幼稚園のバスでお子さんが取り残されて亡くなるという悲しい事故がありました。

これに関連する報道の中で、アメリカのスクールバスの事故防止策を紹介する記事があります。

スクールバス製造会社「ICバス社」の「Leave No Student Behind Alarm System」。

公式ページの動画がコチラ。

https://www.youtube.com/watch?v=T0eUYv4YlLQ
 

言葉で説明すれば、

 ①バスを停めてエンジンを切ると車内でアラームが鳴る。

 ②アラームを止めるボタンは車内後方にある。

 ③運転手は車内後方にボタンを押しに行く。

 ④その途中で座席に子どもが残っていたら運転手の目に止まる。

というものです。
 

全くハイテクな感じじゃなく、むしろ「アナログ」と言うか「身体的」と言うか…。

ですがシンプルで効果的かもしれません。

事故やミスを防ぐための対策って、いろんな方向性やアプローチがありそうです。

どんなアプローチがあるか、思いつくものを挙げてみます。

 

◯根性論的なもの

 「気を付ける」「心を入れ替える」「がんばる」と言ったもの。それだけでは不十分ですね。その気持ちでいるうちに具体的な対策を行わなければ、ほぼ無意味です。

 

報酬によるもの

 「1年間無事故でボーナス」とか「忘れ物をしなかったらオヤツ」みたいなやり方。本人のモチベーションを高めることで、安全のための行動を促します。

 

懲罰によるもの

 「事故でボーナスカット」とか「忘れ物をしたら怒る」みたいなやり方。上記と反対に、本人の危機感や責任感を高めることを狙っていると思います。ただ、これミスが起きた後の話なのでどのくらい効果があるでしょうか…?

 

教育によるもの

 上司や先輩が教えたり、研修を行ったりするもの。本人の理解が深まったり、モチベーションが高まったりしますが、単発では効果が低い気がします。組織的に行ったり継続することで、風土のように根付いていくと思います。

 

習慣化によるもの

 上記の「教育」の一種だと思いますが、事故やミスを防ぐための身体的動作をくりかえし現場で行って身体に染み付かせるものです。例えば「仕事場に到着したら道具を確認し日報に記入する」のような動作です。習慣化したい動作は2週間繰り返せば身体が覚えるという説があります。

 

人員体制によるもの

 人員を増やしてチェック係や管理担当者を置いたり、チェックのための時間をとる方法。人員や時間、つまりコストをよりかけることになるので、無闇に増やすことはできません。また単純に人や時間を増やしただけでは解決しないというのも悩ましい…。教育や経験、時にはプロ意識のようなものが求められるからです。

 

◯チェックリストによるもの

 やるべきこと、必要なことをリストにして、漏れがないか確認する方法です。手順や項目が多い時ほど絶大な効果を発揮しますが、最大の弱点は「見るか?手に取るか?」どうか。どんなによく出来たチェックリストでも参照されない限り無力です。必要な場面で目に留まるように配置できているかがキモ。

 

行動の制限や身体の誘導によるもの

 今回のアメリカのスクールバスの事例のように、否応なく身体を動かしたり、制限したりする方法。プレス機や裁断機を操作する時の「両手起動スイッチ」は、誤ってどちらかの手を負傷しないように、わざと離れた位置にある二つのボタンを押させるというものです。どこかの高速SAのトイレの鍵を巨大化させて小物置きにしたら携帯の忘れ物が劇的に減ったのも似ています。携帯を持たない限りトイレから出られないように制限しているからです。

 

「ハイテク」によるもの

 業界や仕事によってはチェックや品質管理をセンサーとAIが肩代わりしています。私たちのような野外活動や保全ボランティア分野では馴染みが薄い気はしますが、そのうち開発されるかもしれませんね。ちょっとずれるかもしれませんが、Apple Watchは身近な安全管理のハイテク機器と言えそうです。

 

◯負荷を減らすことによるもの

 そもそも忙しすぎたり、体力的にしんどくて集中力が途切れたりしている場合は、仕事の量を減らすことが何よりの対策になると思います。むちゃな目標を達成するために現場が大変になっている時、どんな「報酬」も「教育」も「チェックリスト」もうまくいきません。余裕や余白、冗長性って実はすごく機能的なものなんじゃないかな、とも思います。

 

 

挙げていけば「装備・機材」とか「視覚化」とか「声がけ」とか他にもいろいろありそう。

「安全工学」界隈ではこういったことがうまく整理されているのかもですね。

不勉強で調べてません…。

 

とにかく、いろんなアプローチが考えられます。

小さな事故も、大きな悲しい事故も、減らすためにできることが必ずあると思います。