ヤマナメクジというナメクジをご存知ですか?
体長15〜20cmにもなる、茶色くて大きなナメクジです。福岡の住宅地では見かけませんが、山間部ではしばしば見かけます。

私は幼少期を大分県の竹田市、それも竹田市のさらに山手の荻町の奥地で過ごしました。そこでもっともなじみ深いナメクジが、ヤマナメクジでした。家の周辺でも見ましたし、きのこを好んで食べるので、栽培していたシイタケを収穫するときにも見かけました。

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一般に、ナメクジは塩をかけると「とける」と言われています。ナメクジを見つけて、実際に塩をかけたことがある人は多いでしょう。
やってみずにはいられないのが、子どもというもの。ご多分に漏れず、私たち兄弟も子ども時代にナメクジに塩をかけました。ただし、その相手は大きなヤマナメクジでした。
そのとき、ちっとも「とけた」という印象はありません。ただ、粘液を大量に出していたことは覚えています。実際、塩をかけても浸透圧の関係で細胞内の水分が体外に出てしまうだけで、「とける」わけではないのです。細胞が壊れてしまうので、水をかけても元には戻れず、死んでしまいます…。今から考えると、そのときのヤマナメクジは懸命に粘液で塩を洗い流していたのだろうなぁと思います。

……そんな黒歴史もあり、成長したヤマナメクジは大きく立派な風貌なので、今ではなんだか呼び捨てにすることさえおこがましく「ヤマナメクジ様」とあがめたくなります。

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一方、ヤマナメクジも幼い頃は見た目が違います。なんだか明太子のような姿。
糸島にある妻の畑には、このヤマナメクジのこどもがよくいます。実はこれがヤマナメクジのこどもだと知ったのは、つい数年前のこと。ナメクジの専門家の方に伺うまで知りませんでした。成長したヤマナメクジはよく見知っていたのに、こどもナメクジに見覚えがなかったのです。「ただのナメクジ」として、印象に残らなかったのかもしれません。一方、最近は畑でヤマナメクジのこどもをよく見るものの、畑でおとなのヤマナメクジを見ることはありません。


そのせいか、私はこれがヤマナメクジのこどもなのだということを知った今でも、なんだか腑に落ちていないようなところがあります。冒頭に「ヤマナメクジというナメクジをご存知ですか?」と書きましたが、この記事を読んで「ヤマナメクジを知っている」と言えるかどうかは微妙ですよね。自分で見たり、触れたり、やってみたり、実際に体験して初めて納得できることってたくさんあります。

そんなわけで、現在、このこどものヤマナメクジを飼育してみています。うっすらヤマナメクジっぽい模様が出てきて、今後の成長が楽しみです。