どちらも縦横に十字を引いた図なので見た目が似てるのですが,違いを意識して使えるといいです,というお話。

まず2×2マトリクス図は,対になる概念(「内・外」とか,「よい・わるい」とか)を2種類組み合わせた図です。2×2で計4つの枠ができるので,その中に意見を書き込んでいきます。Excelのセルが4つあってその中に入力するイメージ。
一方の2軸マップは,縦横に2つの評価軸が直行している図です。グラフのイメージなので場所によって意味が変わります。板書では直接書き込んでもいいですが,付箋に書いて貼り付けると位置を調整できて便利ですね。

01+.jpg

例えば,ある町にあまり有名ではないけれど由緒正しい神社がありました。ここを舞台に有志が観光客向けのガイドツアーを企画しようとしていると想定して,2×2マトリクス図と2軸マップをご紹介します。

2×2マトリクス図で代表的なのはマーケティングでお馴染みの「SWOT(スウォット)分析」です。新規事業を検討するために自団体の資源や世の中の状況を整理するような場面で使われます。
「内部・外部」と「よい・わるい」を組み合わせたマトリクス図で,「内部×よい」は自団体の強み(Strength),「内部×わるい」は自団体の弱み(Weakness),「外部×よい」は好機(Oportunity),「外部×わるい」は危機(Threat)。四つの頭文字が名前の由来です。
実際の会議では「私たちのグループの強みや特技は?」「反対に,私たちが苦手だったり弱かったりする部分は?」「世の中の状況で今,チャンスと思うことは?」「反対に,ちょっと悪い流れだなと思うことは?」と一つずつ意見を出していきます。
神社ガイドツアーでは,神社自体の歴史とアクセスの良さ(強み),広報の経験不足(弱み),メディアに取り上げられたことやウェブサービスの充実(好機),競合の存在(危機)などが挙げられています。「SWOT分析」は,自分たちのことも世の中のことも,有利なことも不利なことも,広い視野で事業を取り巻く状況を洗い出すための図です。

02swot+.jpg

一方の2軸マップでよく使われるのは「重要度×緊急性」の図。
右に行くほど重要度が高く,上に行くほど緊急性が高いグラフを書いて,その上に洗い出した「やること」を書き込んだり貼り付けたりしていきます。
ガイドツアーの実現に向けて「やること」を整理しようとしている場面。ツアーのタイトル決定,弁当の注文,計画書の作成,神社の使用許可,近隣へのあいさつ,広報サイトへの登録…やることを挙げていき付箋に1枚ずつ書きだします。その後,ホワイトボードないし模造紙に重要度×緊急度の2軸を引き,より重要度が高いものを右側に,より緊急性が高いものを上側に貼り付けていきます。この辺はあくまで感覚なので「このあたりですか?」と尋ねながら位置を調整していくとよいです。
こうやって「やること」が一覧できるようになると,なにより安心感が生まれます。その上で「重要で緊急のもの」から取り掛かろうという優先順位決めに役立ったり,「緊急でないけど重要なもの」を忘れず実行するためのスケジュール作成につながったりします。「重要度×緊急性」の2軸マップは,どれからやるか?どんな手順でやるか?を決めるための図です。

03kinkyu+.jpg

同じく2軸マップでもう一つ。「ペイオフマトリクス」は「効果×コスト」の2軸による図です。
何かの問題や課題に対して複数の対応策が考えられる時。例えば,神社のガイドツアーの参加者からの評判や満足度が思ったほど高くない時です。どんな対応策が考えられるか意見を出していきます。ガイドのトレーニング,写真サービス,広報内容の再検討,絵馬体験,地元のカフェを紹介…。いろんな対応策が考えられますが,それらを付箋に書き出し「期待される効果」と「コスト・難易度」の2軸を基準に貼り出していきます。こちらもどのくらいの効果が期待されるか?コストがかかるか?は意見が様々と思いますので,みんなとおしゃべりしながら貼る位置を調整することになります。
全て貼り出した上で,大きな効果が期待される対応策に頑張ってチャレンジするのか,コストが小さくて済む対応策からとりかかるのかは出席者の考え方次第。「ペイオフマトリクス」は,複数の候補の中から,有望で実現可能な選択肢を選び出すための図です。

04payoff+.jpg


最後に,事業をふりかえり,今後を考える場面で使う2×2マトリクス図「田の字法」です。
まちづくりプランナーの岩崎博さんの開発で,ファシリテータの青木将幸さんの著書「ミーティング・ファシリテーション入門」で詳しく紹介されています。
「現在・将来」と「肯定的な考え・否定的な考え」を組み合わせた図です。「よくやったな,成果だなと思うこと(現在×肯定的な考え)」→「イマイチだな,改善したいなと思うこと(現在×否定的な考え)」→「こうはなりたくないな,避けたいなと思うこと(将来×否定的な考え)」→「こうなりたい,目指したい未来(将来×肯定的な考え)」の順に意見を出していきます。
神社ガイドツアーを1年間で○回実施してみてのふりかえりの会議。「○○人の観光客が参加。地元商店からも喜ばれた。」→「40代以下の参加が少ない。経済的な効果はまだまだ。」→「くたびれてやめるのは避けたい。」→「ガイド本に載る,地元商店と連携したツアーにしたい。」といった内容が挙げられています。「田の字法」は現在の到達点をポジティブ・ネガティブ両面から確認し,一緒に目指したい将来像を話し合うのにぴったりです。

05tanoji+.jpg

見た目が似ていてごっちゃになりがちですが,
 2×2マトリクス図は,手早く広い視野で意見を洗い出したい時
 2軸マップは,たくさんある選択肢の仕分けや重み付けをしたい時
に向いています。
実際の会議ではそんなに使用頻度が高いわけではないのですが,いざというときに使えると便利です。