市民の板書術(33)「ふりかえりの3種の板書」2020.06.

イベント終了後や団体の節目など,過去をふりかえる話し合いに向いた書き方があります。
いくつかタイプがありますが「KPT」「田の字法」「年表」の3種を並べてご紹介します。


<KPT(ケプト)>

以前,紹介したので簡単に。
数時間〜数日程度のイベントやプロジェクトのふりかえりに向いています。
線で区切った三つの枠に,それぞれ「K(Keep: よかったこと)」「P(Problem: 問題点)」「T(Try: 改善点)」を書き込んでいくやり方です。
ポイントは,現場の声や小さなヒヤリハットなどの記憶が薄れないうちに関係者で集まって出し合うこと。「よかった」もしくは「問題点」のどちらかに片寄らず意見を出す&アツいうちに次回に向けた改善点を出す,という優れた枠組みです。
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<田の字法>

こちらも既に紹介済みなので短めに。
数ヶ月〜数年間のプロジェクトや組織運営をふりかえり,今後の方針を話し合う場面に向いています。
2本線で十字に区切った四つの枠。左が「現在」,右が「未来」。上が「肯定的な意見」,下が「否定的な意見」です。

・まず左上の「現在×肯定的」の枠に,これまででよかったことや達成したこと。

・次に左下の「現在×否定的」の枠に,これまでで悪かったことやできなかったこと。

・続いて右下の「未来×否定的」の枠に,これからこれは避けたい,望まないこと。

・最後に右上の「未来×肯定的」の枠に,こうなりたいという将来像。

を書いていきます。それぞれ付箋に書いて出すのも効率的。
ポイントは順番で,ポジティブな成果を確認し,現状の課題や避けたい未来を共有した上で「ではこうしましょう!」という将来像を話す点。もちろん,話す順番は行ったり来たりしてもよいですが,現状の成果も課題も踏まえた上で「未来」を話すことができる点でとてもよい枠組みです。
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<年表>

さらに長期間,数年間以上のプロジェクトや組織運営をふりかえり,スタッフ間の共通認識を作ったりチームビルディングをするのに向いているのが年表です。
多少時間はかかります。おそらく1〜1時間半程度。メンバーやスタッフの入れ替わりがあったとか,組織や事業の目的があやふやになってきた時がそのタイミングです。
教室にあるような横長のホワイトボードを使ったり,模造紙を何枚か貼って横長のスペースを確保します。上部に年度や月を書いておき,それぞれの時期について「この頃の出来事や考えたことは?」と尋ねて書き加えます。印象的なシーンや名セリフ,出会った人物などが書き込まれても面白い。

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この時に大事なのが(板書全般にも言えることですが)「豊かに書こう!」ということ。
「その頃,○○イベントがあったね。あれはよくやったね!がんばった。」との発言を受けて「○○イベントを開催」とだけ書くのは味気ない。歴史の資料集のような年表を作ってもあまり意味はありません。発言の中に,その時の感情やふりかえっての感想が含まれていれば,ぜひそれを捉えたいところです。書き方の例としては「○○イベント,あれは頑張った!」とか「○○イベント,□□さんオツカレ!」ですが,まあ,それは現場の雰囲気やその人の話し方次第です。
先ほどの「その頃,○○イベントがあったね。あれはよくやったね!がんばった。」という発言に対して,感情や感想が表れている「よくやった」「がんばった」の部分をくり返して声に出しながら,発言者ご本人を向いたり他の参加者を見渡してもよいと思います。よくやった理由やがんばった内容の補足をいただけるかもしれません。

もう一つ大事なのが「なるべく多くの人に発言してもらう」です。
過去の話になるとどうしても代表や年長者,経験者がしゃべりまくり,新人や若手は遠慮してしまいます。それはたいへん面白くない場になるかもしれません。
単純に「みんなから話を聞きたい」と言ったり,一人ずつ順番に発言してもらうのもオーソドックスですがいい方法。新人や若手から話し始めてもらうのもよいと思います。その際は「この団体に興味を持ったのは何がきっかけ?」など答えられる問いにするのがよいと思います。
また,時間はかかりますが,代表や年長者に事前にヒアリングしておいて,主だった出来事はあらかじめ整理して年表に書き込んでおく手もあります。その上で,当時感じたことや,一部の人しか気づいてなかった小さな出来事などを書き加えていくイメージです。

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「歴史は歴史家がつくる」という言葉があります。いわゆる「歴史」は事実の羅列ではなく,ある歴史家が自分の視点で意図を持って構成した物語であるという意味だと解釈しています。
みんなでおしゃべりしながら年表をつくるのは,視点や思い出を持ち寄ってみんなで歴史をつくるような作業ですね。年表を埋めていきながら「ああ,一緒にやってきたんだなあ」とか「いや,言えなかったけど俺もそう感じてたんだよ」とか「知らなかったけど苦労させたねえ」とか…。

そんな話し合いは,組織の目的をあらためて確認したり,過去のモヤモヤを解きほぐすきっかけになったりします。頻繁に行う話し合いではありませんが,組織や事業の節目に行う長いスパンのふりかえりとして効果的です。