市民の板書術(28)「下絵や素描のように」2019.11.

最近「ファシグラとグラレコとの違いはなんですか?」と聞かれることがありました。

ファシリテーショングラフィックとグラフィックレコーディングは,人前に立って発言をリアルタイムに書いていくという点では似ています。違いを挙げるとすれば,その場で出席者をファシリテートすることを重視するか,後で記録として役立つことを重視するかという点です。

ファシリテーショングラフィックをする時,つまり出席者をファシリテートする板書をしたい時に意識するとよい点がいくつかあって,そのうちの1つは下絵や素描のように書くことです。完成品を作ろうとする気持ちよりは,本番前のラフスケッチや準備メモを書く気持ちでいる方がうまくいくと思います。

下絵や素描を表す美術用語にも「デッサン」や「エスキス」「クロッキー」などいろいろありますが,それぞれに意味合いが違います。

 デッサン___静物などを対象に,時間をかけて,そのテクスチャーや立体感を表現する
 エスキス___風景や人物などを対象に,比較的短時間で,その構成やバランスを表現する
 クロッキー___人体などを対象に,数分程度のごく短時間で,大まかな形や動きを表現する

ファシリテーショングラフィックも,話し合いの内容や雰囲気によって書き方は変わります。

一つの課題を掘り下げながら丁寧に紐解いていくような話し合い,もしくはケースワークなど個人の経験や思いなどを傾聴しながら行う板書は「デッサン」的な板書だな,と感じます。対象をよく観察しながら繰り返し鉛筆を入れたり,消しゴムで消したりしながら丁寧に描く様子と似ています。

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いろんな話題や要素が飛び交う話し合いの板書は「エスキス」的です。あの意見,この意見を書きとめながら矢印で結んで関係付けたり,グループ分けしたりします。風景画や地図,建築物のパース図のように,たくさんの要素の配置やバランスが見渡せるように全体像を描き出します。

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いちばんスピード感があって,その場,その時の発想を書きとめるのは「クロッキー」的な板書だと思います。あふれ出るアイデアを消えてしまう前に素早く書きとめたり,盛り上がる出席者をスピードダウンさせず,必死で追いついていくような板書です。

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これらの三つ,雰囲気に違いはあれど大切なのは「間違えたら修正すればいい」「くりかえし書いていい」「書いてるうちに全体像が見えてくる」「全体が見えてきたら大事なところがわかってくる」「その上で大事なところを強調したり,際立たせたりしてもいい」といったことです。

反対に「間違えないように慎重になる」「一発で書こうとする」「最初から全体の配置を決めておく」「大事なことだけを書こうとする」「あちこちに強調や装飾を入れる」というのは,ファシリテーショングラフィックとしては,うまくいきにくいんじゃないかと思います。

書いたホワイトボードや模造紙が完成品なのではなく,書いたことで活性化した「話し合い」やたどり着いた「結論」,やる気の高まった「出席者」,生まれた出席者同士の「関係性」が成果です。ファシリテーショングラフィックは,それにたどり着くための下準備みたいなものだと考えています。