季節的にはちょっと早いですが「蜂刺され」について。
2017年の本コラム第18回「ポイズンリムーバーを過信しない」では、アメリカ心臓協会(AHA)の「ファーストエイドガイドライン」を引用しました。
その当時、ガイドラインに「蜂刺され」の項目はありませんでしたが、2024年版の更新で追加されたようです。リンクはコチラ:2024 American Heart Association and American Red Cross Guidelines for First Aid
上記リンク先の、「7. Environmental Emergencies」の「7.1 Bee and Wasp Stings」です。
これによれば、アメリカでは蜂刺されによる死亡が年間約60件報告されているとのこと。その多くはアナフィラキシーによるものです。
実際に蜂に刺された時の対応は、これまでと変わらないと思います。10個の対応策が、その「推奨クラス」とともに整理されていました。
COR LOE 内容
1 B-NR 1.アナフィラキシー症状があれば、直ちに本人がエピペンを使用する。
1 C-EO 2.本人がエピペンを使うのが困難な場合、周囲の人が補助する。
1 C-EO 3.アナフィラキシー症状があれば、救急要請を行う。
1 C-EO 4.眼を刺された場合は医療機関を受診する。
2a B-NR 5.針が残っていれば、できるだけ早く引き抜くかこすり落とすとよい。
2a C-EO 6.経口の抗ヒスタミン薬で、かゆみを緩和してもよい。
2a C-EO 7.外用のステロイド薬で、かゆみを緩和してもよい。
2a C-EO 8.刺された場所を石鹸と水で洗うことは合理的。
2b C-EO 9.市販の解熱鎮痛薬で、痛みを緩和させてもよい。
2b C-EO 10.氷や冷却パックで、痛みを緩和させてもよい。
ちなみに、CORとLOEはそれぞれ下記です。
「COR(Class of Recommendation)」=「推奨クラス」
1 強く推奨される(安全で効果があり、必ず行うべき内容)
2a やった方がよい(十分な根拠があり、利益が期待できる)
2b やってもよい(効果はあるかもしれないが、証拠がやや弱め)
3 やるべきでない(効果がない、または有害なので避けるべき)
「LOE(Level of Evidence)」=「科学的根拠のレベル(信頼性)」
A 高度なエビデンス(複数の無作為化比較試験などに基づく)
B-R 中程度のエビデンス(無作為化比較試験に基づくがAよりやや弱い)
B-NR 中程度のエビデンス(観察研究などに基づく)
C-LD 限られたデータ(限られた症例報告や経験的なデータに基づく)
C-EO 専門家の意見(科学的根拠がほとんどないが、専門家の意見として妥当)
野外活動の現場では、どれだけ気を付けても、蜂に刺される可能性をゼロにすることはできません。だからこそ、「もしも刺されたら」の備えをしておきたいですね。エピペンを持っている人は使い方を確認しておく、刺された場合に針をどうやって除去するかを知っておく、アナフィラキシー症状を正しく判断して医療機関へつなぐことができる、こうしたことの積み重ねが大切です。
こうした国際的なガイドラインも参考にしつつ、私たちも知識や対応力をアップデートしていきたいものだな、と感じました。