早くも梅雨入りする中、「第12回 植物園里山ボランティア」も雨の中で開催しました!
今回は少人数で、感染対策をとりながら短時間、森の散策をしました。
作業は行いませんでしたが、雨の森はとっても気持ちが良く、学びの多い散策でしたよ。
以下、当日観察した樹木6種のふりかえりレポートです。
雨の森を皆さんと歩いて観察した樹木6種。
当日解説した内容にちょっと補足を加えて書き起こしました。
偶然、クスノキ科とブナ科が3種ずつでしたね。
■ヤブニッケイ(クスノキ科)
南公園では、公衆トイレからロータリーに向かう途中に葉っぱを観察しやすい個体がありました。高さ10〜15mくらいで、森で一番大きくなる木ではありませんが、二番手の高さになる常緑樹です。
葉っぱの付け根から3本太い葉脈が出ているのは三行脈(さんこうみゃく)と呼ばれ、クスノキやシロダモ、そしてヤブニッケイなどの葉っぱに見られる特徴です。
もう一つの見分けのポイントが小枝に対する葉っぱの付き方。枝に対して左右対象に葉っぱが付くことを「対生(たいせい)」、左右交互に付くことを「互生(ごせい)」と呼びますが、ヤブニッケイは対生に見えて少しずれているので「亜対生(あたいせい)」と呼ばれます。
見るとどうしても少しだけ葉っぱをちぎって匂いをかぎたくなります。ニッケイほどではないけれどよい匂い。
■コナラ(ブナ科)
ロータリーのところにあるのがコナラの木です。残念ながらここの個体はキクイムシ(?)が入った穴がいくつもあったので、ナラ枯れで枯れてしまわないか心配。南公園には他にも立派なコナラが育っていますが、既にナラ枯れで枯れてしまったものもチラホラあります。
ブナ科の落葉樹で高さ20mくらいにはなる、雑木林の代表的な樹種です。
ブナ科の樹木(コナラの他、スダジイやアラカシ、クヌギなど。クリも!)がつける果実をドングリと総称しますが、一般にコナラの果実が「(いわゆる)ドングリ」と認識されているような気がします。
アクが強くて非常に渋いです。幹肌は縦に荒いひび割れが入っていて、ウルトラ怪獣のエレキングに似ていると思っていたのですが、今、確認したらそんなに似ておらず…けどなんか雰囲気が伝わればうれしいです。
葉っぱで見分けるとしたら、葉の先の方がふくらんだ下ぶくれなプロポーションと、葉の全体に「鋸歯(きょし=ギザギザ)」があること。落葉樹らしい明るい黄緑〜緑色であることなどがポイントです。
■スダジイ(ブナ科)
飢人地蔵へ入る分かれ道のところに根っこがすごいスダジイがありました。
土が流失していって根っこが残り、ちょっと爪先立ちのような姿になっています。
スダジイは九州の深い森の代表的な高木の一つです。特に尾根筋などの乾燥した土地に多いようです(逆に水分が多く肥えた土の場所にはタブノキが多い)。現在、まちなかに残された森は尾根筋が多いです。昔はもっと広い森だったけれど周辺の傾斜のゆるいところから宅地に開発されて森が小さくなり、開発しにくい急傾斜地や尾根筋だけが残された。そんなことから、まちなかの森でスダジイに出会う機会が多いのではないかと思っています。
ちょうどゴールデンウィーク頃、遠目から森を見て黄色くなっている木があったら花を咲かせたスダジイです。10月下旬には小さなドングリ(椎の実)を生らします。アク抜きせずそのまま食べても結構おいしい。しいだけに。
葉っぱの特徴は、一枚一枚が小さくて葉っぱの裏が茶色っぽいこと。あと葉先がピヨーンと伸びて右か左かに曲がりがちです。鋸歯は先っちょの方にあることが多いですが、ほとんどないものもいます。幹肌がうっすら緑がかっているのもスダジイらしいポイント。
■アラカシ(ブナ科)
ちょっと場所は忘れましたが、わりと普通に見かける常緑樹です。深い森の中ではスダジイやタブノキに次いで二番手的なポジションにいることが多い気がしますが、公園や生垣にも使われますし、人の手が入った雑木林の中でも元気で「マルチプレイヤー」です。
そしてドングリは小さくて丸くてかわいい&むちゃくちゃ渋い。
