この1ヶ月間で,zoomなどを使ったオンライン会議が急速に普及してきました。
そんなモニター越しの会議でのファシリテーショングラフィックはどんなものになるでしょうか?

リアルの模造紙やホワイトボードをそのままカメラで写すのもアリです。マウスで描く画面上のホワイトボード機能とかもあったりします。
しかし,それらがダメなわけではありませんが,ちょっとしっくりこない気もします。
おそらくオンライン会議でのファシリテーショングラフィックは,今のところGoogleドキュメントがもっとも効果的です。

「ファシグラっぽくなーい!」と思う人もいそう(笑)。
マンダラ型やマインドマップのように四方八方に展開して書いたり,複数のマーカーの色で仕分けしたり,時にはイラストを入れたりというのがいわゆるファシグラのイメージです。
けれど,それらは対面型の話し合いで進化してきたスタイル。模造紙ないしホワイトボードの大きさやお互いの距離感だったり,一人がマーカーを握って手書きすることだったり,出席者全員が見えることが必要だったりといった制約下での技術です。

ファシグラで大切なのは「見た目」や「らしさ」よりも,出席者の発言をよく聴いて受けとめ,話し合いを進めること。オンライン会議では,オンライン会議の環境にふさわしい技術があると思います。私もまだまだ練習中ですが,現時点で考えている「オンライン会議でGoogleドキュメントを使ったファシリテーショングラフィック」をする時のポイントを挙げてみます。


(準備)オンライン会議アプリとGoogleドキュメントを開き共有する

zoomなどの出席者を表示したウインドウの横にGoogleドキュメントを開いて出席者全員に共有しておきます。私はモニターの左2/3をzoom,右1/3をGoogleドキュメントにしますが,この辺はそれぞれの好みかと。とにかく,出席者の声と表情に加えて,文字で話し合いの内容が確認できる環境を作っておきます。


1. 速さを活かしてどんどん書く

手書きではどうしても発言全部は書ききれません。一部を選んで抜き出すことになりますが,ここが板書でもっとも悩むポイントではないでしょうか。
当たり前のようですが,キーボードは手書きの数倍のスピードで文字を入力できます。これを活かさない手はありません。感嘆詞やくり返しの言葉なども含めて,発言者の言葉使いや感情,ニュアンスなどを書きとめることができます。タイプが速い人は発言全部を書くこともできるかもしれません。
オンライン会議は対面型の話し合いに比べて他の出席者の反応や手応えを感じにくいです。そんな中,発言が取捨選択や評価されたりせず,カジュアルに書き留められていく様子は「意見が届いている」という実感や手応えを生むと考えています。対面型の話し合いではグラフィッカが発言者の方を向いてうなずいたり,相槌を打ったりするのですが,オンライン会議のグラフィックではどんどん書いて「聞いていること」を示す,みたいなことかと思っています。


2)消したりコピペしながら整理する

とは言え,たくさん書くだけではまるでテキスト起こし原稿。文章が羅列されるだけのわかりにくい文書になります。いちいちスクロールして内容を追うのも大変。
発言者が本当に言いたかったことや何度も繰り返されること,合意した内容などを残しつつ,その他の部分を消していくことで,話し合いの流れや構図が見やすくなります。
また,この発言とあの発言似てるな,と思ったらコピペして並べたり,消してどちらか残したり。
ファシグラは,パッとひと目で全体像がわかる「一覧性」が大事です(その点,リアルの模造紙やホワイトボードは面積が広くていいなあ!)。議論の全体像が見渡せるような文書にできるとよいと思います。


3)立ち居振る舞いの代わりに「つぶやく」

オンライン会議では視線や表情,立ち居振る舞いが伝わりにくいです。
「おー」「うんうん」というつぶやきが「あなたの発言を聴いています」というメッセージになったり,「あ,ちょっとここ…」というつぶやきが「文章を修正します」の宣言になったり,「…て,こと?」というつぶやきが「こんな書き方で合ってる?」の確認になったりします。
その組織の文化や人間関係によって全く違う言葉になるかもしれませんが,オンライン会議では意識してつぶやくことで,意思疎通がスムーズになると感じます。


4)みんなで書ける

この点はちょっと面白いなと思っています。アナログでは出席者一人ひとりが付箋を書いて意見を集めるといったことをやりますが,Googleドキュメントでは編集権限を持った全員で一斉に書き込むことができます。ブレインストーミング的なアイデア出し,今後のタスクの洗い出し,ふりかえりKPTの表に記入するなど,いろんな場面が考えられます。ぜひやってみてください。


他にもいくつかあるのですが,ひとまずこのあたりで。
まだ練習中ですが,環境や道具が変わると新鮮で面白い。一方で,ファシリテーショングラフィックの本質ってなんだ?を考えるよい機会でもあります。