もうずいぶん前のことですが、私の友人夫婦がスイス国内で著名な女流作家の自宅に
同居していた時期がありました。その時期に私がスイスを訪問し、彼ら同様に短期間
ではありましたが同居した時の話をしたいと思います。

家主でもある女流作家の方は手足が不自由で人のサポートを受けないと生活すること
が困難であり、近所のボランティアの人や同居している人たちで日々支援をしています。
ここでは、支援している人たちが若い世代の方ばかりだったこと、さらにはその人たち
がディスカッションをしてよりよい支援の仕方を模索していました。私の経験上、この
ような光景を目にすることが初めてだったため、とても深く感動したことを今でも鮮明
に覚えています。

聞くところによるとこのようなケースはスイス国内でよくあるとのことでした。スイス
では社会全体がいたわりの心をもっているのかもしれません。 日本にももっといたわり
の心、思いやりの心が社会全体に浸透していけば、ステキな社会になっていくのではと
思っています。そのためには私自身、何をすべきなのか、しっかりとしたヴィジョンを
もてるよう日々を過ごしていきたいと考えています。これは私にとって大きな課題の一つ
です。

今回を持ちまして、一身上の都合により、一旦、グリーンシティ福岡をはなれることとなり、
コラム「いろいろなコミュニティ」を終了させていただきます。
ご愛読してくださった皆様方、ありがとうございました。

第3回「スイスのこと」

スイスは歴史的背景や地理的条件などによりヨーロッパの近隣諸国にくらべ強固なコミュニティを多く持つといわれてます。そのスイスについて少し話をしたいと思います。 

スイスの面積はほぼ九州と同じで東西にアルプス山脈が横断しており、北にはドイツ、西にはフランス、南にはイタリア、東にはオーストリアがあり、西ヨーロッパの中心に位置します。歴史的経緯として、山岳地帯が多いスイスでは各地域に小国が存在していました。それらの小国が周辺の大国から侵略の脅威にさらされており、その脅威がそれらの小国を緩やかに結びつけ、現在の連邦国家スイスを形成したといわれています。さらには、このような背景や条件等により国民間の強いつながりが同様に形成されていったともいわれています。上記のことが周辺諸国にくらべ強固なコミュニティを持つといわれる所以なのかもしれません。 

次にスイスの魅力について話をしたいと思います。一般的には大自然、アルプス山脈などにある名峰の山々といったイメージを思い浮かべる方が多いと思います。ですが、私の場合はちょっと違っており、自然というよりも文化だと思います。スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語と4つあります。このうちロマンシュ語はスイス南東部の限られた地域のみで使用されているだけですが、残りの3つは言語圏として地域に分かれています。このドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏の各地域にはそれぞれの文化があり、言葉・食・習慣・建物などに違いがあります。小さな国でありながら、3つの文化に触れることが出来るのは、この国の最大の魅力ではないだろうかと思います。 

私と友人とでアルプス山脈を越えてイタリア言語圏に行ったときのエピソードを紹介します。私の友人は、ドイツ言語圏の出身で日常会話はドイツ語です。第2言語としてフランス語もしくはイタリア語を選択するのですが、彼はフランス語を選択したためにイタリア語を話すことが出来ません。イタリア言語圏にあるカフェに行ったとき接客をする年配の女性となかなか会話が成立せず、互いに困っている場面を見ることがありました。同じ国内において会話が通じないことは現代の日本においてそうそうあることではないのでとても興味深いことだと思い、その様子を眺めていたことがります。歴史的背景から言語の違う小国のあつまりがスイスの国の形成につながり、その名残がこのような形で残っている。またコミュニティにおいても外国からの脅威がスイス国内に強固なコミュニティをつくる要因になり、現在もスイスの友人を通して知ることができる。いずれもスイス建国時に起因していることは、とても面白いことです。雄大な自然、多様性のある国、それがスイスなのでしょうね。 

まだまだスイスについて書くことはたくさんありますが、最後に私のおすすめスポットを紹介して終わりたいと思います。それはシュトックホルン(標高2190m)からの眺望です。東西を横断しているアルプス山脈を眺めることが出来ます。もしスイスに行ったときは足を運んでみてはいかがでしょうか?

