傷害保険で補償されるのは「急激」かつ「偶然」な「外来」の事故です。

傷害保険で補償されるのは「急激」かつ「偶然」な「外来」の事故です。
今年6月,熊本市内の県道を通行していた車に倒木が直撃し,運転中の男性が亡くなるという事故がありました。このような事故をくり返さないためにも,身近な緑の状況に目を配っておくことは大事と思います。
グリーンシティ福岡で収集した事故事例から倒木・落枝に関するものを見てみます。
〇2012年11月18日岐阜県大垣市。
森林公園のイベントで間伐作業の説明を受けていた6歳女児の頭部に
スギの落枝が当たり亡くなった事故。枝は長さ3.5m,重さ5.4kgで
地上高22.8mの高さから落下しました。
林内の活動であるのにヘルメット着用の指導が無かったこと,当日は
強風が吹いていたことに加えて,森林の状態としても樹齢100年以上で
「こぶ病」に罹った(=枝が落ちやすい)木が多かったことが事後調
査で明らかになっています。
〇2014年は街中の倒木事故が目立ちました。
2014年3月16日広島県三原市。三原市芸術文化センター敷地内の
ポプラが突然倒れ,近くを歩いていた女性2人に直撃,お一人が亡くな
りました。このポプラは樹齢50年,高さ15.7m。後の市議会での報告
では,事故より7年以上前,施設の建て替えを契機にポプラ周囲に
数十cmの盛り土が行われ,根の通気性が悪くなっていたことが指摘さ
れています。
同年4月14日には神奈川県川崎市の商業施設で街路樹のケヤキから枝が
落下,下を歩いていた6歳女児が頭がい骨骨折の重傷を負いました。
ケヤキは商業施設の開業にあわせて1978年に植えられたもので定期的
な剪定は行われていなかったそうです。
〇2016年11月3日長野県信濃町。野尻湖畔で景色を楽しんでいた5人の
男女にナラの木が倒れかかり,その内のお一人(80代女性)が亡くな
った事故。倒れたナラは高さ約20m,樹齢は100年くらいとのこと。
その後の調査報告を見つけられませんが,報道にある関係者の話では
カシノナガキクイムシによる「ナラ枯れ」を起こしていた可能性がある
ということでした。
〇そして2017年6月25日熊本県熊本市。
県道沿いの樹林の中から木が倒れてきて通行中の車を直撃,車を運転
していた30代男性が亡くなりました。倒木は長さ9m,幹周り1.7mと
の報道。熊本地震とその後の大雨,また事故前日からの雨も影響したの
ではと言われています。
その後の詳報が見当たらないため,テレビ画面を通じた推測にとどまり
ますが,長年手入れされなかったためほぼ竹林化した緑地で,そこに
残った常緑樹(おそらくスダジイ)に腐朽が入って倒れてきていたよう
に見えました。
いずれの例も太く立派な樹木だった様子。
個別の状況はそれぞれ違いますが,なんらかの病気に罹っていたり,長年手入れされていなかったり,不向きな環境で育って根や幹が腐ったりしています。倒木も落枝も自然の森では当たり前の出来事ですが,生活の場や余暇の場で事故や怪我が起こるのは防ぎたい。そのためにも身近な樹木や森林に危険がないか見る目を持っていたいと思います。
参考文献:
石田仁(2013)林業体験中に発生したスギの落枝による死亡事故の原因と
林分の特徴.日林誌95:275-279.
アーカイブ「ポプラ倒木事故 通気悪化で腐敗」NHK NEWS WEB.
