分けると丁度良いサイズのゴキブリの幼虫たちがわさわさ出てくるので、狩りはてっきりそこで行われるものと思いこんで、地面付近を注視していました。
ところが、撮影したハチは樹上から現れたのです。撮影中、私が夫に話しかけようと身を動かした時、間に丁度良いサイズのゴキブリの幼虫が空から落ちてきたこともありました。今思うと、あれはハチに追い詰められたゴキブリだったのではないでしょうか。来年は、樹上に目を見張ってリベンジしたいと思います。


しかし、3日粘って一度出会えたこんなシーンに、探しもせずに出会ってしまう私って”もってる人”です。虫活動に限ってですが。