昨年2月の安全管理コラムで「日本の死者数が前年より1.5万人減」という記事を取り上げたのですが、今年2月に出たのは「国内死亡数が急増」というニュースでした。


「国内死亡数が急増、1〜3月3.8万人増 コロナ感染死の4倍」日本経済新聞. (2022.07.02.閲覧)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA021SU0S2A600C2000000/

「21年の死者、戦後最多145万人 デルタ株流行が影響 厚労省速報」朝日新聞デジタル. (2022.07.02.閲覧)https://www.asahi.com/articles/ASQ2T54GBQ2TUTFL005.html

 

 日経は「急増」と書いてるし、朝日は「デルタ株の流行が影響した」と断言してます。ちょっと不安に感じますね。試しにグラフを作ってみました。厚労省の人口動態調査の数字です。

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 オレンジが死亡数(単位:万人)で左側の目盛り。青が前年との増減(単位:万人)で右側の目盛りです。

 

 はっきりわかるのはこの四半世紀ずっと増加傾向だということですね。高齢化が進むとはこういうことなのか…。

 

 日経に書かれている通り2020年に比べたら2021年は「急増」していますが、最近の傾向の中に収まっている気もします。朝日の「デルタ株流行が影響」というのは嘘ではなさそうですが、それが主因と読めるように書いてもいいのかどうか…ちょっと疑問。(2021年にデルタ株以外も含めた新型コロナ感染症で亡くなった方は1.5万人弱です)

 

 統計については素人ですが、前年との増減(青い棒グラフの上下)に何か意味を見出そうとするのは大変そう。一方、四半世紀のトレンド(オレンジ色の折れ線グラフの傾き)は明確ですね。確実にこれからの社会を考える手がかりの一つだと思います。

 話題になった書籍「FACTFULNESS」にあるように、事実を確かめたり、時系列に並べたり、他の対象と比べたりするのは大事ですね。安全管理にも必要な視点だと思います。

 少し前、2022年4月にネットニュースで見かけました。国立公園内の植物をナタで刈った疑いで男性2人が書類送検されたそうです。

 

 場所は小笠原諸島の母島で、約240メートルにわたってヒメフトモモやシマモチといった植物9種計17本をナタで刈ったとのこと。これによる自然公園法違反の疑いです。目的は釣りに行くための道づくりだったそうで、別の報道では、巨大魚のロウニンアジを釣れる場所を探して農道から海岸へ行く道を切り開いた、ともありました。


「世界遺産・小笠原で植物損傷容疑 「釣り行くため」240m傷つける」朝日新聞デジタル. https://www.asahi.com/articles/ASQ4L365GQ4HUTIL031.html(2022.05.31.閲覧)


 この「自然公園法」で言う自然公園とは以下の3種類のことです。


 国立公園_______日本を代表する自然の風景地(全国で34箇所)

 国定公園_______国立公園に準ずる優れた自然の風景地(同56箇所)

 都道府県立自然公園__都道府県を代表する自然の風景地(同311箇所)

 

 さらに一つの自然公園の中では、自然環境の重要度などに応じてエリア分けが行われ、それぞれ許可が必要な行為などが細かく定められています。


 特別保護地区____特に厳重に景観の保護を図る地区

 第一種特別地域___現在の風致を極力保護する地域

 第二種特別地域___農林漁業活動について努めて調整を図る地域

 第三種特別地域___通常の農林漁業は風致の維持に影響が少ない地域

 普通地域______地域内の集落や農耕地など

 


 今回の件が刑事事件にまでなったのは、世界自然遺産でもある小笠原国立公園の中でも、特に重要な「特別保護地区」で起きたというのが理由ですね。

 森林ボランティアでは、わりと普通に草木を伐ったり森の中に通路を作ったりします。いくら善意でやっていたとしても、うっかり法令違反してしまっては問題。皆さんも身近な自然公園の範囲を調べてみてください。

 


 ちなみに、福岡市域ではどのあたりが自然公園になるかというと…。

 

 玄海国定公園______奈多海岸から志賀島、能古島、糸島半島へ

 脊振雷山県立自然公園__佐賀県と接する脊振山脈一帯

 


 私たちも「しかボラ(志賀島森林保全ボランティア)」で自然公園周辺での活動を行っています。

 特に、志賀海神社の裏手から通称「火焔塚ルート」の山頂向かって右手側。そして潮見公園周辺が「第二種特別地域」となっています。小笠原の事例のように「国立公園」の「特別保護地区」というわけではありませんが、自然公園の区域内です。気をつけます。

 

 余談ですが、自然公園の範囲や制限などについては、情報発信がまだまだ進んでいませんね。スキャンした地図のPDFがアップされているくらいで、見やすく使いやすい地図はなかなかありません。なんとかならないかなあ?

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先月、スタッフのまさみんから花粉症になった話を聞きました。

週末にスズメノカタビラでリースを作ろうとしたら、くしゃみ鼻水が止まらなくなったんですって!


コラム「草花クラフト」にその時のことが書かれてます。


スズメノカタビラは、道端や庭、田畑、校庭などごく普通に見られます。一番「雑草」って言われがちな草かも?イネ科の植物で、シャラシャラとした穂をつけます。よく見るとかわいい。


イネ科の植物は風媒花(ふうばいか)なので、花粉を風に運んでもらって増えていきます。イネもコムギも、竹の仲間やススキもイネ科なので花粉を飛ばします。

この飛んでくる花粉が原因になるということですね。


花粉症というとスギやヒノキが有名ですが、それ以外にも様々な植物が季節ごとに花粉を飛ばします。

九州地方で花粉症を起こす花粉が飛ぶ時期はだいたいこのくらい。

 ス ギ   2-3月

 ヒノキ   3-4月

 イネ科   4-5月 カモガヤ、ハルガヤなど

 キク科 9-10月 ブタクサやヨモギなど

参考文献: 環境省(2019)花粉症環境保健マニュアル2019.

https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2019_full.pdf

 

実は、私もスズメノカタビラで花粉症が出るとは知りませんでした。おそらくそんなに多くの人でなく、一部の人だけだとは思いますが…。

イベントなどで、大人数で草地で遊んだり、草花クラフトしたり、草むしりをする場合は、時期を考慮して気をつけたいと思います。まれなようですが、喘息の発作やアナフィラキシーショックを起こした例もあるそうです。


一つ幸いなのは、イネ科の花粉はあまり飛ばないことです。

スギやヒノキの花粉は何十キロも飛散するので逃げられません。しかし、イネ科の花粉は飛んでもせいぜい数十メートル程度。草地から離れたら避けることができます。

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つい先日(3/24-25頃)、バズってたのが面白いと思ったのでtogetter貼っておきますね。