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シュトックホルンからの眺望です

第2回「スイスの農園」 2019年3月

タイトルは「スイスの農園」となっていますが、スイスの農園(農業)を紹介するのではなく、今回もスイスのコミュニティのお話しです。 

 

友人たちとの夕食のとき「明日は野菜を収穫しにいくから手伝ってくれ」と言われました。今まで農園をやっていると聞いたことがないのに、またどのような経緯で農園を始めることになったのだろうと思いましたが、ひとまず承諾しました。その後、詳しい話は聞かなかったので、実際何の野菜を収穫するのか?どんな作業をするのか?全く知らずに翌朝、車に乗って近隣の農園にいきました。農園の入口から見えるものは古い家屋、牛舎や馬小屋といった昔ながらのスイスの建物です。その奥にはヨーロッパの田園が広がっていてその風景は油彩の絵画のようでした。さらには、その日は晴天で青い空が頭上いっぱいに広がっており、ほどよい風と空気がとてもおいしく、すがすがしい気持ちになったことを記憶しています。 

男女7〜8名ほどが集まり、鍬をもって畑を耕します。私も鍬をもって額に汗をかきながら畑を耕しました。結構な重労働にもかかわらず、そこに集まった人たちの「笑顔」がとても素敵でした。その場の雰囲気や笑顔から、みんな心からこの集まりを楽しんでいることが伝わってきました。収穫作業ではなく、カボチャの植え付け作業でしたが、帰りには手のひらにいくつかの豆を収穫することができました。(笑 

後ほどこの農園のことを聞くと10の家族で農家の畑の一部を借り、収穫物や作業をシェアしているとのことでした。近年、日本でも食にたいする関心が高くなっていますが、ここスイスでも同様です。自分たちで安心安全の野菜作りをしたいとの思いからこのコミュニティを始めたそうです。また互いに仕事の合間に農作業をするので、みんなで楽しくやろうということになったそうです。上記でも述べていますが、素敵な笑顔がたくさんあったのはこのことが深く関係しているようです。 

このように人が集まり物事(コミュニティ)を継続して行っていくには、根底の部分で「楽しむこと」を共有することが大切なことではないだろうかと感じました。

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かぼちゃの苗を植えるために、畑を耕してる様子

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かぼちゃの苗

スイスの子どもたち 2019年2月

今年1月から勤務しています、藤木といいます。よろしくお願いします。 

私は今まで国内外でコミュニティに参加してきました。コラムでは、それらのコミュニティを私なりの視点で紹介していきたいと思います。 

 

1回 「スイスの子どもたち」 

私の友人たちがこれまでとは違ったフリースクールをはじめました。これはスイス国内でもはじめてのことだそうです。コミュニティではなくて、フリースクール??と思われる方もいらっしゃると思いますが、これは5世帯の家族で構成されるコミュニティが子どもたちのために考案し実際に運営をしている話です。 

まずは簡単にスイスの教育事情について話をします。小学生以下の子どもたちの全体の8割は通常の学校に通っています。残り2割はフリースクールに通っており、この子どもたちは学年末のテストを受け進級できる仕組みになっています。2割もの子どもたちがフリースクールに通っていることは、日本の教育制度では考えられないことです。これはスイスと日本の教育に対する考え方の違いなのかもしれません。 

このコミュニティが考案したフリースクールとは、5世帯の親が月曜日から金曜日まで曜日ごとに分担し、子どもたちを教える先生になるというものです。授業の内容は親の専門分野などが主で、とくに決まりはないようです。とてもユニークだと思ったのが最初に「これから○○○をしますよ!」と説明したあと、参加の有無を子どもたちに聞きます。関心のある子どもは参加し、関心のない子どもは参加しません。参加しない子どもはその時間、自習をします。子どもたちの自主性を重んじているだけではなく、関心のないものを無理におしつけてもその子にとって、あまり意味をなさいないということなのでしょう。 

私も2回ほど先生をしました。日本について話をしたり習字や判子作り、折り紙などをおしえました。特にびっくりしたのは子どもたちのほとんどが、日本のマンガやアニメといったサブカルチャーに強い関心を持っていたことです。実際にスイスのテレビでも日本のアニメが放送されており、彼らにも強い影響を及ぼしているようでした。アニメを通じて、日本に親近感をもってもらえるのはとても嬉しいことです。 

この5世帯の家族から構成される小さなコミュニティですが、互いの共通認識や協働意識のもとスイス国内でもはじめてとされる試みをやってしまう、もちろんスイスの国民性もあるのでしょうが、このコミュニティの持つ力には驚かされました。 

最後に、私の友人が「ストレスのある環境で学習するより、ない環境で子どもたちを学ばせてあげたい」といった言葉がとても印象的でした。

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これは判子を作るために、まず自分の名前を日本語(カナ)で書いてるところです

 

   

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         習字の筆でお絵かき