安全管理のコラム第60回「医薬品の製造不正で」2021年4月

 医薬品メーカーの小林化工と日医工が製造段階で不正を行っていて業務停止命令を受けたこと、一般にはそれほど大きなニュースとして扱われていない印象があります。しかし、多くの人に影響が出ると思いますし、病院や薬局の皆さんは新型コロナ感染症への対応に加えて、たいへんな状況ではないかと心配しています。

 ざっくり言うと、製造不正で業務停止命令→出荷調整や欠品が発生→他社の同等品に切り替えようとしてもそんなに在庫ないし急に生産を増やせない…ということが起きている様子。興味ある方は下記のtogetterや調査報告書などをご覧ください。

 

 実は今、日本の医薬品流通が壊滅しかけているという話
 (20210424付/20210426確認)

 小林化工の外部調査委員会報告書・概要版PDF
 (20210416付/20210426確認)

 

 上記の2社についての記事や報告書を見て、医薬品製造に限らずあらゆる分野の安全管理に共通するポイントがあると感じました。グリーンシティ福岡の活動分野に引き寄せて、思ったことを挙げてみます。


1)間違いを指摘する人を尊敬しよう

 上記の外部調査委員会の報告書では、勇気を振り絞って上長に相談した従業員が「でしゃばるな」と叱責を受けたことが記載されています。下からの問題提起が許されない風潮があった、とも。間違いや不正に気づき、指摘してくれる人は貴重な存在です。間違いとまでいかなくても、めんどくさくて手順を省略しようとするのに対して「いやいや、ここはちゃんとやっておきましょう」と言える人は大切。尊敬したいと思います。

 

2)逸脱(≒ヒヤリハット)の報告を歓迎しよう

 製造業では決められた手順や管理基準から外れた状態のことを「逸脱」と言うそうですね。小林化工の工場では報告された「逸脱」の件数が年間数件程度と、異常と言って良いほど少なかったそう。これは逸脱が発生していないのではなく、逸脱が報告されていないことを示唆すると指摘されています。私たちの分野で言えばヒヤリハットみたいなものかと思います。ちょっとしたミスや間違いをきちんと報告できるかどうか?そこで起きたミスや間違いをみんなで共有して、今後起きないように対策を考えるためにも、その報告を歓迎したいと思います。

 

3)間違いを食いとめる仕組みを考えよう

 経口の水虫薬があるとは知りませんでした。ともかく、爪水虫などの治療薬であるイトラコナゾール錠50「MEEK」に、睡眠導入剤の成分である「リルマザホン塩酸塩水和物」が混入されたことが一連の不正でもっとも大きな被害を生みました。夜勤の作業者が保管場所に置いてあった原料を取り違えて計量したことが調査で報告されています。ただうっかりミスは誰にでも起こりうるもの。それを防ぐ仕組みが機能していなかったということです。

 事故に対する考え方のトレンドは、「事故の原因は周囲の環境など外部にある」から「ほぼ全ての事故がヒューマンエラー」という考え方に。「がんばれば事故は防げる」という根性論から「事故は起きるので如何に最小化するかが大事」という考え方に、移り変わってきたように思います。「人は間違いを起こす」ことを前提として、どうやって仕組みでそれを食いとめるか?を考えていきたいです。

 

4)妥当な目標を設定しよう

 同じく小林化工の調査報告書では、近年、生産量が右肩上がりで増え続けていたこと、スケジュール通りの出荷が何より優先されていたこと、が指摘されています。出荷スケジュールから逆算して各工程がスケジュールを立てるという、言ってみれば「バックキャスティング」的な考えが行われていたようです。その考え方自体は使い方次第なのでどうこう言いませんが、最初に立てた目標が妥当かどうかが大切。その目標が無理めなものであれば、現場に負荷がかかり逸脱やミスが発生しやすくなるのは当然です。同じようなことは、製造業でなくてもあらゆる分野で起きているように思います。

 

 医薬品の製造や流通については全く専門外ですが、とりあえずしばらくの間、薬局に行くことがあったら穏やかに薬剤師さんに接して感謝したいと思います。