なんか許されているけど正直ダメな気がするもの3選「サウナの整い」「カフェイン」「餅」


サウナもカフェインも餅も、それぞれ一定のリスクはありそうですね。

サウナのヒートショックにしろ、カフェインの過剰摂取や常習性にしろ、餅の誤嚥にしろ、みなさん十分ご注意ください。自分自身は、サウナの水風呂は冷たくて苦手、コーヒーは2日に1杯程度、餅は好き、という感じです。

みんな普通にやってるけど、よくよく考えたらリスク結構高いんじゃないの?という行為って他にもいろいろありそうです。

リンク先のつぶやきの中では確かに「自動車」はかなりのもの。交通事故死者数、以前は1万人超でしたが昨年はじめて3,000人を下回りました。とは言え国内だけで毎年数千人の命を奪っている道具であることは事実。みんなそれを飲み込んで、利便性や経済的恩恵を享受しているということかと思います。

また「クレジットカードは今ならセキュリティ面で絶対認可されない」というのもそうかもな、と思いました。数十年前ならOKだったけど、今からはじめようと言ってもだれも賛同してくれなさそう。いや、このあたりのセキュリティは詳しくないですが、以前は手書きのサインで、最近でもカード裏に印字されたセキュリティコードで認証するって、なんか牧歌的だなという気がします。

 

記事を読んで考えたのは…

 

○ みんなある程度のリスクを飲み込んで暮らしている___利便性や気持ちよさ、かかる手間ひまとの兼ね合いでリスクを許容したり、補償しあっていること。

 

○ リスクに対する評価は暮らしぶりの変化や技術の進歩で変わる___以前なら大丈夫とされていた行為が時代が進んで非常識になったり、野蛮に感じられたりすること。

 

○ 慣れ親しんだリスクは低く、新しいリスクは高く評価する傾向がある___これまでやってきた危険行為の(飲み込めている)リスクよりも、新しい行為の(飲み込めていない)リスクに目が行きがちなこと。

 

といったことです。

 

まあとにかく、時々スッと真顔に戻って「これよく考えたらやばくない?」と、立ち止まれるといいなと思います。これまでの行為を見直したり、公平な視点でリスク評価するってわりと難しいですけれど…。できてませんよ(笑)、できてませんが、努めたいことかと。

前回コラムの写真には「ハインリッヒの法則」の図が載っています。

安全管理の研修ではお馴染みの考え方で、ハインリッヒという人が1929年に出した論文が初出です。

 

おおざっぱに言うと、事故やヒヤリハットは

 重大な事故:1

 軽微な事故:29

 ヒヤリハット:300

という割合で起きているということが統計的な調査からわかった、というものです。

ウィキペディア「ハインリッヒの法則」に詳しいので時間のある方はどうぞ!

 

ハインリッヒの法則をビジュアル化したのが下のピラミッドの図です。

安全についての社内ミーティングや研修でやることをお勧めしている「事故事例研究」や「ヒヤリハット研究」は、このピラミッドの図で言うと、どのあたりの出来事を対象にしているか?も書き加えてみました。

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報道された事故を題材にして行う「事故事例研究」は、ピラミッドの頂上の部分にあたります。ネットニュースや新聞などで見られる事故は人命に関わるものだったり影響の大きいものだったり、重大な事故であることがほとんどだからです。掲載されているのは「ニュース性」があると判断されたものなので当然と言えば当然。

 

反対に「ヒヤリハット研究」は、ピラミッドの下の部分です。自団体の出来事や活動経験の中では、実際の被害は無かったヒヤリハットか、あったとしても比較的軽い事故が多い。それらが題材となるからです。確かに重大事故も起き得るのですが頻度としては少ないと思います。

 

この図を見ながら我が身をふりかえって思うのは「中程度の事故」、例えば病院に行く程度の事故(骨折や大きめの切創など)については、知識が少なかったり想定ができていないかもしれないな、ということです。(そしてそれはこれまで身近ではそのような怪我や事故があまり起きてないと言う幸運なことだと思います。)

この辺りの「中程度の事故」については、ボランティア保険を扱っている立場の方が情報をたくさんお持ちではないかと思います。森林ボランティア界隈で言えば、「グリーンボランティア保険」の取り扱い窓口となっているNPO法人森づくりフォーラムさんなどです。

ちょうど森づくりフォーラムさんではこれまでの事故事例などを整理・集計されているそう。いずれ情報交換させてもらえたらと思っています。

この週末(2022.01.29-30.)はモリダス主催による「野外体験活動における安全管理とコミュニケーション研修」に講師としてお招きいただきました。

多摩市の森林ボランティアのネットワーク組織である「森木会(しんぼくかい)」のみなさんも多く受講してくださり、森の活動にフォーカスした安全管理や団体運営をじっくり話し合いました。

その2日目では午前中いっぱいを使って「ヒヤリハット」をテーマに講義や実習をを行いました。

「ヒヤリハット」とは、事故にはならなかったけどヒヤリとしたりハッとした事故一歩手前の出来事のこと。そんなヒヤリハットに気付いて、今後の改善に活かしていくことはその組織の安全管理上、重要かつ効果的だと考えています。

 

発生したヒヤリハットが具体的な改善案や対策に活きるまでには、いくつかの分岐があります。

 

1.「気づく」か「見過ごす」か?

 あぶない!と思う状況が起きても気づかないことがあります。特に未経験者や新人の場合は状況を把握できておらず見過ごしてしまうことも。それがヒヤリハットだと気付いた時点ですばらしいことだと思います。

 

2.「現場で共有する」か「自分だけに留める」か?

 そのヒヤリハットを現場にいるうちに周りのスタッフや関係者と共有したり、内容によっては参加者やボランティアにアナウンスしていくことが次の一歩。恥ずかしく思ったり、マズいと感じて誰にも言わずソッと自分の心のうちに留めていると、うやむやになってしまいます。そしてきっと同じことが起きる…。

 

3.「記録して残す」か「記録せず忘れる」か?

 ヒヤリハットを記録することで、あらためて改善案や対策を考える時の材料にすることができます。活動やイベントの当日、記憶が生々しくてよく覚えているうちに活動日誌やふりかえりメモ、報告メールなどに記録するとよいです。そうでなければ、きっとみんな忘れてしまいます。

 

4.「記録を見返して対策する」か「記録を埋もれさせる」か?

 記録したヒヤリハットは見返すことで効果を発揮します。いくら記録をため込んでも、埋もれさせては時間や労力の無駄。直後でもいいですし、定期的なミーティングで取り上げるのでもよいと思います。発生したヒヤリハットは、関係者で共有しつつ、改善案や対策を立案し、それを実行することではじめて活かされます。

 

6年前ですが「ヒヤリハット研究」のやり方をこのブログにも書きました。よろしければこちらもどうぞ!