http://archive.fo/vbiI9(2017.09.26.閲覧)
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前回,蜂毒に対する応急処置として少しだけ触れたエピペン。
エピペンは,アナフィラキシーの症状に対して使用し,症状の進行を一時的に緩和する「アドレナリン自己注射薬」です。商品名は「エピネフリン・オートインジェクター」。日本ではファイザーが輸入・販売しています。
ケースから取り出して安全ピンをはずし,太ももの外側に強く押しつけると,中のバネの力で一定量の薬液(アドレナリン=エピネフリン)が注射される仕組みです。
エピペンは専門医の診断の上で「処方」されるもので,基本的に本人が自分に対して使用します。薬局で気軽に購入できるものではありませんし,持ってるからといって第三者に使ってよいものではありません。(医師や救急救命士のほか,食物アレルギーを持つ児童・生徒を想定して,保護者や学校の教職員等が処方を受けた本人に代わって打つことは認められています。)
とは言え,自然体験や森林ボランティアに関わる者としては,自身の蜂毒アレルギーの有無に関わらず,エピペンとそれを使う人のことを知っておくとよいと思います。
・蜂刺され等の結果,全身のじんましん,呼吸困難(息切れやゼーゼー),
意識レベル低下,嘔吐などの症状が複数見られ,アナフィラキシーと
判断される場合,速やかに救急車を要請する。
・本人にエピペンの有無を確認し,持っている場合は使用できるように補助する。
・エピペンが使用された場合,本数や時刻を記録しておき,救急隊や医療
機関へ報告する。
・症状は急速に進行することが多いため,救急隊もしくは医療機関に引き継ぐ
まで目を離さない。
・万が一,反応及び自発呼吸が失われた場合,胸骨圧迫やAED等の救命措置を行う。
そろそろスズメバチやアシナガバチの巣に働き蜂が増えてくる時。だんだん防衛本能が強くなって,野外活動をする人は用心したい季節になってきました。
博多では山笠が終わり,梅雨が明けました。
急に気温が上がるこの時期は熱中症に注意です。
熱中症とは4種の健康障害の総称です。
・体温を下げようと皮膚血管が拡張して脳の血流が減り起きる「熱失神」。
・水しか補給せず血中の塩分濃度が低下して起きる「熱けいれん」。
・汗をかいた分の水分補給が追いつかず脱水状態になる「熱疲労」。
・脳幹を含む深部体温が上がり中枢機能に異常が起きる「熱射病」。
熱中症による死亡者数は平成27年で968人。65歳以上が8割です。
こまめな休憩や水分・塩分補給が必要ということは当たり前になってきました。これら現場での対応に加えて大切なのは「熱中症になりにくい身体」をつくっておくこと。ポイントは「日頃の運動」だそう。
日頃,運動することで
・体温が上がりすぎる前に発汗をはじめる
・ダラダラ流れるのでなく気化熱を奪いやすいうっすらとした汗をかく
といった体温調節が上手な身体になるとのこと。
運動不足の身体はなかなか汗をかきはじめず,体温が高くなりがち。その後,一気に滝のように汗を流すために塩分を失いやすく,気化熱による体温調節も効きにくくなります。
日頃の運動で無理をしたら本末転倒ですが,比較的涼しい時間に,適度な運動を心がけたいものです。
(参考)いずれも2017.07.18.閲覧
「環境省 熱中症予防情報サイト」http://www.wbgt.env.go.jp/
「熱中症ゼロへ(日本気象協会)」https://www.netsuzero.jp/
「熱中症(wikipedia)」https://ja.wikipedia.org/wiki/熱中症
「熱中症からカラダを守ろう(大塚製薬)」https://www.otsuka.co.jp/health_illness/heatdisorder/
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スズメバチへの備えとしてよく紹介される「ポイズンリムーバー」。
(2022.05.23.追記)
上記の「ファーストエイドガイドライン」のサイトがリニューアルしていたようです。現在は下記の場所にあります。
https://cpr.heart.org/en/resuscitation-science/first-aid-guidelines/first-aid
下にスクロールさせて「7.9Human and Animal Bites」「7.9.1Snakebites」の箇所です。
1)「顔の保護シールド付きヘルメット」。
この冬の森林保全活動で1名が軽傷を負う事故が発生しました。
竹林での間伐作業中、掛かり木状態になった枯れ竹を処理していたところ
youtubeなどの動画投稿サイトには,様々な事故の瞬間を撮影した動画がアップされています。
特に林業の現場は伐倒の様子を動画撮影していることがあるため,
事故の瞬間を捉えた動画もたくさんあります。
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野外活動やイベントでは、そこでどのようなリスクが考えられるのかを
洗い出し、その対策・対応を準備しておくことが大事です。
考えられる危険を事前に評価して備えることを「リスクアセスメント(=危険の評価)」と呼びます。
志賀が理事を務めるNPO法人日本環境保全ボランティアネットワーク
(https://www.facebook.com/jcvn.net/)の研修でも重視しており、
時間を多めに割いています。
ごく簡単に説明すると、リスクアセスメントは以下のように進めます。
1)計画している活動やイベントで考えられる「リスク」を全て書き出す。
2)個々の「リスク」について「程度」「頻度」の両面から三段階評価する。
3)個々の「リスク」で、起こさない「対策」と起きた時の「対応」を考える。
4)「対策」と「対応」に基づいた行動(計画の変更、道具の準備など)を行う。