葉っぱの特徴は、葉の先の方の半分だけにはっきりと鋸歯があること。あと、葉っぱをニギニギと握ると他の木に比べてゴワゴワとして荒い感じがします。だからアラカシ(?)。すごく感覚的ですけれど。
木の根元から「ひこばえ(木の根元から伸びる若芽)」がたくさん出ている個体をいくつも見かけました。伐採された後の切り株から出てくる若芽もひこばえと呼ばれますが、ここでは伐らない状態でひこばえがたくさん出ています。
これは、梢に光があたらなくなったのか、根っこに水や酸素が行き渡らなくなっているのか?いずれにしても環境が悪くなってきたサインかもしれません。現在の樹高と重量を支えるのが厳しくなってきて姿勢を低くして生き延びようとしているのかも?と想像します。
ただ、七隈緑地でもそうでしたが、他の樹種はほとんどひこばえがなく、アラカシに特にひこばえが多い。そういう性質を持った木なのかもしれず、ちょっと勉強が必要です。
■クスノキ(クスノキ科)
たいへん立派に育つ木で、「日本の巨樹ランキング(1989年/環境庁)」のトップ50のうち33本がクスノキ。ただしこの時の基準が「幹周り」なのでクスノキに有利(?)なランキングではあります。宇美八幡をはじめ神社の御神木として祀られているものも多いです。虫がつきにくいので公園や街路樹にもよく植えられます。
森の中でも見かけますが、成長が早いので同じくらいの大木でもスダジイやタブノキに比べて半分くらいの樹齢ということもありそう。
活動池である「ひよこまんじゅうエリア」の階段の登り口の左にも立派なクスノキがあります。他の木に比べて枝が折れやすい(というか、メインの幹を守るために他の枝葉を落とすことにためらいがない)性格なので、落ち枝に注意しましょう。
虫除けの「樟脳(しょうのう)」を採る木で、葉っぱを揉んでかぐと爽やかな芳香があります。落ちて茶色になった枯れ葉にも香りが残っています。
クスノキを見分けるポイントは、遠目には常緑樹なのに明るい黄緑色の葉っぱ。細かく縦にひび割れた明るい茶色の幹肌。近くに寄って葉っぱをよく見ると三行脈であることと、その葉脈が分かれる股のところに「ダニ室」と呼ばれる小さなふくらみが二つあること。そして葉っぱの縁がヒラヒラと波打っていることなどですが、とにかく匂いをかげば一発。
■タブノキ(クスノキ科)
九州の深い森の代表選手の一つ。土が豊かな場所でドーンと大木に育つので「森の王」と呼ぶ方もいらっしゃるほど(森の案内人・三浦豊さん)。一方で、木の種類を覚え始めた時に他の木は覚えられるのに、なんとなくタブノキだけはいつまで経っても自信がないということも起こります。
葉っぱがいわゆる葉っぱらしいかたちで特徴が少ないからでしょうか?いえいえタブノキにはいくつもポイントがあります。
まず、小枝の先っちょの芽が一つだけということ。他の樹種では小枝の先の芽は複数つける種が多いです。また、4〜5月くらいに出てくる若い葉っぱは真っ赤でツヤツヤしていることも特徴。
葉っぱに顔を近づけてよく見ると葉っぱの縁どりに1mm以下の透き通ったラインが入っているようにも見えます。
そしてその葉っぱをちぎったり揉んだりすると、独特な渋いような酸っぱいようなエグいような香りがします。そして葉っぱを揉んだ指は少し粘つく。この粘つきがあるので線香や蚊取り線香の「つなぎ」として利用されます。
タブノキが立派に育っていれば、そこは豊かな森だなあ、と感じます。そして、なんとアボカドと近縁。
この日の散策では、カタツムリや、小さなナナフシも顔を見せてくれました!
生きものの種類がわかると、なんだか森の見え方も変わってきそうです。
次回は6月19日(土)。これからも楽しみですね!
※緊急事態宣言の発出を受けて、5月17日現在、新規申し込みの受付を休止しています。今後、状況を見ながら、新規お申し込み受け付けを再開いたします。
(共働事業「まちなか里山事業」NPO法人グリーンシティ福岡&福岡市動植物園・みどり運営課)