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先日かなたけの里公園で行なったイベント「はじめてのたき火・はじめてのノコギリ」の当日。

天気予報での風速は5.0m/sとなっていました。つまり1秒間に5.0m進む速さの風。時速に置き換えると18km/hなので大したことないような気もします。

ですが、吹きさらしのたき火スペースを使うのはやめにして、半屋外の炊事棟にあるブロックで区切られたかまどスペースに変更して実施しました。当日の様子はコチラ

 

さて、気象用語の定義では、「風速」「瞬間風速」は次のとおりです。

 風  速:10分間の平均風速(単位:m/s)

 瞬間風速:3秒間の平均風速(単位:m/s)

天気予報などで見かけるのは「風速(10分平均)」ですね。お天気番組では「最大瞬間風速」を口頭で付け加えたりします。「瞬間風速(3秒平均)」のうち最大のものです。

 

一般的に「瞬間風速」は「風速」の1.5倍から3.0倍、時にはそれ以上になるのだそう。

なので冒頭のたき火プログラムの日、天気予報での風速が5.0mだったということは、最大瞬間風速が15.0mとかになってもおかしくないということですね。

 

風速の数字を見なくても現地の体感で、風がビュービュー吹いて、たき火の火が真横に流れるようだったり、くべた焚き付けの葉っぱが舞い上がって他所に飛んでいくようであれば十分危険な状況です。中止や場所の変更を考えた方がよいと思います。

もちろん「強風注意報」が出ているのであれば問答無用でたき火イベントは中止(まさか「暴風警報」が出ている時にたき火をしようとする人はいないと思います)。

ちなみに福岡市の場合、風速12m/sを目安に「強風注意報」、風速20m/sを目安に「暴風警報」が発令されます。目安となる風速は地域によって異なります。

 

天気予報の風速5.0m/sで「焚き火中止」を呼びかける体験施設やキャンプ場もあります。

指導者が付き添っているかどうか?たき火場所の周辺がどんな環境か?などで判断は変わると思いますが、天気予報の風速5.0m/sは一つの判断ポイントになるように思います。

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いや、実際11月のグリーンシティはやたらと忙しかったです。多くの方のおかげでもあり、ありがたいお話です。

まあでもあんまり忙しくなると、それは安全管理上でも問題かもしれません。どんな問題になり得るか、思いついたものを挙げてみます。


<準備がおろそかになる>

 この「準備おろそか系」の問題にはいくつか種類がありそうです。

 まず「事前の情報共有が不十分になる」。スタッフ同士の「あれやっといてね」とか「タイムスケジュール変更しました」などをしっかり共有する時間がとれなかったり、メール等を流していても見る暇がなかったり。

 また「計画や手続きを省略する」ということもありそうで、いつもは作成している実施計画書や道具チェックリストなどをつい、ザッと済ませたり、省略したりすることも起こるかもしれません。

 その結果「道具の忘れ物」が発生して、あわてて取りに戻ったり、現場の有り合わせのもので対応したりすることもありそうです。


<あわてた作業、無理な作業>

 時間が足りない状況ではつい、「あわてた作業、無理な作業」をしてしまうことがあります。走ったり、荷物をたくさん運ぼうとしたり、車を飛ばしたり。その結果、事故や怪我が発生するかもしれません。

<寝不足とそれによる注意力の低下>

 個人に起こりやすいのは、がんばりすぎて夜中過ぎまで仕事して「寝不足」になって、仕事現場で体調不良や見落としが起きるといったことです。寝不足と水分不足はてきめんに仕事のクオリティに影響しますね。

 また「注意力の低下」で危険な兆候や参加者の体調不良に気づけなくなることも考えられます。体力や気力が落ちて注意が散漫になることもありますが、他の考えことや気がかり、「帰ったらあの仕事もしなくちゃ」などがあって目の前の出来事に集中できなくなるということもあります。


<心が離れる>

 忙しい時には挨拶や会話がおろそかになったり、落ち着かない態度だったりして、スタッフ同士や参加者との「心が離れる」ということも起こります。関係づくりがうまくいってない状況。こうなると、説明や注意が行き届かなくなったり、ちょっとした素振りが誤解や反感を生んだりすることもあります。そうやって理解不足やイライラが広まっていくと、事故や怪我も起こりやすくなります。


あぁ!書いてて苦しくなってきますよ(笑)。

幸い、忙しいながらもグリーンシティでは準備や体調管理、関係づくりは「大丈夫」な状態で11月を乗りきることができたと思います。実施計画書もほぼ作ってる、ヘルメットやノコギリの手入れも良い、当日の実施後にはKPTをして後日ファイルで共有した、ブログも書いてる...。スタッフみんなのおかげですね。ありがとう!

あらためて、無理に仕事をとってこない、とか、スタッフ体勢や休日の計画を行う、とか、あわててると感じた時は深呼吸、とかも安全管理としてやっていかねばなあ、と、当たり前なんですが考えたのでした。

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全然「ヨシ!」じゃない場面で「ヨシ!」をするキャラ「現場猫」もしくは「仕事猫」。

その活躍っぷりを見たい方は「現場猫」や「仕事猫」で画像検索してみてください。

そんな現場猫が生まれた経緯はこちらのブログにばっちりまとめられているのでリンク先をどうぞ!


ゼロ災ブログ「【どうして】「現場猫(仕事猫)とかいう謎キャラまとめ【元ネタ】(2021.10.25.確認)


上記ブログをあえて要約するとこんな感じ↓。

2016年8月 くまみね(@kumamine)さんが「電話猫」を描く。様々なコラが派生。

2017年11月 いろいろ合わさって「現場猫」爆誕。

2018年ごろ あちこちの仕事現場で「ヨシ!」と大活躍。

2019年6月 くまみね(@kumamine)さんが(版権的に問題ないであろう)「仕事猫」を描く。

2019年ごろ 「仕事猫」となり、LINEスタンプやキーホルダーなど現実世界に進出。

 

そしてとうとう啓発ツールにも使われ始めました。なんと中央労働災害防止協会(中災防)の安全衛生標語ポスターや卓上POPにも採用されています。このあたりとか。

数多くの事故やヒヤリハットに直面してきた(?)仕事猫が安全標語ポスターになっているのはたいへん味わい深い。説得力が無いような、いやむしろすごく実感がこもってる…のか…?

