「かたつむりとなめくじって、どう違うの?」
人からよく聞かれる質問の1つです。
簡単に答えるとすれば、かたつむりもなめくじも同じ仲間で、単に
殻をもっているかいないかの違いです。
ただ、詳しく説明するとなると、事情は複雑です。
そもそも「かたつむり」自体、生物学的な定義のある言葉ではありません。
軟体動物(貝のなかま)のうち、陸上に棲むものを「かたつむり」と
呼ぶことが多いのですが、それだけだとあまりに広すぎると「柄眼目」という
一定の分類群だけを「かたつむり」と呼ぶという人もいます。
ただし、これらの定義にも問題があります。
これらの定義だと、「なめくじ」も「かたつむり」に含まれてしまうのです。
一般的に「なめくじ」は「かたつむり」に含まれませんが、生物の系統としては
「なめくじ」は「かたつむり」の仲間の一部であり、さらに「かたつむり」の
仲間のたくさんの枝分かれのうち、いくつかバラバラに「なめくじ」の仲間が
いるのです。
「うーん、ややこしい! よくわからん!」

まぁ、そうですよね。
つまりは、かたつむりの長い進化の歴史の中で、一度だけでなく、
何度か貝殻をなくす方向への変化が起きているということ。
このように貝殻をなくすという進化は、実は貝類としては珍しいことでは
ありません。専門的には「ナメクジ化」と呼ぶ、しばしば起こる現象です。
例えば、イカやタコはオウム貝の仲間がナメクジ化した生物。同様に、
アメフラシやウミウシ、クリオネも巻き貝の仲間がナメクジ化した生物です。
「ナメクジ化」にはいくつかのメリットがあります。
貝殻が不要なので、カルシウムの摂取量が少なく済み、さらに身体が
軽くなります。つまり、省エネ、低コスト。大きな殻は移動の障害にも
なりがちですが、ナメクジ化すると狭い隙間にも入り込めるようになります。
かたつむりにとっては大事な殻も、思い切ってなくしてしまうことで
大きなメリットがあるなんて、生き物って不思議です。
もしかしたら人も、ナメクジ化すると何かメリットがあるのかもしれません。
ん? 人にとっての「殻」って、いったいなんでしょう。
家? お金? 肩書き? それとも…?