第15回 赤ちゃんはかわいい(2019年8月)

赤ちゃんはかわいいです。

我が子となればなおさらですが、一方で人間の赤ちゃんに限らず、猫や犬、あるいはゾウやキリンでも、カメでもヘビでさえも、赤ちゃんはかわいいと感じます。

動物行動学者のコンラート・ローレンツは、1943年にベビースキーマ(Kindchenschema)という概念を提唱しました。ベビースキーマとは、人間の赤ちゃんや幼い動物のもっている、「かわいい」と感じさせる身体的な特徴です。ベビースキーマをもつものはかわいらしく、私たちはつい攻撃を控え、接近して、養育したり、保護したりしたくなってしまうというのです。


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さてここで、強烈にかわいい、赤ちゃんかたつむりのことを考えてみましょう。ベビースキーマとされる要素は、次のようなものです。

1.身体に対して大きな頭
2.前に張りだした広いおでこ
3.顔の中央よりやや下に大きな目がある
4.手足が短くて太い
5.全体に丸みがある
6.体表面がやわらかい
7.ほおがふっくらしている

赤ちゃんかたつむりには、ベビースキーマが当てはまるでしょうか。当てはまるものもあるにはありますが……、もはや「おでこはどこ?」「ほおはどこ?」「頭はどこまで?」「顔はどこまで?」というレベルです……。

さらには、一般に「気持ち悪い」とされるナメクジでさえ、赤ちゃんはかわいいのです。(ですよね?)

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しかし、かたつむりやナメクジの子が、人間からかわいく見えるように進化してもさほど意味はありません。子育てをしないナメクジやかたつむりが、彼らにとってかわいくある必要もないです。よっぽど「ナメクジの子が可愛いから駆除をやめる」という人間が続出していれば別ですが、そんな話は聞いたことがありません。
それでも、赤ちゃんはかわいいと感じてしまうなんて、生き物としてはどうにも不思議です。

うーん。人間って、変な生き物です。
(いや、そもそもナメクジまでかわいいと思うのは、私だけ……?!)