ちょっと時期遅れですがスズメバチの話題です。
韓国・慶北大学校のチェ・ムンボ先生らが、韓国にとっても外来種であるツマアカスズメバチ(Vespa velutina nigrithorax)の防衛行動を観察した2021年の実験を見つけました。「ツマアカスズメバチの巣を棒で叩いて、距離や逃げ方でどれくらい攻撃されるか、いろんなパターンでビデオ撮影しながら数えたよ」というユニークな研究です(リンク先で英文PDFをダウンロードできます)。
面白かったので、ポイントを整理してみますね。
・ツマアカスズメバチの巣、計6箇所を使って、防護服などの安全対策をしつつ棒で刺激した。防護服は白色、頭部に黒色のかつらを装着した。攻撃される様子をスローモーションでビデオ撮影、刺そうとしたハチの個体数をカウントした。
・以下の四つの切り口で攻撃数をカウントし、比較した。
1)「ゆっくり接近」「腕を大きく振りながら接近」で攻撃開始距離を比較。
2)「ゆっくり歩いて離れる」「走って逃げる」で追跡距離を比較。
3)「立ったまま」「しゃがむ」で姿勢による攻撃数を比較。
4)帽子について「着用」「非着用」で攻撃数を比較。
その結果、以下のことがわかったそうです。
・ゆっくり接近したら1mまで攻撃は無かったが、腕を大きく振りながら接近すると3mの距離から攻撃が始まった。巣への接近距離そのものよりも、人の動作の大きさが攻撃の引き金になりやすいと考えられる。
・攻撃開始の後、ゆっくり歩いて離れると5mでも攻撃数は減少せず、10m離れて約半分に減少、100mでも数匹の攻撃があった。一方、走って逃げた場合5mの時点で明確に攻撃数が減少し、10m地点で急激に低下。20m以降では集団攻撃はほぼ解消された。
・攻撃を受けた際、立った姿勢でもしゃがんだ姿勢でも攻撃数に有意な差は無かった。
・帽子をかぶると有意に攻撃が減少した。頭部への攻撃の約75%が帽子によって回避された計算。
短く言うと「走って逃げた方がいい」「しゃがんでも刺される」ということのようですね。
あれ?スズメバチ対策では「ソーッと離れよう」「見かけたらしゃがんで」とよく言われます。
ですが、これらは矛盾してませんよね?場面が違う、ということだと思います。
<1匹で飛んでいる斥候のスズメバチを見かけたら>
・ソーッと離れる
・しゃがんで飛び去るのを待つ
・手を振り回したりしない
<巣から集団で攻撃されたら>
・走って逃げて巣から距離を取る
・しゃがまない
基本、刺激せずに距離を取ること。
でも、うっかり巣を刺激してしまった場合には、すぐに走って逃げる。
この「切り替え」が大事ですね。