第14回 ぬるぬるねばねば (2019年7月)

かたつむりやなめくじの体は、ぬるぬる、ねばねばの粘液でおおわれています。
彼らの体には、どうしてそのような、ぬるぬるねばねばの粘液が必要なのでしょうか。

理由は1つではありません。
ざっと思いつく、主な理由を挙げてみます。

▼体の水分が逃げないようにする
陸上に進出した貝類であるかたつむりにとって、乾燥は大敵です。
水分は、空気中に蒸発してしまうこともあれば、乾燥した地上に浸透してしまうことも
あります。粘液があることで、水分が蒸発しくいように、浸透しにくいようになります。

▼陸上を移動しやすくする
かたつむりは這う時に、粘液をうまく利用しています。そのため、這ったあとは粘液だけが
きらきらと残されます。
かたつむりの這い歩くメカニズムは、それだけで論文が書けてしまうほど謎めいています。
いずれにせよ、地上をすべるように移動できるのも、壁や葉っぱの裏側などにもぴったり
くっついて移動できるのも、ぬるぬるねばねばした粘液の性質のおかげなんです。

▼外敵などから逃げる
外敵におそわれたときなどには、多量に粘液を分泌します。
このため、なめくじをピンセットなどの道具でつまもうとしても、つるつるすべってしまい
ます。

1907写真1.jpg

くっつけたり、すべらせたり、それ自体ふしぎな性質がある粘液。
粘液には酵素なども含まれていて、傷を修復したり、雑菌から身を守ったり、汚れを
つきにくくしたり、上で紹介した以外にもさまざまな役割があると考えられています。
けれど、こうした粘液の機能は、人間にとってもなじみのあるものです。
目や鼻などを乾燥から守ったり、異物が入らないようにしているのも、粘液です。
口や消化管の内側も、粘液でおおわれています。粘液がなければ、胃は自分の胃酸で
溶けてしまいます。

もっとも、人間は歩くときに粘液は不要です。
そしてもうひとつ、かたつむりならではの、粘液の大事な役割があります。
それは、殻のフタとしての役割です。

1907写真2.jpg

かたつむりは休眠するとき、殻の出入り口に粘液の膜を張ります。
この粘液は、水分が蒸発するとエピフラムと呼ばれる白い薄膜に変化します。
このエピフラムが、殻のフタになるのです。
(エビフライではありませんよ。エピフラムです)
このエピフラムには接着力があるので、壁や木の枝、葉の裏などにくっついたまま、
休眠することができます。
冬眠など、長期の休眠の際には、さらに何層もエピフラムを張って、乾燥から身を
守ります。

1907写真3.jpg

さらに言えば、かたつむりの粘液の機能は、人間生活にも応用されています。
エピフラムは強い接着力のある一方、水に濡れるとすぐにやわらかくなり、
きれいにはがせます。この特徴を生かした接着剤が開発されているそう。
また、かたつむりの粘液を使った化粧品もあるというから驚きです。
(効果のほどは定かではありませんが、保湿力はありそうです)

ぬるぬるねばねばは、かたつむりやなめくじが嫌われてしまう理由の1つでも
ありますが、かたつむりにとっては生死に直結する大事なものです。
その点、どうかご理解いただければと、かたつむりを代理して、お願い申し上げます。