私は物心ついた頃には、かたつむりが大好きで、今でも「かたつむり見習い」を名乗るほど。
「どうしてかたつむりが好きなの?」と聞かれることがよくあります。

以前は「それはこうこうこういうわけで」と理由を説明していたのですが、説明したあとでやっぱり違ったかも…と後悔するばかり。
最近ではもう「理由はわからないんです」と、素直に答えるようにしています。

どうして好きなのかはともかく、かたつむりが魅力的なおもしろい生物であることは確かです。

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何より、かたつむりのことを知ると、世界が違って見えてきます。

かたつむりは目の良い生きものではありません。
皮膚感覚で環境情報の多くを知覚し、大きなツノ2本と、小さなツノ2本で触れて、光を感じて、匂いや味を感じます。
時間感覚も、人よりずっとゆっくり。
オスとメスの区別はなく、雌雄同体の生きもの。

人とはあまりに違う生きもの。
彼らはどんなふうにこの世界を見て、感じているのでしょうか。

かたつむりを見ていると、ついついそんなことを考え始めてしまいます。


かたつむりは日本におよそ800種というほど、たくさんの種類がいます。
ご存知の通り、ゆっくりと這って歩むことしかできないため、ちょっとした小川も越えることができません。
そのため、集団が分断されやすく、多様な種類に分かれやすいと考えられています。

小川も越えられないくらいなので、人の暮らしに影響を受けやすいことも確かです。
たとえば、道路。
横断歩道で信号が青になるのを確認して進むなんてことはもちろんできないですし、車の往来に気づいて引き返すことさえもできません。
もっとも、信号が青になるのがわかったとしても、赤になる前に渡りきれるとは思えませんが……。


自分の知っているつもりの世界に、自分とは違う見方があるということを、私たちはしばしば忘れがちです。
でも、かたつむりの見え方を想像すると、世界の見え方が1つではないと思い出します。

好きな生きものがいると、世界が豊かになるように思います。