はじめて見る人には単なるかわいい猫のキャラクターかもしれませんが、イラストとしては「両目の焦点が無限遠」っぽく、つまり目の前の人やものを見てないように見えることとか、「黒目に輝きがないこと」とかが、ほんのり不安やシュールさを感じさせてじわじわきます。

 

まあでも、一般的な行儀の良い、いかにもなマスコットキャラクターって建前っぽくて上すべりしがちです。心に届かないだけでなく、押し付けられたようでうっすら反感すら感じるかもしれません。

その点、仕事猫は少しブラックな感じや飄々とした面白さがいいのかもですね。いろんな職業の人の手で様々なコラを作られてきたキャラクターなので、働く人の目線に近いということもあるかも?とか考えたりしています。

 

同じくネットで話題になったキャラクターが啓発ツールに採用された例では、埼玉県警の「交通事故ハザードマップ2021」があります。昨年、Twitterで注目を集めた4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」のキャラクターが使われています。

漫画のラストと結びつけて考えると「交通事故ハザードマップに採用してよかったのか?」という気がしなくもありませんが、多くの人に手にとってもらえるのは確かじゃないかと…。

 

猫にしろワニにしろ、そこはかとなく不穏な、ブラックな雰囲気はありますが(笑)、見た目だけでなく、経緯や物語も含んだキャラクターとして安全管理界隈で活躍してくれています。

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(一社)日本損害保険協会は毎年「全国交通事故多発交差点マップあなたの地域の事故多発交差点はここだ!」を公開しています。

 各都道府県ごとにワースト5が挙げられていますので、お住まいの地域を確認してみてください。ちなみに福岡県の令和2年のワースト5(6箇所)は下記の通りです。

  1. 針摺交差点(22件)

  2. 六本松交差点(15件)

  3. 安部山入口交差点(11件)

  4. 二先山交差点(10件)

  5. 西体育館前交差点(9件)

  5. 徳永交差点(9件)

 ワースト1の針摺交差点は、某 "ゆめのあるモール" 筑紫野店のすぐ横で、福岡南バイパスの高架をくぐる変則五差路です。確かに初見の人は停止位置を間違えたりするかもしれません。

 ワースト2の六本松交差点はこの10年名前が挙がってなかったのにはじめてワースト5に入ってきました。2019年11月に交差点改良工事が完了して右折レーンが2車線になったばかり。渋滞が緩和されてありがたかったのですが、これがなにか関係あるかどうか…?

 

 ついでですので範囲を福岡県全域から福岡市内のみに狭めて、平成22年以降の11年間でワースト5に挙げられた回数を交差点ごとにカウントしてみました。

 6回___蔵本

 5回___千鳥橋、渡辺通1丁目

 3回___美野島、新二又瀬橋

 2回___渡辺通4丁目、立花寺北、博多駅前3丁目、

     外環西口交差点(旧青果市場入口交差点)

 1回___半道橋出口、那の川四ツ角、井尻4丁目、清水四ツ角、

     愛宕、原、箱崎ふ頭西側入口、井尻六ツ角、

     ガンセンター入口、六本松、西体育館前、徳永

 

 地元の人なら「あそこかー」とわかると思います。当たり前ですが交通量が多い場所ですね。

 蔵本、千鳥橋、渡辺通1丁目は、10年以上前からワースト5に何度も名前の挙がってきた交差点ということになります。一方で、わりと毎年入れ替わりがあるんだな、とも気付きました。事故の多い交差点については信号機のLED化や車線のカラー舗装、車線工事などで改良が行われることもあります。その結果、入れ替わるのかもしれません。

 

 全国的には福岡県は、東京都・大阪府・愛知県に続いて4番目に交通事故の発生件数が多いです(2020年度)。そして全ての事故発生件数を分母にした交差点(付近)での事故発生率は53%前後です。

 みなさまどうぞ安全運転で!

尾瀬と言えば「♪夏がくれば 思い出す はるかな尾瀬 遠い空」と歌でも有名。
湿原と周囲の山々からなる自然地です。

 

福島県、新潟県、群馬県の県境にあって標高2,000m級の山々に囲まれた盆地状の地形。盆地と言っても底の標高が1,400mくらいあります。

福岡に住む人だと、脊振山の標高が1,054m、英彦山が1,199mなのでその山頂よりも高い場所に湿地が広がっていると考えると…すごい。

ミズバショウやミズゴケなど湿原ならではの植生が見られます。


20世紀初頭に関東水電(後の東京電力)によるダム建設が計画され、その反対運動が起こりました。経緯については(公財)尾瀬保護財団のページなどをご覧ください。

今では全国的な活動を行っている(公財)日本自然保護協会も、前身となる団体は尾瀬保存期生同盟。各地で見られるようになった「ゴミ持ち帰り運動」も尾瀬が発祥らしく、いろんな意味で尾瀬は日本の自然保護活動の象徴的な場所です。


さて、8月23日に複数のメディアで尾瀬ガイド協会のTwitterのことが報道されました。

それによれば、尾瀬ガイド協会の公式Twitterで不適切な投稿があり、それに対して批判が相次いだとのことでした。

 

今回のツイート内容を擁護したいわけではないのですが、そんな考え方や発言をする人はまだまだたくさんいる気がします。「近い考えの人といるから」「それがイヤな人はソッと離れるから」「SNSに投稿したとしてもフォロワーが少ないから」見つかってないだけだよな、と思います。

 

該当のTwitterアカウントは削除され、尾瀬ガイド協会のトップページには8月23日付で謝罪文が掲載されました(2023.12.31.時点でサイトリニューアル中で公開情報は限定されています)

けれど、既に尾瀬のガイドや尾瀬という観光地にとって大きなイメージダウンとなりました。尾瀬が全国でも象徴的な場所だったからこそ話が大きくなったという面もあると思います。


ともあれ、社員やスタッフが団体のアカウントでSNSを使う場合、不適切な投稿や差別的な発言は想定されるリスクの一つ。安全管理の範疇と言えそう。

社内研修をしたり、ガイドラインやチェック体制を定めたりといった対策が考えられます。

しかし、むしろ大事なのは上記の「近い考えの人といるから」「それがイヤな人はソッと離れるから」という状況にならないよう気を付けることかもしれません。

「違う考えの人がそばにいる」「耳に痛い指摘もできる&聞ける関係をつくる」といったことが、長い目で見て健全な組織や人材を育てていくと思います。

 

(2023.12.31.修正:実際の投稿内容を転記していたものを削除し、それにあわせて表現を調整しました)

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2018年に長野県高森町で、園外活動中の保育園児(4歳)が墓石の下敷きになり亡くなる事故がありました。とても残念で悲しい事故です。

先月(2021年6月)、その事故の「再検証」が行われているとの続報がありました。

 

