かたつむりはナメクジほどではありませんが、しばしば「きもちわるい」と言われてしまう生き物です。先日、小学生向けにかたつむりの話をしたときも、「きもちわるい」を連発する子がいました。そういうときにふと、思い出すことがあります。

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私は2011年から今年はじめまで、アトリエ兼自宅のガレージを平日夕方に開放して、近所の子どもがふらっと立ち寄れるようにしていました。特に自然豊かな環境でもなく、ごくありふれた住宅地で、遊びに来る子も、自然や生き物が好きな子とは限りませんでした。
そうした場で接する子たち(特に小学高学年以上の子)にかたつむりの話をすると、必ずと言っていいほど、「きもちわるい」という言葉が返ってきていました。
ヒナ、シオン、マリカという女の子3人と遊んでいたときも、そうでした。

ヒナ「なんか、かわいい絵を描いて」
私「じゃあ、かたつむりでいい?」
ヒナ、シオン、マリカ「えぇ〜!?」
ヒナ「さとちゃん(筆者)、ぜんぜん女の子の気持ちわかっとらん。女の子はそういうのキモいとー!」
シオン「そうそう。もっとあるでしょ、ねことか、くまとか」
マリカ「うん」
私「そうかなぁ。女の子でもかたつむり好きな子いるよ」
ヒナ「ぜったいいない!」
シオン「女の子がかわいいっていうのは、そういうのじゃない!」
そんなやりとりをしばらく続けていると、マリカが小さな声でつぶやきました。
マリカ「まぁ、私はけっこう好きだけど・・・」

饒舌なヒナとシオンの勢いはその後も止まりませんでしたが、次第にマリカは別の遊びを始めました。

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人が生き物と気軽にふれあえる場を作っている方々のことを、私は尊敬しています。それはただ、生き物に直に触れる体験が特別なものだから、というだけではありません。生き物に触れられる場そのものが、特別な力を持っているからです。
そうした場は、そこに居る人にとって、生き物が好きだと堂々と言える場所です。かたつむりの観察会に集まる人は、「かたつむりが好き」って堂々と言えるのです。男とか女とかどちらでもないとか関係ありません。
好きな生き物を好きと言っている人さえいれば、最初は「きもちわるい」と言っていた子どもさえ、次第に「意外とかわいい」と言い始めたりもします。

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異質な生き物に対する感じ方は人それぞれなので、かたつむりが「きもちわるい」と感じること自体が悪いわけではありません。でも、「かたつむり」=「きもちわるい」でなければならないという「空気」のようなものは、誰がつくってしまうのでしょう。人はどうして、そんな「空気」に合わせようとしてしまうのでしょう。
マリカはその後もよく、一人でガレージに遊びに来ていました。


※登場人物は仮名です。※写真は文中のエピソードとは無関係です。