くらしを支える“豊かな自然”や“生きものたちのいのち”とのつながりに気づく「生きものと私たちのくらしトーク・カフェ」

今年度第1回のテーマは「妖怪だって生物多様性」でした。

妖怪研究の歴史を紐解きながら、人の暮らしの変化を考えさせられる興味深い時間でした。

ゲストに筑紫野市歴史博物館学芸員の早瀬遼子さんをお招きして、お話しを伺いました。

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「昨日はカッパ巻きという妖怪を食べてきました」と笑う、素敵な浴衣姿の早瀬遼子さん。

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まずは、さまざまな妖怪研究のお話。

妖怪博士とも呼ばれた哲学者の井上円了(1858-1919)、民俗学者の柳田國男(1875-1962)、マイケル・デュラン・フォスター(1965-)、そして文化人類学者の小松和彦(1947-)らを挙げながら、それぞれの研究や妖怪観を教えていただきました。

いずれにしても、妖怪とは日本独自のもので、モンスターともフェアリーとも言えず、英訳はできないんだそうです。幽霊とも違うけれど、明確な区別は難しいとか。

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現代の妖怪のイメージに大きな影響を与えたのは、なんといっても漫画家の水木しげる(1922ー2015)ですよね。

江戸時代に鳥山石燕(1712-1788)という画家がいろんな妖怪画を描かれているそうですが、水木しげるは鳥山石燕の影響を受けているそう。

写真は妖怪「ぬらりひょん」。左側が鳥山石燕作で、右側は水木しげる。よく似ていますね。
水木しげるはできるだけオリジナルに忠実に描くようにしていたそうです。

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妖怪が生まれる背景の1つに、「名づけ」というものがあるそうです。

どこからかともなく、ショキショキショキショキ……という音がきこえるが、何の音だかさっぱりわからない。
そのような、なんだかわからない未知のものに、私たちは不安を感じます。

そこで、小豆を洗うときの音に似たショキショキショキ……という正体不明の音に、「小豆洗い」と名前を付けることで、意味や秩序が与えられます。

次は想像しながら姿を描いてイラスト化し、さらにはそこから物語になっていくということです。

ただ、妖怪は昭和40年代以降になるとめっきり姿を消していったそう。
高度経済成長期に当たるその頃、いったい妖怪の世界に何があったのでしょう。

社会構造の変化や、かつての人は自然に対して畏敬の念を持っていたのが、人間が中心の社会になって、現代では自然が保護する対象になってきたということがあるのではないかというお話でした。

それでも、現代になってもアマビエが持ち上げられるように、妖怪は深く私たちの暮らしに浸透しています。

妖怪について詳しいお話しをいただいた後は、質問タイム!会場からもオンラインでも、たくさんの質問をいただきました。

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妖怪はこの先、インターネットの世界で生きていくのではないかという早瀬さんのお話が印象的でした。人も環境も多様になれば、妖怪も多様になっていくのかもしれません。

早瀬遼子さん、興味深いお話しをありがとうございました!


(主催:福岡市環境局保健環境研究所/2022年度まもるーむ交流活動支援業務)