リスクアセスメントを行うと安全意識が高まり、目配り・気配りのポイントが
共有されるため、スタッフトレーニングとしても非常に効果的です。
似た取組みに「KY(危険予知)活動」があります。
進め方自体はよく似ていますが、以下のような違いがあります。
<リスクアセスメント>
○主催者や責任者、企画担当者が、
○活動・イベントの数週間〜数ヶ月前(企画・計画時)に、
○安全な企画・プログラム・体制づくりを行うために実施する。
<KY活動>
○当日のスタッフ全員が、
○活動・イベント実施の直前(当日の朝など)に、
○安全管理に関する情報共有や意識向上を行うために実施する。
自然学校やNPOでは組織が小規模なため、責任者や企画担当者と
当日のスタッフが同じで、あまり違いが無いということもあるでしょう。
大事なポイントは、
1)企画・計画段階で無理のない計画づくりや、事前にできる準備・
体制づくりを行うこと(リスクアセスメント)
2)当日に、その日関わるスタッフ全員で安全に関する情報や
思いを共有して活動にのぞむこと(KY活動)
というところにあると思います。
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イベント実施の可否判断や雨具・装備の準備,参加者やボランティアさんの
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グリーンシティ福岡が運営したイベントの回数は平成26年度で93回、
平成27年度で63回。この内、約6割が野外での保全作業や観察会、ウォーク。
約4割が室内のワークショップや研修です。この中で、事故や怪我の対応のために
救急セットを開けたのは年に3〜5回。「ちょっと絆創膏ちょうだい」も含めてです。
事故が起きた場合、イベント後のふりかえりで発生の経緯や対応内容の記録、
補充する救急用品の確認を行います。実際に自分たちの現場で起きた事故・
怪我の対応事例を記録しておくのは大事なことですね。
参考として、こんな雰囲気です,という意味で4例挙げておきます。
1)近郊の低山での登山イベント。
このコラムの第2回では「事故事例収集」を扱いました。
今回は収集した事故事例を使って短時間でできる研修のやり方。
事故事例の記事とA4紙を用意します。以下,進め方です。
0)題材にする事故事例の記事を選んでおく。
1)出席者それぞれで事故事例の記事を読込む。
2)全部で三つの質問に個人で考えA4紙に記入します。
2-1 事実:あなたが着目した事実は?
記事から確実に言える事実を抜き出します。
2-2 考え:それをどう思うor考えますか?
その事実が起きた背景や理由を推測したり,
事実に対する評価や考えを記入します。
2-3 対策:あなたは何ができますか?
その事故を起こさないためにできることを
その理由とともに挙げていきます。
3)書き出したA4紙をもとに出席者同士でディスカッションする。
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前回に引き続き、ウォーキングやトレッキング等での話題です。
長い距離を歩いたり低山の登山をする時、
集合時間に早く集まってくれた参加者から順にベンチに座ってor立ち話で
出発前の「問診」をしています。8項目ほどで、時間にして2〜3分間程。
項目はイベント内容や季節、フィールドによって変わります。例えば…
「登山経験は?」○:月に数度〜 / △:年に数度 / ×:ほとんど無し
「睡眠は十分?」○:普段通り / △:少なめ / ×:ほとんど無し
「適した靴か?」○:登山靴など / △:日常の靴 / ×:不適な靴
「飲み水は?」 ○:1L以上 / △:500ml以上 / ×:500ml未満
「常備薬があるか?飲んだか?」や「既往症」などについて尋ねることも
あります。これらは個人情報やプライベートな内容でもありますので、
伺った内容について「当日のスタッフ以外には共有しないこと」「終了後、記録を破棄すること」
をお伝えします。
安全上、ガイドするのは20人以下のことが多いので、問診をすることによる
混雑はそれほどでもありません。しかし、スムーズに開始できるように
受付担当とは別に問診の担当者を設けておいた方がいいですね。
問診結果については、手早くスタッフのみで共有して出発します。
朝のあいさつや世間話を交えながら問診することは、
ガイドと参加者の信頼関係づくりやアイスブレイクにもなっていると感じます。
参加者側にも「今から出発するんだ」と気持ちを引き締める効果があると期待しています。
覚悟を持ちたいのは、
参加をおすすめできない(不適切な装備、重度の二日酔い、体調不良など)と判明した場合、
参加をお断りする勇気が必要になるということ。
スタッフ数に余裕があれば特別対応をすることもあるかもしれませんが、
全体の安全に関わる場合はお断りしなければならないでしょう。
宿泊を伴うキャンプであったり、よりリスクの高い活動(本格的な登山や海・川での体験)
であれば、事前の郵送・メール等でのやり取りで危険の告知や
個別の承諾をとるべきと思います。
問診は、より気軽で比較的リスクの小さい活動でのやり方と考えています。
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心配しているのは「心筋梗塞」です。
が,一方で「初っぱなから(10分程度でも)急な坂道や神社の石段を登る」 というようなコース設定は,明らかに運営側のプログラムによるリスク要因です。
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戦略的お茶コーナー…
今回は「救急セット」
活動やイベントの後のふりかえり。
いつも「KPT」の手法で
「良かった点(K)」
「悪かった点(P)」
「次回に向けた改善点(T)」
を記録するようにしています。
特に野外の活動では,「悪かった点」の一部として「ヒヤリハッと(以下,HH)」を