森林ボランティア限定の話題かもしれませんが,枯れ木伐採の注意点をまとめました。

いわゆる里山的な森の手入れは昭和30年代くらいまで普通に行われていました。その後,電気・ガスや化学肥料の普及に伴い,次第に管理放棄されていきます。現在,都市緑地や特別緑地保全地区になっているまちなかの森は,だいたい放棄されて半世紀ほど経った「かつての里山」と言えます。そんな「かつての里山」の多くは現在,枯れ木が非常に多い状態です。放棄されて数十年経って,常緑樹に負けたハゼノキやヤマザクラなどの落葉樹,寿命が短い傾向にある亜高木のクロキ,込み合いすぎてヒョロヒョロになった高木の常緑樹などが次々に枯れていく段階に入ったからです。

遊歩道や園路が通った緑地ではそんな枯れ木が事故の原因になることも考えられます。森林ボランティアでも枯れ木を伐採することがあります。通常の伐採とも重複しますが,以下のようなポイントには特別に注意したいところです(ノコギリなどの手道具での作業を想定しています)。

1)近づく前に,上方の枯れ具合をチェック。
全体的に枯れていて倒れそうな状態なのか,一部の枝が枯れて落ちてきそうなのか確認します。もしかすると,折れた枯れ枝が途中で引っかかって宙ぶらりんになっていたりするかもしれません。

2)足元の落ち枝の片付け。落ち枝で足元が散らかっていることも多いです。とっさの時に足にひっかけたりするかもしれませんし,伐倒した木に当たって跳ね上がったり飛び散ったりするかもしれません。事前の片付け,大事です。

3)全方向で樹高以上の距離,退避する。枯れ木は思いがけない方向に倒れることがあります。伐倒の担当者以外で見学やサポートを行う人は,倒そうと思っている方向からだけでなく360°全ての方向で樹高以上の距離をとって退避します。

4)伐倒のきっかけはロープで与える。伐倒の瞬間までノコギリを引いているのはマズイ。枯れ木は倒れる時の加速度で枝や幹が折れます。特に幹が「く」の字に折れて根元に落ちてきた場合が危険です。加えて,地面に倒れて枝が飛び散ることも多いため,伐倒時に周囲に人がいないようにすることが原則です。そのために,伐倒の担当者は慎重に受け口・追い口を作りつつ,樹冠が動きそうになったら速やかに退避します。退避を確認した上で,事前に張っておいたロープを引き安全な距離から伐倒のきっかけを与えます。引いても倒れないようなら,ロープを緩めた上で再度,慎重に追い口を進めて,退避とロープの牽引を繰り返します。このため,事前のロープ設置は不可欠です。

5)伐採中は常に上を確認。ノコギリの振動で枝や幹が折れる場合があります。樹冠が動きそうかどうかを確認する必要もあるので,伐倒の担当者は2,3回ノコギリを引いては上を見る,みたいな感じになると思います。もう一人が安全係として離れた場所から木の全体を見ておき「大きく揺れる枝がある」とか「樹冠が動き始めた」などの注意喚起をするのがよいと思います。ノコギリなど手道具での作業は大変ですが,お互いに声を掛けあえるという最大のメリットを活かしましょう。

6)ツルがほとんど機能しないことがある。もともと枯れ木は材に粘り気ががなく「ボキッ」「ボソッ」という感じに折れてしまいます。さらに部分的にグズグズに腐朽が入っていることもあります。通常の伐採は,受け口・追い口で切り残した「ツル」が蝶番のような役割を果たして,伐倒方向とスピードをコントロールするという考えですが,これがほとんど機能しないかもしれません。そのため,上記の360°退避,ロープで伐倒,常に上を確認が重要となります。

7)大風の後,雨の後の注意。
台風などの後,枯れ枝がよく折れています。途中で引っかかっていることもあります。また,腐朽が入ってグズグズになった箇所は雨が染み込みやすいので,雨が降った後は枯れ枝は水を含んで自重で落ちやすくなっています。大風や雨の後は作業前のチェックを念入りにしたいところです。


と,いろいろ書きましたが結局は「無理しない」のが一番。「枯れ木は通常の伐採の倍は危ない」と考えて,自分たちの手に負えない作業はやらないという判断が森林ボランティアにはもっとも大切だと思います。

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