安全管理のコラム 第25回「着衣着火とSDR」 2018年1月

冬は焚き火によい季節。安全に気をつけて楽しみたいですね。

火を使う体験では着衣着火に気をつける必要があります。
着衣着火とは,着ている衣服に火が着いて燃え広がり火傷を負う事故のこと。40代以上の方は「おばあちゃんアイドル」として人気だった浦辺粂子(うらべ・くめこ)さんのことを思い出すかもしれません。朝,お湯を沸かそうとコンロに火をつけた際,和服の袂に火が移って火傷を負い,それが原因で亡くなられました。1989年のことです。また数学者でテレビにもよく出ていた森毅(もり・つよし)さんも,2009年にご自宅で料理中,着衣着火により火傷を負いました。その後の入院が長く続く中で亡くなられたそうです。


このように着衣着火は重度の火傷や死亡事故にもつながります。自宅で調理中の被災が多いようですが,屋外での焚き火も風にあおられたり誤って大きな火を作ってしまうことで着衣着火のリスクは高まります。

予防するには燃えにくい素材&作りの衣服を着ることが大事。起毛しているネルやフリースは空気を含んでいて火が広がりやすいので火を扱うには不向きです。袖や裾が広がっているものもうっかり火のそばに近づけてしまうことがあるので用心を。例えば,袖にファー素材がついた服で焚き火に薪をくべようとする人がいたら止めましょう,ということです(いないか…いや,いるかも?)。

万が一,衣服に火が移った時,あわてて走ってしまうとかえって風を起こして火が強くなります。その点でアメリカの子ども向け消防プログラムの一つ「Stop Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)」は参考になります。まず,走らずに「止まれ」。そして「地面に倒れろ」。燃えているところを地面に押し付け,その上で「左右に転がれ」。顔を両手で覆って守りながら,衣服に着いた火を窒息消火させます。

倒れこむのは顔に火が上ってくることを防ぐ点でも意味があるでしょう。検証実験も行われていますが,回転速度は関係なく,体をなるべく地面と接触させるようにして転がるのが有効とのことです。

とは言えSDRはあくまで万が一の対応。そんな状況を起こさないことの方が大事です。
 ・風速計で風の強さを把握する
 ・周囲の可燃物から十分な距離をとる
 ・参加者に衣服についての情報提供や注意喚起を行う
 ・消火バケツを用意する
 ・着火剤としての落ち葉や紙類を入れすぎない
 ・火を必要以上に大きくしない
などを行いながら,焚き火を楽しみたいものです。

参考文献:
 ウィキペディア. https://ja.wikipedia.org/wiki/浦辺粂子(2017.12.31.閲覧)
 ウィキペディア. https://ja.wikipedia.org/wiki/森毅(2017.12.31.閲覧)
 埼玉西部消防組合「着衣着火をご存知ですか?」. http://www.saisei119.jp/19/yobou/000867.html(2017.12.31.閲覧)
 金子公平ほか(2013)ストップ、ドロップ アンド ロールに関する検証. 消防技術安全所報50:122-128.
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