事故の現場は保育園から約800m離れた場所にある広場で、木立の中に隠れるようにお墓がある場所。保育士4人で46人の園児を連れた外遊び中に起きました。

詳細は「高森町立保育園において発生した死亡事故の検証等に関する報告書(2019年8月5日/高森町保育所事故検証委員会)」にまとめられています。

https://www.town.nagano-takamori.lg.jp/kosodate/2/6/4894.html
(2021.07.25.閲覧)

 

ただし、これは「再検証」の前の検証報告書です。

事故当日の朝に担任の保育士が「5分間程度下見した」と記載されていますが、この報告書が公開された後、実際は下見をしていなかったことが判明。2021年7月現在、あらためて町の検証委員会で再検証が行われており、7月中に結果が高森町に報告されるとのことです。

そのため、上記の報告書は近日中に追加もしくは差し替えられるのではないかと思います。

 

いずれにしても悲しい事故です。

同じく2018年は群馬県高崎市の神社で石灯籠に上って遊んでいた中学生が落下し、はずれた上部の石の下敷きになって亡くなる事故もありました。

古いお墓や灯籠などは「不安定な重量物」です。リスク要因であるとの認識をあらためて持っておきたいと思います。

 

加えてこの保育園の事例では、

当初の検証委の聞き取りで「下見をした」と事実と異なる証言がなされたこと。

事前に作成していた計画書が事故後に書き換えられて提出されたこと。

下見をしていないことを口外しないでと同僚保育士が依頼されていたこと。

などが、長野県警の捜査で判明しました。事故を起こしたことだけではなく、それを誤魔化すようなことが行われた点でとても残念な事例になったと思います。

 

うーん、いろいろ考えてしまいますね。

保育士さんはたいへんな仕事だと聞きます。仕事量の負担、賃金や時間の余裕、人間関係などは大丈夫だっただろうか?モラルやモチベーションを保てる職場環境や待遇だっただろうか?とか。

過ちを認めることって難しい。たいへんな勇気が要るように思います。誤魔化さず、まず過ちを認めることからはじめないと改善されることはないんじゃないか?とか。

 

亡くなったお子さんのご冥福を、そして保育士さんたちがいきいきとした、子どもたちへの目が行き届いた保育が広がることを祈ります。

私が小学校の頃、通学路にプランターでサルビアを育てているお宅がありました。真ん中から飛び出ている花びら。これを抜いて蜜を吸っちゃいますよね。仕方ない。

ほとんどすべてのサルビアが花びらを引っこ抜かれて、道沿いにチラホラ落ちてたのを思い出します。

 

よく公園や街路樹として植えられている木でも蜜を舐められるものがあります。5月くらいだったらクロガネモチの花やソメイヨシノの葉っぱの蜜腺にポツリと水滴のように蜜が出ていて、舐めると甘い。今時の子どもはそんなことしないかもしれませんけど(笑)。

 

ツツジの蜜も吸ったことがあります。ただ、わりと強い毒を持つツツジ もあるそうで、先々月ですがYahooニュースでも配信されていました。

ツツジの甘い蜜、吸ったら毒? 専門家「吸わない方がいいです」

 

ここで注意を呼びかけているのが「レンゲツツジ」。

日当たりのよい草原などに自生しますが、園芸品種としても庭に植えられることがあります。幹から葉っぱから蜜までグラヤノトキシンという痙攣毒を含むので牛や馬も食べません。2015年には庭木のレンゲツツジを食べた人が食中毒になった事故があったそうです。

海外ではハチミツでの中毒が報告されているとのこと。ハチミツは蜜蜂が採取した後、巣の中で水分を飛ばして濃度を高めるので、分量あたりの毒性が強くなるということだと思います。

 

全てのツツジが危ないわけではありません。

身の回りに多いヒラドツツジやサツキツツジ、クルメツツジなどの毒性は、弱いかほとんど無いようです。ただ記事中の専門家は「区別が難しいためツツジの蜜は吸わない方がいい」と指摘しています。

 

うーん、区別が難しいなら区別できるようになったらいいとも思いますが、そもそもツツジは公園や誰かの庭の木だったりします。花を引っこ抜いて蜜を吸うこと自体、イベントでどんどんやろう!というものではないですね。

植物を採取するマナーのこと、種類の見分け方や毒性のことなどをきちんと伝えた上で、限られた場所、特定の人と一緒に行う自然の楽しみ方だと思います。

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6年前、アフリカで霊長類ボノボの行動観察中の大学院生に落枝が直撃した事故。裁判が行われていましたが、地裁の判決が報道されていました(2021.05.20.京都新聞ほか)。受傷した方は海外での事故であったことや、その後に重い障害が残ったことでつらい状況だと思います。お見舞い申し上げます。

落枝については、森林ボランティア関係でも事故が起きているので他人事ではありません。また地裁の判決理由にも思うところがあったので、以下まとめてみました。

 

2015年7月 アフリカのコンゴで京都大学大学院生がボノボの行動観察中、長さ90cm、重さ10.8kgの枝が落下。大学院生の頭部に直撃した。樹上のボノボたちがけんかをはじめたことが落枝の要因になったとのこと。

2018年9月 受傷した元大学院生らが京都大学と担当教授に対して2億7,400万円の損害賠償を求めて提訴。京都大学は請求棄却を求めた。

2021年5月 京都地裁が元大学院生らの請求を棄却。

 


一般に大学や指導教官が、研究中の学生の事故にどの程度責任を持つべきなのか?分野や状況によって異なるので単純な線引きはできないと思います。

ただ、今回の報道で京都地裁の判決理由が「木々が生い茂るジャングルでは落木の発生地点や落下軌道を正確に把握するのは困難な上、本件は落木が別の木に当たって落下方向が変わっており、『事故を予見、回避できる可能性はなかった』」とされている点には少し違和感があります。(カギ括弧内が報道記事。二重カギ括弧内が判決文の引用。)

 

正確に発生地点や落下軌道を把握する必要はありませんよね。落枝・落木はスレスレでかわしていくものではないので。

そのような落枝・落木が起こり得る場所かどうか判断して備えること。具体的には、安全な場所を選んで活動したり、ヘルメットなどの保護具を付けたりすること。落枝はそういった対応をとる類のリスクです。

 

ところで、これまで本コラムで取り上げた落枝による事故には以下があります。

 

2012年11月 岐阜県大垣市 スギの落枝による事故で小1女児死亡。その後の岐阜大学の調査により、現地のスギ林は「こぶ病」に罹患して枝が落ちやすくなっていたこと。また、事故当日は強い風(最大瞬間風速10m/s)が吹いていたことなどが報告されています。

2014年4月 神奈川県川崎市 ケヤキの落枝で幼稚園児が重症。商業施設内の広場で1978年に植えられたケヤキから落枝。定期的な剪定はしていなかったとの報道がありました。(2021.05.24.ストリートビューでその商業施設を確認したら、ケヤキは根元から伐採されているようです)

