ガイドレシオ(guide ratio)という言葉があります。登山などでガイド1人が何人の参加者(顧客)を連れていくかという比率です。ガイド1人に対して参加者が10人の場合はガイドレシオ1:10です。例えば(公社)日本山岳ガイド協会の「ガイド対顧客標準人数比率に係る規定」では,
里地里山の整備された自然観察路等___1:15
安心して歩ける初心者向けの登山道___1:12
縦走も含む中級者向け登山道________1:10
岩尾根なども含む上級者向け登山道___1:5
などと定められています(積雪のない時期)。
現場のリスクの大小によってガイド1人が目配りできる人数は変わるという考え方ですね。他にも(一社)日本アルパイン・ガイド協会やガイド会社などで定めた規定があります。
グリーンシティ福岡はいわゆる山岳ガイドは行なっていませんが,自然観察会では1:15,近郊の低山を含むハイキング等では1:12を超えないような定員やスタッフ体制にしています。
このように登山以外の体験プログラムでも,ガイドレシオの考え方は役立つと思います。
例えば,小学生の子どもたちとの里山保全体験で,ヘルメットをかぶって手ノコで中低木(樹高2mから5m程度)の伐採を行うような場合。現場スタッフ1人あたり何人の参加者が適正でしょうか?
うーん,難しい。学校団体などで参加者が子どもだけの場合と,親子体験で保護者が付いている場合では違うでしょうし,貸し出す道具の種類や数によっても変わってきそう。あえて目安を設けるとしたら,子どもだけの場合1:8程度。親子連れなら3,4組(保護者と子どもが半々くらい)を担当するということで1:12程度でしょうか?
別の例では刃物を使ったクラフト体験。グリーンシティ福岡では,切り出しナイフで小枝を削る「森のえんぴつ」づくりを行ないます。15分程度の短い体験ですが,指を切るなどのリスクがある内容です。実際にこれまでは,小学校高学年なら1:3程度。小学校低学年なら1:1での指導してきたように思います。
活動内容や対象,周辺の状況によって一人のスタッフが対応できる人数は変わるので,一様に決めることは困難です。とは言え,上限としてガイドレシオを設けておくことは安全管理にもなりますし,体験プログラムの適正な単価・料金を守っていく上でも一つの根拠になると思います。

参考文献:
(公社)日本山岳ガイド協会. http://www.sakura11.com/kmga/reshio.pdf
(一社)日本アルパイン・ガイド協会.
http://www.agsj.org/kyoukai/kiyaku/NAIKI_RATIO(h250115kai).pdf
(一社)日本旅行業協会. https://www.jata-net.or.jp/membership/info-japan/climbing-tour/pdf/201303tourclimb_guiderecio.pdf