第32回 マイマイカブリのジレンマ(2021年1月)

4歳の息子は生きものが大好きです。
あいにく、かたつむりにはあまり興味がないようで、興味を示すのはもっぱらスズメバチ、カブトムシ、クワガタムシ、ハヤブサ、チーター…。さらにはティラノサウルス、モササウルス、タルボサウルス、サーベルタイガーなど。最近はドラゴンのような想像上の生きものにも興味を持つようになりましたが、どれも強くて大きい、かっこいいものばかりです。


そんな息子が魅力を感じる生きものの1つに、マイマイカブリがいます。言わずと知れた、かたつむりの代表的な天敵です。

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※お尻から毒液を噴射するので注意

マイマイカブリはオサムシという地上を徘徊する甲虫のなかま。羽は退化していて、空を飛ぶことができません。多くのオサムシは昆虫やミミズを主食としますが、マイマイカブリの主食はかたつむりです。子ども時代の私にとって彼らはかたつむりを食べる憎き昆虫でしたが、金属光沢のある特徴的な造形は、色彩や形に多様な地域変異があって、ファンが多いとか。


そんなマイマイカブリは、大きく「巨頭型」と「狭頭型」という、2つのタイプに分けられます。巨頭型は頭部と胸部が横に肥大したタイプ。狭頭型は頭部と胸部が縦に伸張したタイプです。この2タイプは、かたつむりに対する攻撃戦術の違いがもたらしたと考えられています。巨頭型はアゴの力が強く、かたつむりの殻を壊すことが得意な一方、殻の開口部に頭を突っ込んで食べることは苦手。一方、狭頭型は、かたつむりの殻の開口部に頭を突っ込んで食べることが得意な一方、殻を壊すことは不得意です。


うまく殻も壊せて頭も突っ込めるようにできないものかと思いますが、Konuma(2013)の実験によれば、中間的なタイプは殻も壊すのも苦手で頭を突っ込むのも苦手な、かたつむりを食べるのに向かないマイマイカブリになってしまうんだそう。二兎を追う者は一兎をも得ず、なのですね。

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マイマイカブリは昆虫好きの間では人気のある甲虫の1つ。ずっと嫌いでしたが、いざ調べてみると、なかなかおもしろい特徴があって、生きものとして興味がわいてきます。


とは言え、「マイマイカブリを飼ってみたい」という息子。もしほんとうに飼うことになったら、いったい何をエサにするつもりなのでしょうか……。


【参考】https://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/bio/geoeco_lab/

Konuma et al. 2013 A maladaptive intermediate form: a strong trade-off revealed by hybrids between two forms of a snail-feeding beetle. Ecology 94: 2638-2644.