 

これらの事例にある

 ・こぶ病など枝が落ちやすい病気に罹患していること。

 ・強い風が吹いていること。

 ・根を伸ばしにくい環境で数十年間育っていること。

などは落枝が発生しやすくなる要因です。

加えて他にも、

 ・高木が混み合って育ち、下枝が枯れあがっていること。

 ・ナラ枯れやマツ枯れなどの病気に罹患していること。

 ・まだ幹に付いている枯れ枝が、雨後に水を吸って重くなっていること。

 ・枝を落としやすい樹種(クスノキなど)が多いこと。

などでも同様に落枝が増えます。

このような状況が見られるのであれば落枝の可能性が高まると考え、注意喚起するとか、適切な剪定管理を行うとか、立ち入り禁止するとか、どうしても入る場合は保護具をつけて行動するとかの対応が必要となります。

 

 

冒頭の事故が起きたジャングル、森自体がどの程度リスクのある状況だったのかはわかりません。

報道内容からの推測でしかありませんが、体重がオス42-46kg、メス25-48kgとなるボノボが樹上でけんかをはじめたというのは、かなり落枝の可能性が高まるように思います。少し距離を取って観察するか、直ちに保護具を着用するといった対応が必要だったのかもしれません(その対応をとる責任が誰にあったかは別問題として)。

 

上に書いた通り、報道にある京都地裁の「落木の発生地点や落下軌道を正確に把握するのは困難」であり「落木が別の木に当たって落下方向が変わっ(た)」ことから「事故を予見、回避できる可能性はなかった」とする判決理由には違和感があります。どんな落枝も発生地点や落下軌道、さらには発生時刻を正確に把握することは現実的に不可能だからです。

この書き方では「落枝事故は予見、回避できる可能性がない」とも解釈できます。それはマズい。判決文というより報道記事の切り取り方の問題なのかもしれません。

 

いずれにしても、落枝は「あの枝がここに落ちてきそうだから対応する」ではなく「枝が落ちてきそうな場所・状況だから対応する」といった姿勢で臨みたい。

そして、森や生きものに接する人が事故に遭うことを少しでも減らせたらと思います。

 医薬品メーカーの小林化工と日医工が製造段階で不正を行っていて業務停止命令を受けたこと、一般にはそれほど大きなニュースとして扱われていない印象があります。しかし、多くの人に影響が出ると思いますし、病院や薬局の皆さんは新型コロナ感染症への対応に加えて、たいへんな状況ではないかと心配しています。

 ざっくり言うと、製造不正で業務停止命令→出荷調整や欠品が発生→他社の同等品に切り替えようとしてもそんなに在庫ないし急に生産を増やせない…ということが起きている様子。興味ある方は下記のtogetterや調査報告書などをご覧ください。

 

 実は今、日本の医薬品流通が壊滅しかけているという話
 (20210424付/20210426確認)

 小林化工の外部調査委員会報告書・概要版PDF
 (20210416付/20210426確認)

 

 上記の2社についての記事や報告書を見て、医薬品製造に限らずあらゆる分野の安全管理に共通するポイントがあると感じました。グリーンシティ福岡の活動分野に引き寄せて、思ったことを挙げてみます。


1)間違いを指摘する人を尊敬しよう

 上記の外部調査委員会の報告書では、勇気を振り絞って上長に相談した従業員が「でしゃばるな」と叱責を受けたことが記載されています。下からの問題提起が許されない風潮があった、とも。間違いや不正に気づき、指摘してくれる人は貴重な存在です。間違いとまでいかなくても、めんどくさくて手順を省略しようとするのに対して「いやいや、ここはちゃんとやっておきましょう」と言える人は大切。尊敬したいと思います。

 

2)逸脱(≒ヒヤリハット)の報告を歓迎しよう

 製造業では決められた手順や管理基準から外れた状態のことを「逸脱」と言うそうですね。小林化工の工場では報告された「逸脱」の件数が年間数件程度と、異常と言って良いほど少なかったそう。これは逸脱が発生していないのではなく、逸脱が報告されていないことを示唆すると指摘されています。私たちの分野で言えばヒヤリハットみたいなものかと思います。ちょっとしたミスや間違いをきちんと報告できるかどうか?そこで起きたミスや間違いをみんなで共有して、今後起きないように対策を考えるためにも、その報告を歓迎したいと思います。

 

3)間違いを食いとめる仕組みを考えよう

 経口の水虫薬があるとは知りませんでした。ともかく、爪水虫などの治療薬であるイトラコナゾール錠50「MEEK」に、睡眠導入剤の成分である「リルマザホン塩酸塩水和物」が混入されたことが一連の不正でもっとも大きな被害を生みました。夜勤の作業者が保管場所に置いてあった原料を取り違えて計量したことが調査で報告されています。ただうっかりミスは誰にでも起こりうるもの。それを防ぐ仕組みが機能していなかったということです。

 事故に対する考え方のトレンドは、「事故の原因は周囲の環境など外部にある」から「ほぼ全ての事故がヒューマンエラー」という考え方に。「がんばれば事故は防げる」という根性論から「事故は起きるので如何に最小化するかが大事」という考え方に、移り変わってきたように思います。「人は間違いを起こす」ことを前提として、どうやって仕組みでそれを食いとめるか?を考えていきたいです。

 

4)妥当な目標を設定しよう

 同じく小林化工の調査報告書では、近年、生産量が右肩上がりで増え続けていたこと、スケジュール通りの出荷が何より優先されていたこと、が指摘されています。出荷スケジュールから逆算して各工程がスケジュールを立てるという、言ってみれば「バックキャスティング」的な考えが行われていたようです。その考え方自体は使い方次第なのでどうこう言いませんが、最初に立てた目標が妥当かどうかが大切。その目標が無理めなものであれば、現場に負荷がかかり逸脱やミスが発生しやすくなるのは当然です。同じようなことは、製造業でなくてもあらゆる分野で起きているように思います。

 

 医薬品の製造や流通については全く専門外ですが、とりあえずしばらくの間、薬局に行くことがあったら穏やかに薬剤師さんに接して感謝したいと思います。

住宅地に近い緑地で里山保全活動の体験イベントを行った時の事例。

20名以下の予定で準備していたら当日30人以上の参加があった時,諸事情でその状態で実施することになりました。事故や怪我はなかったもののいくつも気になることが起きました。「適正な参加人数を守るのは大事だな」と反省したお話です。

 

<オリエンテーションが不十分になりがち>

趣旨の説明やスタッフの紹介,参加者属性の把握,作業内容と道具の使い方説明などのオリエンテーションがどうしても長くなります。そんな話はいいからさっさと作業に入りたいという人もいるので,進行役としてはつい話を短く割愛したくなってしまいます。最初から人数が多いことがわかっていれば,説明用のフリップや資料を用意したり,数名の作業グループに分かれた後に各グループリーダーから説明ができるように準備したりします。けれど,それらの準備ができていない時,オリエンテーションでの情報共有が不十分になりがちです。


<作業内容を縮小>

その体験イベントでは,ヘルメットをかぶり,それぞれがノコギリと剪定バサミを持って,枯れ木や枯れ枝の伐採・剪定,それらの枯れ木を使った土留め工,落ち葉やササ類の片付けなどを予定していました。参加者数が多く,リーダーの目が行き届かないと考えたので,もっとも事故のリスクが大きいと考えた立った枯れ木の伐採は行わないよう活動内容を変更しました。幸い(?)林内に散らばった枯れ木が大量にあったので体験イベントの作業量としては十分。ただし,体験内容としては若干単調になった印象はあります。


<予定していない作業が行われていた>

その一方で,リーダーの目が届かないところで参加者数名の判断で立った枯れ木の伐採が行われていました。結果的に事故は起きていませんが,リスクが高いと判断して取りやめた作業が知らない間に行われていたのは問題です。参加者数に対するリーダーの数が少なかったこともありますし,オリエンテーションでの理解が不十分だったということでもあります。


<ノコギリのケースを無くして探した>

事故も怪我もなく終了。しかし,道具を集めた段階でノコギリのケースが一つ足りず,裸のノコギリがポロンと残っていました。ケースだけ地面に放っぽりだして作業した後,ノコギリだけ持って帰ってきたのかもしれません。解散後スタッフで作業地近辺を探し回りました。けれど結局見つからず,仕方ないので捜索を切り上げ撤収しました。


<いや,ケースはあった>

事務所に戻って道具の最終的な手入れと片付けをしようとした時,探していたノコギリのケースに別の小さなノコギリが収まっているのを発見。ケースを無くしたわけではなかったことがわかりました。代わりにその別の小さなノコギリが収まっているはずのケースは,空っぽであったことに気づかずそのまま持って帰ってきていました。一言で言えば,現場での道具管理が杜撰になっていたということです。


他にも「参加者全員とコミュニケーションをとることができなかった」「作業の意図や趣旨が十分伝わってなさそうな参加者がいた」など気になる点がありました。それぞれ小さな出来事ですが,事故や怪我につながる入り口のようなもの。適正な参加者数を守ることが大事だとあらためて感じた出来事でした。

 

(追記)余談ですが,ボランティア活動に対してなんらかの評価を行う組織(行政や助成元,CSRに取り組む企業など)では,参加者数の大小を重視していることが普通です。しかし,人数が増えることのリスクやその対策コストについて具体的に想定できているところは少ないので,注意が必要です。

 

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2021年2月23日,二つの山林火災のニュースが流れました。
ニュースの見出しだけご紹介します。

 

 「栃木・足利で山火事、72世帯に避難勧告…自衛隊ヘリが散水しても鎮火に至らず」
  読売新聞オンライン 2021年2月23日

 「東京・青梅市 住宅から出火 けが1人 寺や山林にも延焼」
  TBS NEWS  2021年2月23日

 

青梅市の事例についての報道では「庭でたき火をしていて水で消した。しばらくするとバチバチという音がして火事に気付いた」というコメントが掲載されていました。

2月23日は青梅市や足利市も含めて関東甲信地域には乾燥注意報が出ていました。また,ところによって一時,強風が吹き,青梅市では13:20ごろに最大瞬間風速9.3m/sが記録されていたとのことです。

 

思い出したのは2017年5月の山林火災です。この時も二つの山林火災。宮城県栗原市と岩手県釜石市で起きた大規模な事例でした。当時の見出しをご紹介します。

 

 「山林火災、200世帯超に避難指示 宮城・岩手」
  日本経済新聞 2017年5月8日

 「岩手の山林火災 「一睡もできなかった」住民 ヘリ14機、懸命の消火」
  産経ニュース 2017年5月10日

 

この時,釜石市には乾燥注意報が出ており,さらに10:50ごろ最大瞬間風速25.9m/sが観測されていました。1年以上経って2018年12月には,宮城県栗原市の事例について地裁での初公判の様子が報道されました。その起訴内容によれば,

 ・当時,宮城県栗原市では強風注意報と乾燥注意報が発令されていた。

 ・男性が休耕田で伐採した竹を焼却した。

 ・消火確認を怠った結果,延焼し,住宅など20棟,山林約2.9haを焼失した。

ということだったそうです。

 

荒れた里山の手入れでは竹を伐採することも多く,竹炭づくりのため野焼きをすることがあります。

また,体験活動として焚き火や飯盒炊さんをすることもあります。

その際は,風と乾燥具合のチェックが必須です。

 1)気象庁のサイトや防災アプリで注意報のチェック(強風注意報,乾燥注意報の有無)。

 2)現地で風速計でのチェック。

グリーンシティ福岡では,現地の風速計で7.0m/sをたびたび超えるようなら焚き火は中止としています。平均風速にしたら5m/s前後です。

 

火を使う体験は楽しいですが,くれぐれも風と乾燥にご注意を!

今朝,「日本の死者数が前年より1.5万人減 コロナ禍の「受診控え」が一因か」という記事を読みました。※「女性セブン(2021年2月18・25日号)」の記事が,BLOGOSに転載されているという理解でいいのかな?


「重要な事実」と「ムチャクチャな論旨」が一緒になってますね(笑)。

 

「重要な事実」は,2020年1月〜11月の国内の死者数が125万人で,前年同期比で約1万5000人減少したということ(厚労省の人口動態統計速報)。
「ムチャクチャな論旨」は,「病院に行かない方が死者は減る」という印象に誘導するためにあの手この手を使っていること,です。
「ムチャクチャな論旨」についてはソッと置いておくとして(笑),死者数の減少についてどんな理由や背景があるかなあ?と考えました。

大きな理由は,手洗いや消毒,マスク着用でインフルエンザが激減したことだろうなと思います。さらにそれから起きる肺炎なども減少しているでしょう。ちなみにインフルエンザの2014年〜2019年の平均患者総数は約68.5万人です。これに対して2020/2021シーズンのインフルエンザ患者数は1,000人に達しておらず,割合で言えば0.1%ちょっと。激減です。

また,外出が減って交通事故や屋外での事故が減ったということもあるかもしれません。例えば,警察庁の発表による2020年1月〜12月の交通事故死者数は2,839人で統計開始して最小。前年に比べて376人の減少で,はじめて3,000人を下回りました。ただ,交通事故はこの30年減少傾向ではあります。

他にもあるかもしれません。上記の記事のように「医療ミスや過剰医療が減少したから死者数が減った」というのは…全く関係ないと断言はできませんが,あったとしてもすごく小さいんじゃないかと思います。

「安全管理のコラム」的な視点からは,インフルエンザにしろ,交通事故にしろ,私たちは日頃からいろんなリスクを飲み込んで生活してるんだなあ,ということを思います。
手洗いやマスク着用をしたり,飲み会を控えればインフルエンザは激減する。けれど,多少のリスクがあるとは知っていながら,手洗いやマスクをしなかったり,飲み会を楽しんだりする。
年間,数千人の方が亡くなっていると知っているけれど,車は便利なのでそれに頼った社会で生活する。

全てのリスクを避けるのは不可能ですし,そんなことをしてたらなんの楽しみもはりあいも学びもない生活になりそうです。私たちは多かれ少なかれリスクを飲み込んで生活しているし,それらに対して適切な?ほどほどの?ふさわしいレベルの?備えをすることが大事なんだろうな,ということを考えました。

都市部の緑地でも中山間地域の里山でも,樹林地が放置されてずいぶん育っている状況があります。
そんな場所では木々同士の競争がおこって枯れる木も出てきます。このような比較的大きな枯れ木にどのように対処していくかは,今後もっと課題になっていきそうです。

森林ボランティアが手道具(ノコギリなど)で枯れ木を伐る時には,前に書いたようにいろんな注意したいポイントがあります。
それらに加えて今回は枯れ木の「揺れ」に着目です。えぇ,いつも以上に一部の方向けの内容ですとも。


一つ目はノコでギコギコ伐っている時のこと。
ノコをひくテンポにあわせて枯れ木の揺れが大きくなっていくことがあります。揺れが大きくなっていくと枝や幹が途中で折れて,伐採している作業者の真上に落ちてくる危険があります。
なので,作業者や周囲で見ている人はその枯れ木の揺れを注視しておくとよいと思います。ノコをひくに従って揺れが大きくなっていく様子が見られたらノコのテンポをゆっくりさせます。すると木の揺れがおさまります。

たぶんこれは,ノコのテンポがその木の「固有振動数」に合って「共振」してるということなんじゃないかと。高校で物理選択だった人はなんか「弦の振動」とかそのへんを思い出すかもしれません。基本振動の他に,その整数倍で振動するはずなので…え?なんかこんな感じ…?


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詳しくはわかりませんが,とにかく揺れ具合に注意しながら作業したらいいし,揺れが大きくなるようだったらノコをゆっくりにすると収まると思います。


二つ目はロープで引き倒すときのこと。
枯れ木は特にツルが効きにくく,一旦倒れ始めると一気に倒れます。途中で幹が折れたりもします。
なので,倒れ始めるまで追い口を入れるのではなく,まだ倒れ始めていない段階で,作業者全員が安全な場所に退避した上でロープで引っ張ります。
この時のロープをとにかく力任せに引くのはNG。ロープや滑車に大きな力がかかりますし,作業者もたいへんです。一旦,ロープを引いたら力をゆるめて,再度引っ張る。
この時,倒そうとしている木はわずかに揺れると思います。経験上2秒間隔くらいのことが多い印象。この木の揺れに合わせて,こちらに来るタイミングで引っ張る。向こうに戻るときは緩める,とします。
何度か繰り返して倒れなさそうだったら,用心して近づき少し追い口を進める。また退避して再度ロープで引っ張る。これを繰り返して,作業者が伐倒する木の直下にいない状態で倒します。
木の揺れを活かしながら小さな力で倒す,というのがよいと思っています。


とは言え,以前の繰り返しになりますが,森林ボランティアでは難しいor危険な木に手を出さないのが1番大切。
確かに,身の回りの森に枯れ木が増え,散歩をしている人たちや森で遊ぶ子どもたちのことが心配。さらに行政など緑地や公園の管理者は予算不足で森の中の枯れ木まで手が回らず…森林ボランティアでなんとかしたいと思う気持ちはあります。が,ともかく安全が第一。

ボランティアでも対処可能な枯れ木を,さらに安全に確実に処理するために「揺れ」にも着目しましょう,というお話でした。

オンラインイベントが盛んになってきました。

講演会,分科会があるようなシンポジウム,資格の研修,料理教室やヨガ教室などもあります。
グリーンシティ福岡でも、オンライン観察会「ZOOM de かんさつ会」のほか、いくつかの研修、会場参加とオンライン参加の両方があるハイブリッドのワークショップなどをやってきました。

そんなオンラインイベントの保険ってどう考えたらいいんでしょう?
オンラインイベントは、移動や転倒、危険生物などのリスクが少ないです。そもそも参加者はそれぞれの自宅など離れた場所にいるので、その安全管理まで責任を負うことができるのかどうか?

よくわかりません。

そんな中,来月実施予定なのが「オンライン de 木のマグネット」というイベントです。
森の中から中継して樹木や生きものの観察をしつつ,森の手入れで出た材を使ったクラフト体験を行います。
参加者の皆さんはご家庭のパソコンやタブレットの前で,解説を視聴しながらクラフト体験を行います。紙やすりを使ったリスクの少ない作業とは言え,手を削ったり,手が触れて貴重品を壊したり,などの事故が考えられないわけではありません。

今後のプログラムの発展も考えて、保険の代理店さんに尋ねてみました。あくまでグリーンシティ福岡で加入している保険についてです。

<傷害保険>

 ・オンライン上でも保険適用の判断は参加が確定出来る場合に限る。
 ・今まで通り、事故があれば参加者名簿を提出する。
との回答だったので,参加者が確定できるのであれば対象となるということだと思います。
しかし、例えば「参加途中に抜け出して銀行に行って事故にあった」のは対象外です。

<賠償責任保険>

 ・オンライン上でも法律上の賠償責任を被る損害には保険適用できる。
 (対象は「第三者(観客等)」「参加者」の2つの場合が考えられる)
 ・訴訟された場合の,訴訟に関する費用,過失が認められた場合の賠償金などが補償される。
と回答をいただきました。
ただ,主催者側に法律上の責任があるかの認定が,オンラインでは,より難しいかもしれないと想像します。万が一の場合は,早めに代理店や場合によっては弁護士などに相談する必要があるかもです。

オンラインイベントでも適用されることをうたった保険では「ヨガの保険」があります。
もともとヨガ教室では「指導の仕方で身体を痛めた」という訴えがありそうです。自粛期間中にオンライン指導が増えてきたことが背景にこのような保険のニーズも高まったのだと思います。



オンラインイベントでどのような保険に加入するか?もしくは加入しないか?はイベントの内容によると思います。
各団体,各事業でぜひご検討を!